2020年6月、内閣府が実施した「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」によると、新型コロナウイルスの影響下において「地方移住への関心が高まった」と回答した三大都市圏居住者は全体の15.0%に上りました。近年では豊かな自然環境に囲まれたくらしに憧れて、地方への移住を検討する人が増えています。
地方移住希望者の増加にともなって、地方自治体では地域内でのより良い市民サービスの提供を目指して、様々な努力を重ねています。その取り組みの1つが「スマートシティ」の実現です。現在、札幌市やさいたま市などの人口50万人を超える地方都市では、データやネットワークを活用したまちづくりが行われています。一方で、ICTの運用には導入コストや技術の理解が必要不可欠であり、システムの導入に疑念を抱いている市町村は多く存在します。
日本全体でIT化が進められていく中で、都市部との「IT格差」を抱える市町村では、今後、どのような取り組みを実施していくべきなのでしょうか。今回は人口15万人未満ながら、積極的なICT活用に励む市町村を取り上げて解説していきます。
スマートシティで何がよくなるのか
国土交通省によると、スマートシティは「都市の抱える諸課題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」と定義づけられています。
スマートシティは、新技術やデータを用いて、市民一人ひとりに寄り添ったサービスの提供を通じて市民の幸福度(Well-Being) の向上を図ることが目的です。少子高齢化や自然災害、新たな感染症のリスクなど、様々な社会課題を抱える日本では、官民が一体となって分野横断的にデータを取得・活用し、新たなビジネスの創造に取り組んでいます。
スマートシティが実現する社会では、IT医療、観光分野におけるサービスの高度化、リアルタイムデータに基づく防災システム、エネルギー使用状況の管理などがかんたんに出来るようになります。
現段階では、「完全に成功した」とまで言える都市・地域は少なく、多くの市民がスマートシティの効果をまだ実感できていないと思いますが、既にIT化が進む地域では着実に成果が積み上がってきております。実際の市町村はどのように取り組んでいるのか、3つの事例を取り上げて見ていきます。
福島県会津若松市
福島県会津若松市の「スマートシティ会津若松」の取り組みは、2011年の東日本大震災後の復興プロジェクトとして始動しました。1995年をピークに年々深刻化する人口の減少傾向・少子高齢化が課題となる中で、その歯止めをかけるべく、豊富なエネルギー資源を生かし、地元のICT専門大学と連携しながら持続的なまちづくりを目指しています。
2015年12月には地域ポータルサービス「会津若松+」が開設されました。サイト内で、SNSと連携してログインすると属性情報に応じて、パーソナライズされた情報が提供されます。例えば、子育て世代の方には、子ども向けの教育情報やイベント情報がサイトの目立つ位置に表示されます。
現在「会津若松+」で得られるデータを活用して、市民のニーズに沿った様々なサービスが展開されています。
・除雪車ナビ:除雪車のリアルタイム位置情報を地図上に掲載
・AIによる問い合わせ応答: LINE を活用して、AI がごみの出し方、除雪車の位置情報、市の担当窓口の場所などの問い合わせに 24 時間365日対応
・申請書作成支援サービス:市に提出が必要な申請書類の一部について、パソコンやスマートフォンを使って指定の項目を入力することで、複数の書類を一度に作成
・母子健康手帳の電子化:市で受けた健康診断や予防接種の記録を自動反映、子どもの成長記録も閲覧可能
・あいづっこ+:学校だよりが「日誌」で届く
北海道岩見沢市
岩見沢市は札幌市の北東40kmに位置し、人口約8万人を抱える都市です。以前から石炭や農産物の物流の中心地として発展してきましたが、2005年から2018年の13年間で農家の戸数は1580戸から約60%の928戸に減り、1戸当たりの耕作面積は約1.7倍の19haに拡大しています。農作物の品質を保ちながら広大な土地を管理していくために、岩見沢市はICTの活用が必須だと考え、1990年代から取り組んできました。
岩見沢市では、最先端の農業ロボットや5Gを活用して、世界トップレベルの「スマート農業」に取り組んでいます。特に注目されているのが遠隔監視による無人ロボットトラクターの試験走行です。
5Gで得られる高速・大容量の高画質な映像を活かして、監視センターから遠隔でトラクターの走行や制御が安全にできるよう、ネットワークの整備も進められています。さらにAIを活用して、ドローンで撮影した映像や定点カメラから収集したビッグデータを解析し、農作物の発育具合によって、撒く肥料の量を調整するなど、作業の効率化にも取り組んでいます。
長野県伊那市
伊那市は、長野県の南部に位置し、人口約6万人の都市です。2006年に伊那市・高遠町・長谷村が合併し、新「伊那市」として誕生しました。総務省の調査によると、伊那市の総人口に占める65歳以上の割合は2015年時点で3割を超えており、高齢化による担い手不足や買い物交通の手段の確保など様々な課題を抱えています。
これらの地域課題を解決するため、伊那市ではケーブルテレビをデータプラットフォームとした地方におけるスマートシティ化を推進しています。
高齢者等が日頃から使い慣れたケーブルテレビとリモコン操作をインターフェースとして、現在4つの分野で様々なサービスが展開・検討されています。(医療サービスのみ検討中)
・買い物サービス:ケーブルテレビの画面で注文し、スーパーから配送される。
・交通サービス:ケーブルテレビで乗車予約し、自宅までタクシーが迎えに来る。
・医療サービス:移動診察者を導入し、病院に行かなくても診療が受けられる。
・安心サービス:離れた家族がパソコンやスマートフォンで送信したメッセージをケーブルテレビの画面で受け取れる。
ケーブルテレビを中心としたICTライフサポートサービスの利用料は、テレビ受信料から一括で決済されるため、キャッシュレス化の推進にも貢献しています。
進まない市町村の「IT化」
一部の市町村では高度なシステム整備が進められている一方で、多くの市町村では導入できていないのが現状です。2018年の総務省の調査によると、AIが導入されている市町村(指定都市を除く)は14%、RPAにおいては18%となっています。
AI・RPAをはじめとするICTの導入に向けた課題として、一番多く声が上がっているのが、IT活用人材の不足です。2018年と2019年の調査結果を比較してわかるように、ICTが地域課題の解決にどのように活用されるのかについての理解は進んでいるものの、取り組むための人材が不足しています。都市部との「IT格差」を是正するうえで、予算・人材の獲得は今後の市町村における重要課題です。
総務省による「アドバイザー派遣制度」
市町村でのIT活用人材不足を解消すべく、総務省では、地方公共団体等からの要請に応じて、ICTやデータ活用の専門家を「地域情報化アドバイザー」として派遣することで、自治体でのICT活用に関するアドバイスを提言する活動を実施しています。申請者が負担する専門家の旅費・謝金などはゼロで、1回の申請につき最大3日間まで派遣を依頼することができます。現在はコロナ禍でのオンライン対応も行われています。
即導入可能!RESERVA予約システム
プロの専門家を一時的に派遣し、地域の「IT化」を一気に進める取り組みも重要ですが、一番コストが低いのは職員が運用できる「便利でかんたんなシステムの導入」から始めることです。そのうちの1つが当社が提供する予約システムRESERVAです。18万の事業者・官公庁に導⼊されている国内最⼤級のSaaS型予約システムRESERVA(https://reserva.be/)は、人口20万人を超える規模の自治体のほか、人口5万人以下の小規模な市町村でも導入が決定されています。
<RESERVAの導入によるメリット>
1.無料プランから利用可能
2.窓口受付の事前予約、自治体主催の町おこしイベント予約、公共施設の予約、ワクチン接種の予約など様々な場面で導入可能(各項目概要ページにアクセスできます)
3.システムが苦手なスタッフでもかんたんに使える分かりやすい管理画面
4.17万社以上が使う国内No.1の予約管理システムという実績・信頼感
まとめ
現在、都市部だけでなく小さな市町村でも「スマートシティ」の実現に向けた取り組みが実施されています。過疎化や少子高齢化が顕著に表れている地方の市町村では、誰にとっても住みやすく、持続的なまちづくりが今後の課題となってきます。新型コロナウイルスの影響で、日本全体で「IT化」が進められている今こそ、各自治体のシステムを整備すべきでないでしょうか。先行モデルとして紹介した市町村の中には、たくさんの「未来へのヒント」が隠されているかもしれません。