文部科学省が2019年に提唱した「GIGAスクール構想」は、ひとり1台の端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備することにより、特別な支援を必要とする子どもを含め、多様な子どもたちを誰ひとり取り残すことなく、資質・能力を一層確実に育成できる教育環境の実現を目指す取り組みです。近年、教育現場におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する中で、特に注目されているのが、教職員の業務効率化や働き方改革につながる「校務DX」です。
本記事では、自治体による校務DXの現状とその背景について分析し、自治体が直面する課題や校務DXの必要性を具体的な事例と共に探ります。

日本における自治体の校務DXの現状と背景
校務における現状の課題
文部科学省が導入を進める、校務全般の実施に必要な機能を備えた「統合型校務支援システム」の整備率は年々上昇し、校務の効率化に大きく寄与してきました。一方で、多くの自治体ではシステムを自前サーバに構築し、インターネットから切り離された独自のネットワーク内で稼働させており、校務用端末も職員室に固定されていることがほとんどです。校務においては、クラウドサービス利活用を前提としたネットワーク構築が進んでおらず、GIGAスクール時代の教育DXや働き方改革の流れに適合しなくなっているのが現状です。
校務DXの必要性
校務DXが推進される背景には、「教職員の働き方改革」や「教育活動の質向上」の必要性が高まっている状況があります。教職員は、授業等による教育指導に加え、生徒の情報管理や保護者対応、学校内外の連絡・調整業務など多岐にわたる校務を担っており、その負担は非常に大きくなっています。このような環境により、離職率の増加や教育の質低下が起こり、慢性的な教員不足が深刻な問題となっています。これらの問題を解決するためにも、校務DXの取り組みは急務と言えます。
自治体が校務DXを導入する目的
教職員の労働環境を改善
教育現場では、教職員の長時間労働が大きな問題となっており、業務内容や労働時間の見直しについて求められてきました。校務DXにより、採点業務や生徒活動記録の管理、学校内外における連絡など、さまざまな業務をICTやクラウドサービスなどのデジタル技術を活用して効率化することが可能です。これにより、教職員の負担が著しく軽減されるだけでなく、大幅に時間を生み出すことができます。その結果、生徒にじっくり向き合う時間や授業改善時間の確保につながります。
ペーパーレス化の推進
学校では、連絡事項を記したプリントや会議資料、名簿などさまざまな書類を扱っていますが、整理や管理に多くの時間がかかっているのが現状です。そのため、教職員に多大な負担がかかり、長時間労働の原因のひとつとなっています。しかし、ペーパーレス化を推進することにより、紙ベースの校務で生じていた非効率が解消されるとともに、リアルタイムな情報共有が可能になります。また、書面の情報をテキストデータとして扱えるようになるため、さまざまな用途での活用が容易になり、校務や教育活動へのデータ活用が促進されます。
リモート校務の実現
DXを推進することにより、自宅をはじめとしたリモート環境で校務を行えるようになります。教職員は場所の制約を受けずに業務を行えるようになり、働き方の柔軟性が向上します。そのため、育児中の教職員であっても自宅から校務を行うことができ、労働力の有効活用につながります。また、自然災害や感染症などにより出勤が困難な状況でも、学習支援・校務の継続ができるため、安定した業務推進と非常事態への対応力強化が期待できます。
自治体による校務DXの取り組み
神奈川県立総合教育センター|ICTすぐ使えるTips(活用事例)
神奈川県立総合教育センターが公開している「ICTすぐ使えるTips(活用事例)」では、県内の学校で実際に行われているICT活用の取り組みをわかりやすく紹介しています。ICTを活用したさまざまな授業支援、クラウド上での教材や連絡資料の共有、さらにはデジタル教材の作成・活用法など、すぐに取り入れられる実践例が多数掲載されています。
例えば、市内の小学校において、欠席連絡フォームとしてGoogle Formsを活用している例が挙げられます。これにより、緊急時以外は電話をする必要がなくなり、子どもが欠席する際に、気軽に連絡できるようになります。また、教職員は電話連絡のために教室を離れることが減るため、授業に集中できる効果も見込めます。
さいたま市立教育研究所|さいたま市スマートスクールプロジェクト(SSSP)
さいたま市立教育研究所による「さいたま市スマートスクールプロジェクト」では、子どもと教職員1人ひとりの幸せの保障と、社会の豊かさの創造のために、ICTの効果的・効率的な活用を通して、ダイナミックな教育改革を力強く推進することを目的としています。このプロジェクトの核となる施策が、「さいたま市スクールダッシュボード」です。スクールダッシュボードとは、教育活動を通して蓄積されるデータを集約し、一覧にすることにより、教職員の校務効率改善や生徒の学習支援に役立てるためのシステムです。ダッシュボードの活用によって、授業や健康・生活に関するアンケートの収集や回答状況の確認、出席やICT活用の状況、成績情報など、さまざまな情報を把握できます。これにより、生徒の困りごとや悩みを早期に知ることができ、的確で寄り添った対応や、生徒の学びに合わせた学習支援を行うことが可能になります。
群馬県教育委員会|群馬県教育DX化支援サイト

群馬県教育委員会が運営する「群馬県教育DX化支援サイト」では、多様化する授業や校務のデジタル化を地域・学校間の差なく推進するため、県内の小中学校等でICTを有効活用した授業支援策・業務改善策を集約し、好事例の横展開を図ることを目的としています。サイト内には、生徒のテスト評価・評定表や学習計画表、提出物管理表などのさまざまなツールが用意されており、すべて無料で利用することができます。これにより、DX化を進めるにあたって何から手をつけていけばわからない教職員であっても、DX化の第一歩として有効活用することが可能です。
校務DXには予約システムRESERVA

DXを推進するにあたって、おすすめなのが予約システムの導入です。予約システムの機能は、予約管理にとどまらず、決済から顧客管理、さらに集客に至るまで自動化する機能を持つシステムです。複数のツールやプラットフォームを切り替える手間は一切不要で、業務プロセスがより効率的に進められるだけでなく、利用者にとっても一元的で使いやすい環境が提供されます。
現在、多数の予約システムが存在している中で、自治体が効率的にDXを促進するためには、実際に導入事例もあるRESERVAを推奨します。RESERVAは、35万社が導入、800以上の政府機関・自治体も導入したという実績がある国内No.1予約システムです。予約受付をはじめ、機能は100種類を超えており、自治体の業務プロセスが効率的に進められます。初期費用は無料で、サポート窓口の充実やヘルプの利便性が高いため、予約システムの初導入となる地方自治体にもおすすめです。
まとめ
自治体における校務DXは、これまでの教育実践の蓄積とICTをはじめとしたデジタル技術の活用によって、学習活動の一層の充実と主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善が期待できます。デジタル化が進む社会において、子どもたちが日常的にICTを活用できる環境を整えるとともに、デジタル技術を生かした学習活動の充実を図ることが重要です。
RESERVA.lgでは、今後も自治体のDX化に関する国内事例を取り上げていきます。