ブロックチェーンの導入|自治体DXの可能性と活用事例

近年、各自治体はオンラインによる手続きなど、デジタルに特化した民生サービスの向上に努めています。そのような中、デジタル化を加速させる手段として「ブロックチェーン」技術の導入が受け入れられています。ブロックチェーンとは、データをブロックと呼ばれる単位でネットワーク上で分散管理し、それらを鎖のようにつないで情報を保管する技術のことを指します。

ブロックチェーンの市場規模は今後も急速に拡大し、あらゆる分野でブロックチェーンの活用が見込まれます。自治体での活用もその一つであり、手続きのオンライン化による住民の利便性の向上や安定した行政運営のために、ブロックチェーン技術の活用が期待されます。

そこで、本記事ではブロックチェーンの基礎をはじめとして、自治体が抱える問題、ブロックチェーンを活用するメリットや活用事例までご紹介します。

ブロックチェーンとは

ブロックチェーンとは、データをブロックと呼ばれる単位でネットワーク上で分散管理し、時系列順に鎖が連なるように保存する技術のことを指します。従来の中央集権的なシステムと比較して、ブロックチェーンはデータの管理者に依存せず、不特定多数のユーザーが分散して情報を保持しています。そのため、時系列に沿って、だれが、いつ、どのような情報を記録したのかを明確に管理できることにより、データの透明性が担保されます。ブロックチェーンの技術は単純な構造ではあるものの、データの改ざんをすぐに発見できるため、主に暗号資産の取引の記録にブロックチェーンの技術が使われています。

また、平成20年に仮想通貨ビットコインの基盤技術として登場したブロックチェーンの技術は、現在は金融分野にとどまらず、医療、商流管理などさまざまな分野で応用されています。平成28年4月28日に経済産業省の商務情報政策局情報経済課が発表した「我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(ブロックチェーン技術を利用したサービスに関する国内外動向調査)報告書概要資料」によると、ブロックチェーンが幅広い分野に影響を与える可能性があると述べており、市場規模は67兆円にのぼるとみられています。したがって、今後もブロックチェーンの技術は拡大の一途を辿ることが予想され、自治体における活用も期待されます。

自治体が抱える課題

手続きの煩雑さ

自治体での行政手続きは煩雑なものが多く、一つの手続きを終えるまでに多くの時間を要します。近年、マイナンバーカードの発行により行政手続きの効率化が図られましたが、いまだオンライン化は進んでいないのが現状です。たとえば、住民票の発行にしても、マイナンバーが記載された住民票を発行する場合は、役所での発行が求められます。

手続きの煩雑さを解消するためには、紙媒体での情報管理や対面での手続きから、データによる情報管理やオンラインで手続きできるシステムの構築が必要になります。その際、セキュリティの向上が重要になってきますが、ブロックチェーンの技術を活用することで、電子文書の信頼性を保証しながらオンラインでの行政手続きが可能となります。

セキュリティの脆弱性による情報漏洩

オンライン化により業務が効率化される一方で、ハッキングやデータ改ざん、情報漏洩のリスクが高まります。自治体や行政では膨大な個人情報が扱われているため、万が一セキュリティの脆弱性により情報漏洩が起きると、多方面に影響を及ぼすとともに、住民からの信用を失ってしまいます。このようなリスクを回避するには、セキュリティの基盤を強化し、日頃から十分にセキュリティ対策に取り組むことが重要です。したがって、セキュリティを強化するシステムを構築するとともに、職員のセキュリティに対する意識向上が求められます。

ブロックチェーン技術を活用すれば、データ改ざんや不正アクセスを防ぎ、セキュリティを強化することができます。ブロックチェーンは時系列に沿って不特定多数の管理者で分散して情報を管理しているため、データの改ざんやハッキングをいち早く発見でき、情報漏洩を未然に防ぐことが可能です。そのため、自治体は情報を一元管理するのではなく、情報を分散して管理できるブロックチェーンの技術を用い、十分なセキュリティ対策を行うことが重要です。

行政運営の不安定さ

紙媒体での手続きや情報管理が基本である自治体において、万が一書類の紛失や災害が起きた場合、個人情報が流出するだけでなく、行政運営に多くの支障をきたします。デジタル化が進んでいるとはいえ、データへの移行に踏み出せず、いまだに紙媒体による情報管理が行われている自治体があるのも事実です。しかしながら、紙媒体は物理的な被害に弱いため、特に災害が多い日本においては、紙媒体での情報管理はデータの紛失や漏洩のリスクが非常に高くなります。

紙媒体からデータでの情報管理に移行するのは労力が必要ですが、ブロックチェーンの技術を活用して情報を管理することで、紙媒体に比べ物理的な被害からデータを守ることができるだけでなく、盤石な情報セキュリティ体制を整えることができます。そのため、万が一サーバーダウンや災害等が起きた場合でも、安定した行政運営が可能になります。

自治体がブロックチェーンを活用するメリット

手続きのオンライン化による利便性向上

ブロックチェーンの技術を活用することで、情報の安全性や信頼性、可用性を担保できるため、オンラインでの行政手続きが可能になります。受付や手続きの自動化により、手続き自体はそれほど煩雑でなくなったものの、些細な手続きだけでも役所に行く必要があります。特に、公共交通機関が充実していない自治体の住民は、役所に行く際に荷が重いと感じる人が多いと思われます。さらに、役所は受付時間が決められており、仕事や家庭の事情で役所に行けず、なかなか手続きができないことに頭を悩ませる住民が多くいます。

手続きの利便性を向上させるためには、ブロックチェーンの技術を活用し、オンラインで行政手続きを行えるサービスを提供することが重要です。これにより、地方の住民もほんのわずかな手続きのために時間をかけて役所に行く必要がなくなります。さらに、24時間365日どこからでも手続きできるため、仕事などの合間をぬって役所に行く手間が省け、住民の利便性が向上します。

セキュリティの強化

ブロックチェーンの技術は、一元的な情報管理に比べセキュリティが大幅に向上します。ブロックチェーンを用いることで、ハッキングやデータの改ざんをすぐに発見することができるため、情報のセキュリティを強化することができます。自治体は住民の個人情報など、一個人の生活に関わる重要な情報を管理しており、セキュリティの高さは住民の安心感や住みやすさに関わります。そのため、自治体によるデータのセキュリティ対策は急務となっています。

セキュリティの強化は、ブロックチェーンの技術による情報管理により実現できます。ブロックチェーンは分散型のデータベースであり、各ブロックはネットワーク全体で共有されるため、情報の改ざんが極めて困難です。そこで、自治体でブロックチェーンの技術を活用して、強固なセキュリティ体制を整えることで、個人情報の漏洩等のリスクを軽減することができます。さらに、情報を適切に管理されているという安心感から、住民の安心感にもつながります。

安定した行政運営

紙媒体による情報管理や、情報が一極集中で管理されている自治体では、災害やサーバーダウンが起きた場合、情報の紛失・漏洩により、後の行政運営が滞ることが懸念されます。世界的に見ても特に災害が多い日本では、万が一の事態に備えた適切な情報管理が求められます。

そこで、ブロックチェーンの技術を活用して情報を分散して管理しておくことで、緊急時に情報の相互共有ができるため、データを迅速に復旧させられる可能性が高くなります。情報セキュリティの高さは、住民の住みやすさや安心感につながるため、自治体でのブロックチェーンを用いた情報管理は、単なる情報セキュリティの強化にとどまらず、住民の満足感が高い街づくりにも貢献します。

自治体におけるブロックチェーンの活用事例

福岡県飯塚市

福岡県飯塚市は、令和3年11月に「飯塚市ブロックチェーン推進宣言」を発表し、産学官で連携して日本を支えるブロックチェーンのまちとして進化することを宣言しました。また、推進宣言を実現するために「FBA(フクオカ・ブロックチェーン・アライアンス)」を設立し、ブロックチェーンを基軸とした活動を通じて、世界に誇れる街づくりを目指しています。実際に、飯塚市はブロックチェーンの実証実験サポート事業を積極的に支援するほか、中学生向けにICT・ブロックチェーン授業を行うなど、推進宣言のとおりブロックチェーンを積極的に推進する動きが見られます。

また、飯塚市は令和2年から令和4年にかけて、行政手続きのデジタル化の実証実験を2度行っています。実証実験では、行政文書の電子データの真正性や信頼性を担保するために、ブロックチェーンの技術が活用されました。本実証実験の結果を踏まえたうえで、飯塚市における行政手続きのデジタル化の実用化が期待されます。

石川県加賀市

画像引用元:e-加賀市民

石川県加賀市は、令和5年3月6日から「e-加賀市民制度」を導入しています。e-加賀市民制度とは、加賀市民以外の人々や海外在住者を「e-加賀市民」と呼ぶ仮想市民として登録し、市や民間が仮想市民に特典を提供することで、加賀市への来訪・定住やサービスの購入増加を意図するものです。

人口減少により、平成26年に加賀市は消滅可能性都市として指摘されました。そこで、加賀市はブロックチェーンの技術を盛り込んだ本制度を制定し、離れた場所にいながらも、都市部の住民と加賀市が関わりをもてるようになるモデルを構築しました。

また、加賀市は令和6年に石川県で起きた災害を受け、e-加賀市民を活用して震災復興のデジタルレガシーを構築すると宣言しています。石川県の災害では、避難所においてデジタルを活用した支援の必要性が認識されました。そこで、加賀市はブロックチェーンの技術が盛り込まれたe-加賀市民を用い、災害時にデジタルによる支援を提供してくれるエンジニア等とのつながりを築くなど、発災直後から復旧復興に向けてのオープンイノベーションの国家戦略特区モデル構築を目指しています。

参考:e-加賀市民

福島県磐梯町

福島県磐梯町はDigital Platformer株式会社と連携し、令和3年7月15日から令和3年12月31日まで、ブロックチェーン技術を活用したデジタル地域通貨「令和3年度磐梯町デジタルプレミアム商品券」を運用しました。本制度には、高いセキュリティの観点からブロックチェーンの技術が活用されました。

磐梯町は、「自分たちの子や孫たちが暮らし続けたい魅力あるまちづくり」をビジョンとして掲げています。そして、ビジョンを実現する手段としてプレミアム商品券のデジタル化に踏み切り、セキュリティ強化の観点から、ブロックチェーンの技術が採用されました。街には高齢者が多く商品券の浸透性が心配されましたが、商品券のデジタル化は成功を収め、令和4年には地域デジタル通貨の「ばんだいコイン」を流通させました。

自治体のDX課題の解決には予約システムRESERVA

画像引用元:RESERVA

自治体や行政がかんたんに導入できるセキュリティ対策として、おすすめなのが予約システムの導入です。予約システムの機能は、行政手続きの予約管理にとどまらず、決済から住民情報の管理、さらに職員やリソースの調整にいたるまで自動化する機能を持つシステムです。複数のツールやプラットフォームを切り替える手間は一切不要で、これにより、自治体や行政の業務プロセスがより効率的に進められるだけでなく、住民にとってもわかりやすく使いやすい環境が提供されます。

現在多数の予約システムがありますが、自治体や行政が効率的にDXを促進するためには、住民のデータセキュリティ対策が厳重なRESERVAをおすすめします。RESERVAは、30万社が導入、500以上の政府機関・自治体も導入したという実績がある国内No.1予約システムです。予約受付をはじめ、機能は100種類を超えており、自治体の業務プロセスがより効率的に進められます。初期費用は無料で、サポート窓口の充実やヘルプの利便性が高いため、予約システムの初導入となる自治体にもおすすめです。

さらにRESERVAは、ISMS認証(ISO 27001)、ISMSクラウドセキュリティ認証(ISO 27017)を取得しており、不正アクセス対策やデータの保護・暗号化の実施もされているため、安全にデータを管理することができます。ブロックチェーンの活用とともにRESERVAを導入することで、一層セキュリティを強化することが可能です。

まとめ

本記事では、ブロックチェーンの基礎から、自治体の課題、ブロックチェーンを取り入れるメリット、そして導入事例について詳しく述べてきました。ブロックチェーンは、単にセキュリティ強化のみならず、行政手続きのオンライン化への柔軟な対応、さらには地域経済の活性化にもつながる重要な技術です。ブロックチェーンを活用することで、住民の住みやすさや利便性向上のほか、安定した行政運営や地方創生が実現できるでしょう。人口減少や少子化が懸念される中、ブロックチェーンの積極的な活用と運用に向けた前向きな検討を進めることが期待されます。

また、ブロックチェーンの活用とあわせて、予約システムを導入することで、自治体DXを効果的に推進できることも示しました。DXを推進するにあたって課題を抱えている自治体の職員は、ぜひ本記事を参考にしてください。

RESERVA lgでは、今後も自治体DXに関する学び、挑戦を取り上げていきます。

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