近年、デジタル技術の急速な進展にともない、多くの自治体でデジタルトランスフォーメーション(DX)が積極的に進められています。その中でも、特に注目を集めているのがドローンを活用した自治体DXの取り組みです。ドローンは、自治体のさまざまな業務において、効率性や安全性の向上を図る重要なツールとなりつつあります。例えば、災害時の迅速な情報収集や被災地への物資輸送、さらにはインフラの点検など、従来の方法では難しい業務を低コストで、かつ安全に行うことが可能です。
本記事では、自治体DXにドローンを活用するメリットと活用する際の課題について解説し、具体的な導入事例を紹介します。
自治体DXとは
自治体DXとは、行政サービスの質を向上させるために、最新のデジタル技術を活用し、自治体の業務やサービス提供方法を根本から見直し、改革する取り組みです。これにより、住民へのサービスの迅速化や透明性の向上、コスト削減などが期待されます。
加えて、SDGs(持続可能な開発目標:Sustainable Development Goals)の達成に向けてもDX化は重要な取り組みです。DX化による業務の効率化や省人化は、SDGsの達成にはほとんど必須であると考えられており、同時に日本が直面する人口減少への対応策になっています。そのため、DX化を活発に進めている自治体が増えています。
ドローンとは
ドローンは、航空法第2条22項の改正により、「無人であり、遠隔操作または自動操縦で飛行できる、200g以上の重量を有する機体」と定義されています。なお、200g以下の無人機は、遠隔操縦で飛行できる場合でもドローンの定義には含まれません。
ドローンの特徴として、遠隔操作が可能であること、低コストで運用できる点、多様なセンサーを搭載できる点、高い機動性を持つ点などが挙げられます。これらの特性により、ドローンは近年、代表的な活用例として出される空撮以外にも、物流や防災、警備、医療などさまざまな分野で広く活用されています。
自治体DXでドローンを導入するメリット
迅速な災害対応
災害時には一刻を争う状況が多いため、ドローンの活用はその対応を大幅に改善します。例えば、地上の道路が寸断されている場合でも、ドローンを使うことで被災地の状況を迅速に把握することが可能です。特に、災害後の初動対応として、ドローンは非常に有効であり、どこからでも飛び立てるという点で、人命救助や被災者の発見にも活用されます。
加えて、ドローンは屋内や狭い場所でも活躍できるため、他の航空機や車両がアクセスできないような地域でも情報を収集できます。ドローンを使用した3Dマッピング技術によって、被災地の正確な状況を即座に把握することが可能です。これにより、救援活動の優先順位を迅速に決定し、最も必要とされる支援を届けることができます。
物資輸送と支援の効率化
ドローンを活用することで、被災地や孤立した地域への物資輸送が効率化されます。地上の障害物を避けながら迅速に物資を届けることができ、道路が寸断されている状況でも支援が可能です。このようなドローンの有用性は、特に、救援物資や医薬品、血液などの緊急物資の配送において、増大します。
また、ドローンは短時間で長距離を飛行できるため、物資の配送時間を大幅に短縮することができます。このようにドローンは、効率的で安全な物資輸送を実現します。
効率的なインフラ点検
ドローンを使うことで、手作業で行っていた業務を省力化することができます。従来のインフラ点検では、足場やクレーン、ヘリコプターなどを使用して人が直接インフラに接近する必要がありました。これには時間やコストがかかり、安全性の確保も重要な課題となります。
しかし、ドローンを使用することで、例えば高所や狭い場所など、アクセスが難しい場所でも容易に点検が行えます。また、ドローンに搭載されている熱画像カメラ、3Dレーザースキャナーなどのカメラやセンサーは非常に高精度なデータを収集することも可能です。
ドローンを活用する際の課題
悪天候時の飛行
ドローンは空中を飛行するため、天候に大きく影響を受けます。特に、強風や雷雨、大雪などの悪天候では、飛行が困難になる場合が多いです。災害時には、天候の変化が激しくなるため、安定して飛行できるドローンの開発が求められます。さらに、寒冷地ではバッテリーの消耗が早くなる点も大きな課題です。
こうした課題を解決するためには、悪天候でも安定した飛行が可能なドローンの開発や、予備機の確保が重要です。また、天候に応じたフライトプランの設定や、運用時のリスク管理が必要となります。
飛行時間の制限
ドローンのバッテリーは容量に限りがあり、長時間の連続飛行が難しいという課題があります。災害時には、長時間にわたる情報収集や捜索が必要な場合もありますが、バッテリー切れのリスクを避けるため、短時間で効率よく運用することが不可欠です。
現在、長時間飛行できるドローンも開発されていますが、さらなる技術進歩が必要です。具体的には、充電ステーションの設置や、飛行中にバッテリー交換ができるシステムの開発など、飛行時間を延ばすための工夫が求められます。さらに、太陽光発電を利用したバッテリー充電の方法や、バッテリー効率を向上させる新しい技術の導入も、将来的には解決策として期待されます。
重量の制限
ドローンには積載重量に制限があり、特に大規模な物資輸送には不向きなことがあります。現在でも小型のドローンでは、運搬できる物資の重量が限られており、救援物資を大量に届けるのが困難な場合が多いです。一方で、最近では200kg以上の重量を運搬できるドローンも開発されており、今後さらに技術が進めば、より多くの物資を迅速に運搬できるようになると期待されています。また、複数のドローンを連携させることで、より多くの物資を同時に運ぶことができ、輸送能力を向上が見込めます。
法的および規制の課題
ドローンの使用には多くの法的規制が存在しており、特に都市部や航空機の飛行区域などでは、ドローンの飛行が厳しく制限されています。そのため、ドローンを運用する際には事前に許可を取得する必要があり、適切な手続きが欠かせません。また、災害時にドローンを使用する場合には、特例措置が適用されることもありますが、依然として安全性や操縦の熟練度が高く求められます。したがって、運用者には専門的な訓練が必要であり、効率的で安全な運用体制の整備が重要です。
加えて、地域によっては、飛行の時間帯や高度に関する制限が設けられている場合もあり、こうした規制を遵守するためには綿密な計画と準備が求められます。そのため、ドローンの活用が進む中で、これらの法的規制を十分に理解し、適切に対応することが今後ますます重要になります。
自治体DXでドローンが導入された具体的な事例
岐阜県中津川市:ドローンと自動配送ロボットの連携
岐阜県中津川市は、株式会社花王と共同で2023年11月に編隊飛行によるドローンと自動配送ロボットを連携させた物流の実証実験を行いました。三機のドローンを用いた編隊飛行により、一機では劣る輸送能力を向上させることができるか、また、着陸ポートと一体化した自動配送ロボットと連携させることで、最終配達地点までの省人化・無人化を確立できるかを検証しました。検証は成功したものの、課題として飛行可能エリアが限定されており、山間部などでは上空の電波確保が難しい場所があることが挙げられています。
千葉県君津市:ドローンを用いた橋梁の定期点検
千葉県君津市では、市内の河川やダムにかかる橋梁の定期点検にドローンを活用し、外注ではなく市の職員が点検を行うことでコスト削減を目指しました。国土交通省の道路法施行規則により、2m以上の橋梁やトンネルなどのインフラ施設については、5年に一度の近接目視点検が義務付けられています。このため、227本もの橋梁を有する君津市では、外注による橋梁点検費用(5年間で1億円)の削減を検討することになりました。市の職員がドローンを操縦して橋梁を撮影し、取得した映像を基に職員が損傷状況を確認・診断する「君津モデル」を確立し、コスト削減に成功しています。
静岡県下田市:ドローンを活用した海水浴場の安全監視
海水浴場の安全監視業務を担当するライフセーバーの多くは県外の大学生であり、少子化にともない継続的な人材確保が課題となっていました。この課題に対処するため、下田市と静岡県は、昨年度から合同でドローンを活用した海水浴場の安全監視業務の省力化や安全性向上の検証を行っています。2022年冬季には、ドローンによる監視や呼びかけの基本的な能力を検証する実証実験が行われました。さらに、2023年の海水浴場開設期間を含む夏期には、ライフセーバーと連携し、ドローンのカメラ映像を活用した状況確認や、遊泳客への注意喚起などのアナウンスが実施されています。
愛知県江南市:シティプロモーション動画にドローン撮影映像を活用
新型コロナウイルス感染症の影響で江南市を代表するイベント「こうなん藤まつり」などが中止となり、江南市を対外的にPRできる機会が減少していたことから、シティプロモーション動画を制作されました。この動画の一部にはドローン映像を使用されており、2023年2月2日に公開されたのち、2023年2月2日から2月21日の間に60万回以上の再生回数を獲得しました。
自治体DXには予約システムRESERVA
自治体DXの中でも特に効果的なのが、予約システムの導入です。窓口相談や施設利用の予約管理だけでなく、オンライン決済や顧客管理、集客などの自動化が可能です。複数のツールやプラットフォームを切り替える手間は一切不要のため、自治体の業務プロセスがより効率的に進められるだけでなく、利用者にとっても一元的で使いやすい環境が提供されます。
現在、多数の予約システムがありますが、なかでも実際に自治体への導入事例のあるRESERVA(レゼルバ)を推奨します。RESERVAは全国30万社という導入数を誇る、国内シェア率No.1の予約システムです。政府機関・自治体では500以上のプロジェクトで活用されており、人口20万人を超える規模の自治体のほか、人口5万人以下の小規模な市町村でも導入実績があります。初期費用は無料でかんたんに設定できるため、予約システムの初導入となる自治体にもおすすめです。
まとめ
本記事では、自治体DXにドローンを活用するメリットと活用する際の課題について解説し、具体的な導入事例を紹介しました。近年推進されている自治体DXにおいて、ドローンの活用は大きな注目を集めています。災害対応や物資輸送、インフラ点検などで活躍するドローンは、安全で低コストな運用が可能で、自治体業務の効率化や迅速化を実現することが可能です。特に、災害時の情報収集や物資輸送において、ドローンは重要な役割を果たしており、二次災害のリスク低減にも貢献しています。
自治体DXにおけるドローンの導入は、今後さらに進展することが期待されており、技術や運用面での課題解決とともに、その活用の幅が広がることで、自治体業務の効率化と住民サービスの向上が実現します。
RESERVA lgでは、今後も自治体におけるDX化推進について取り上げていきます。