2020年12月に総務省は「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」を策定し、自治体におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を宣言しました。これにより、現在ではさまざまな自治体においてDXが進められ、行政サービスの改善や効率化が図られています。そんな数ある取り組みの中でも近年特に注目されているのが、住民と自治体職員の接点のあり方を見直し、よりよい行政サービスを実現するための取り組みである「フロントヤード改革」です。
そこで本記事では、フロントヤード改革の概要やメリットから具体的な取り組み事例まで、詳しく紹介します。
フロントヤードとは
フロントヤードとは、住民と自治体との接点のことです。窓口での各種手続きや相談業務、住民が利用する行政施設内の空間など、住民と自治体が直接関わるあらゆる場面が対象となります。一方で、バックヤードとは、住民からは見えない行政機関内での業務全般を指します。バックヤードの改革は、自治体内の業務効率化を目指すものであり、行政機関内での仕事のプロセスや業務内容を見直し、改善することが主な目的です。

フロントヤード改革とは
総務省によると、フロントヤード改革とは「マイナンバーカードを活用した自治体と住民との接点の多様化・充実化、窓口業務の改善などを通じて、住民の利便性向上と職員の業務効率化を図ること」と定義されています。フロントヤード改革は、2023年11月に改定された総務省の「自治体DX推進計画」の重点取り組み事項として誕生した概念であり、自治体DX推進の主要なテーマとなっています。自治体フロントヤード改革は「書かせない」「待たせない」「迷わせない」「行かせない」の4つの原則を基本としており「アプリやWEBサイトを活用した事前情報入力」や「予約システムやキャッシュレス決済の導入」「職員に加えタブレットやチャットボットなど多様な案内方法の実施」「リモート相談窓口の設置、オンライン申請システムの導入」といったさまざまな取り組みを行っています。このように、これら4原則を実現することにより、行政サービスの質が高められています。
フロントヤード改革のメリット

自治体がフロントヤード改革を推進することによるメリットを、以下に3つ紹介します。
行政サービスが利用しやすくなる
フロントヤード改革により、住民の行政手続きは大幅に便利になります。例えば、オンライン申請によりいつでもどこにいても申請手続きができるようになるため、足の不自由な住民や平日に役所に行くことができない多忙な会社員であっても、問題なく行政サービスを受けられるようになります。また、庁舎は常に混雑しており、待ち時間が長い場合が少なくありませんが、予約システムを導入することで、住民の待ち時間を大幅に削減できます。このように、多様な面から住民の利便性向上を図ることができます。
行政サービスの質向上
フロントヤード改革は、行政サービスの質を向上させる効果ももたらします。これまでの行政サービスでは、限られた人的配置で窓口対応を行っていたため、すべての面で住民を手厚くサポートすることは困難でした。しかし、ワンストップ窓口を設置することにより、複数の窓口を回らなければならなかった手続きの一本化を実現できます。これにより、業務が効率化され、手が空いた職員は特にサポートが必要な住民の対応に専念できるようになります。
自治体業務の効率化
フロントヤード改革の推進により、自治体業務の効率化を実現できます。従来の行政サービスにおいては、多くの場合で紙を使用していましたが、デジタル化することにより、業務効率を大幅に高められます。フロントヤード改革は、住民と地方自治体との接点を多様化し、それらの接点をひとつのサービスに統合する考え方です。これにより、住民にとっての利便性を向上させつつ、職員の負担軽減も実現します。
フロントヤード改革の事例
青森県八戸市|はちのへスマート窓口
青森県八戸市において、2024年11月より、3つのコンセプトを軸とした「はちのへスマート窓口」がスタートしました。コンセプトのひとつ目は「書かない窓口」です。窓口では専用のタブレットを使用し、マイナンバーカードをはじめとした本人確認書類から住所・氏名・生年月日などの本人情報を取得することにより、手書きが不要となり申請書記入の手間が大幅に軽減されます。2つ目は「待たない窓口」です。住民票のような交付申請や転入・転居などの住民異動手続きを行う際に、事前にスマートフォンなどで申請に必要な情報を入力しておくことにより、窓口での書類記載が簡便になります。3つ目は「行かない窓口」です。市役所に行くことなく、スマートフォンやタブレットにより、本人確認や手数料の支払いといったすべての手続きをオンライン上で完結できます。
北海道北見市|書かないワンストップ窓口
北海道北見市の「書かないワンストップ窓口」とは、市民が各種証明書の交付を受けたり、転入・転出、婚姻届、出産届などのライフイベントに関する手続きを行ったりする際の手間と時間を大幅に削減するサービスです。大きな特徴が、紙の申請書を作る部分のみをデザインするのではなく、フロントからバックヤードまでをトータルデザインし、住民も職員も双方が楽になる取り組みを推進していることです。新人職員が窓口を利用する実験を行うことで、窓口業務の課題を浮き彫りにした後に、業務フローの見直しを行い、改善後の業務フローを実現するためのシステムを独自開発しました。また、手続きの際は職員が一緒に進めてくれるため「早く」「かんたん」「サインするだけ」の三拍子が揃ったワンストップ窓口を実現できます。
東京都豊島区|行かなくて済む区役所
東京都豊島区の「行かなくて済む区役所」は、非来庁・非対面でかんたんにオンライン相談ができる「ビデオ通話システム」を導入し、住民に寄り添った相談サービスを行っています。オンライン相談ができる事業は、法律、司法書士、行政書士、住まいの増改築、建築、土地家屋調査士など多岐に渡っています。また、ひきこもり専用相談も受け付けており、今までさまざまな理由で相談窓口に来られなかった方への支援につなげられるよう、気軽にオンライン相談できる環境を整備しています。
フロントヤード改革にはRESERVA

フロントヤード改革にあたって、おすすめなのが予約システムの導入です。予約システムの機能は、予約管理にとどまらず、決済から顧客管理、さらに集客に至るまで自動化する機能を持つシステムです。複数のツールやプラットフォームを切り替える手間は一切不要で、業務プロセスがより効率的に進められるだけでなく、利用者にとっても一元的で使いやすい環境が提供されます。
現在、多数の予約システムが存在している中で、自治体が効率的にフロントヤード改革を促進するためには、実際に導入事例もあるRESERVAを推奨します。RESERVAは、35万社が導入、800以上の政府機関・自治体も導入したという実績がある国内No.1予約システムです。予約受付をはじめ、機能は100種類を超えており、自治体の業務プロセスが効率的に進められます。初期費用は無料で、サポート窓口の充実やヘルプの利便性が高いため、予約システムの初導入となる地方自治体にもおすすめです。
まとめ
本記事では、フロントヤード改革の概要やメリット、自治体における実際の活用事例まで紹介しました。フロントヤード改革は、自治体と住民との接点の多様化、窓口業務の改善などを通じて、住民の利便性向上と職員の業務効率化を実現します。これにより「行政サービスが利用しやすくなる」「行政サービスの質が向上する」といった多くのメリットが期待できます。フロントヤード改革の展開を検討している自治体は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
RESERVA.lgでは、今後も自治体のDX化に関する国内事例を取り上げていきます。