自治体のDX人材獲得|「デジタルスキル標準」における「ビジネスアーキテクト」の紹介

自治体のDX人材獲得|「デジタルスキル標準」における「ビジネスアーキテクト」の紹介

デジタルトランスフォーメーション(以下、DXとする)は、今日の社会や組織のあり方を大きく変えました。特に地方自治体では、DXの推進が行政サービスの向上や地域経済の振興に直結しています。しかし、この革新的な変革を実現するためには、適切な知識と技術を持った人材の存在が不可欠であり、彼らの確保と育成は自治体にとって避けて通れない課題となっています。

この背景を受けて、経済産業省は2022年に「デジタルスキル標準」を発表しました。この資料は、自治体がDXを成功させるために必要な人材の特性や役割を明確化しており、それに基づいた育成計画や採用戦略の構築を自治体に推奨しています。

本稿では、この「デジタルスキル標準」に記載されている人材類型である「ビジネスアーキテクト」の役割と重要性に焦点を当て、自治体DX推進のための具体的な取り組みと、それを支える人材の確保・育成の方法について探求します。

自治体DXと「デジタルスキル標準」

DXとは

DXは、デジタル技術の活用を通じて社会や組織の根本的な変革を目指す概念です。

2018年に経済産業省が「DX推進ガイドライン」を発表したことを契機として、この概念は広く認知されるようになりました。このガイドラインでは、DXの目的はデジタル技術とデータを活用してビジネスモデルを変革し、市場の変化に迅速に対応することで企業の競争優位性を確立することだとされています。また、社会システムと情報技術の融合によって、人々の生活の質を向上させ、新たな価値を創出することも重要視されています。

※DX推進ガイドラインは2024年現在、「デジタルガバナンス・コード」に統合されています。

自治体DXとは

自治体DXは、デジタル技術を駆使して行政サービスの質を高め、効率化を図る取り組みです。具体例としては、住民サービスのオンライン化などが挙げられます。これにより、住民は時間や場所に縛られることなくサービスを利用できるうえに、自治体は業務効率化によって限られたリソースを適切に活用可能です。さらに、デジタル技術の導入は新たな公共サービスの開発を促し、地域経済の活性化にも寄与します。

このように、自治体DXは、住民の生活の向上、行政サービスの効率化、地域経済の持続可能な発展のために極めて重要です。

経済産業省「デジタルスキル標準」の発表

経済産業省は2022年に「デジタルスキル標準」を発表しました。これは、全国の自治体や企業に向けた人材確保や育成の指針であり、DX推進に必要な人材類型を明確に定義しています。このガイドラインにより、自治体DX推進のために必要な人材の特性を理解し、具体的な育成プランや採用戦略を立てることが可能になりました。

「デジタルスキル標準」について詳しく解説した記事は以下から確認できます。
自治体のDX推進|成功の鍵を握るDX人材獲得に向けて

本記事では、「デジタルスキル標準」において獲得すべき人物類型の1つとして記載されている、「ビジネスアーキテクト」について解説します。

ビジネスアーキテクトとは

ビジネスアーキテクトは、DX推進において中心的な役割を果たす人材です。彼らは、新規事業開発、既存事業の高度化、社内業務の効率化など、さまざまな場面でビジネスや業務の変革を推進し、目的の実現を目指します。

DXの取組みのテーマ

ビジネスアーキテクトの役割は、DX推進における特定のテーマやプロジェクトの推進にあります。彼らは、組織全体の能力強化や人材育成よりも、具体的なデータやデジタル技術を活用した個別の取り組みを行います。

1.新規事業開発

主な業務

新規事業開発に関わる業務は、まず社会や市場の動向、顧客のニーズ、そして最新の技術トレンドを深く理解することから始まります。これらの情報を基に、新しい事業や製品・サービスの目標を設定し、その目標を達成するためのビジネスモデルやプロセスを慎重に設計します。その際、目標達成に必要な技術やツールの選定も重要です。

次に、提案された製品やサービスが実際に機能するかどうかを検証し、その上で製品の市場投入に向けた具体的な計画を立てます。この段階では、提案されたソリューションが現実の問題を解決できるか、またビジネスとして成立するかどうかを見極めます。

さらに、製品やサービスがリリースされた後も、顧客からのフィードバックや様々なパフォーマンス指標を継続的に監視し、必要に応じてビジネスモデルやプロセスを調整します。

必要なスキル

新規事業開発におけるビジネスアーキテクトに必要なスキルは、主に「ビジネス変革」と「データ活用」に関連する知識と実践力に集約されます。新しい製品やサービスを市場に投入するためには、その目的を明確に定義し、達成するためのビジネスモデルやプロセスを効果的に設計する能力が求められます。これには、市場のニーズを正確に捉え、データを活用して戦略的な意思決定を下す力が不可欠です。

加えて、テクノロジーとセキュリティに関する一定レベルの知識も重要です。ビジネスアーキテクトは、製品やサービスの開発だけでなく、データ構成の定義、技術動向の調査、ビジネスとITの整合性を確保するためのアプリケーション設計、ITインフラの構築、セキュリティ対策の計画など、技術面での広範な設計作業にも関わります。これらのタスクを遂行するためには、関連技術の動向を理解し、適切なツールや手法を選択できる知識が必要になります。

2.既存事業の高度化

主な業務

既存事業の高度化に関わるビジネスアーキテクトの業務は、新規事業開発と同様、現在の市場環境や社会的動向、顧客のニーズ、そして最新の技術進歩を深く理解することから始まります。これらの情報をもとに、既存の事業や製品・サービスの目的を見直し、それを実現するために必要なビジネスプロセスを再設計し、適切な技術やツールを選択します。

次に、提案された改善策が実際に効果を発揮するかどうかを検証し、事業計画を更新します。この段階では、既存の製品やサービスが現在の市場においてどのように機能しているか、また、どのように改善されるべきかを評価し、具体的な改善案を策定します。

加えて、顧客やユーザーからのフィードバックを定期的に収集し、KPIを通じて事業のパフォーマンスをモニタリングします。この情報を基に、ビジネスプロセスや製品の収益性をさらに向上させるための戦略を継続的に検討・実施します。

必要なスキル

新規事業開発と既存事業の高度化は、それぞれに固有の課題がありますが、必要とされるスキルセットに大きな差はありません。新規事業開発では、ゼロからビジネスを構築し、変革を通じて新しい価値を生み出す能力が求められる一方で、既存事業の高度化では、現在の製品やサービスに対する深い理解と、それらを改善し拡大するためのスキルが必要とされます。これには、既存の要件との整合性を確保しつつ、ステークホルダーとの調整を行い、事業をスケールさせる難しさが含まれます。

したがって、既存事業の高度化に取り組むビジネスアーキテクトは、新たなビジネスチャンスを見出し、それを実現するための戦略を立案する力に加え、現在のビジネスモデルを理解し改善するための技術的知見とビジネスセンスを兼ね備えている必要があります。

3.社内業務の高度化・効率化

主な業務

社内業務の高度化・効率化に関するビジネスアーキテクトの主な業務は、まず社内の業務における課題を特定し、これらの課題を解決する目的を明確に定義することから始まります。次に、データやデジタル技術を活用して、より効率的な新しい業務プロセスを設計します。その際、必要な技術やツールの選定も重要です。

この新しい業務プロセスが実際に課題解決に繋がるかどうかの検証も重要な業務の1つです。これには、新しいプロセスの実現可能性の評価、提案されたソリューションの有効性を検証する作業などが含まれます。この段階を経て、具体的な計画の策定やソリューションの要件定義、実装に進みます。

さらに、新しい業務プロセスやソリューションの導入後も、顧客やユーザーからのフィードバックや各種のパフォーマンス指標をモニタリングし、プロセスの収益性向上やコスト削減などの改善策を継続的に検討・実施します。

必要なスキル

社内業務の高度化・効率化におけるDX取り組みに必要なスキルは、特に「変革マネジメント」に関する高い実践力です。新規事業開発や既存事業の高度化とは異なり、社内業務の改善では直接的なビジネス変革やデータ・AIの戦略的活用に関する深い専門知識よりも、組織内の多様なステークホルダーとの効果的なコミュニケーションや調整能力がより重視されます。

このテーマにおけるビジネスアーキテクトは、組織内の異なる部署やチーム間でのコーディネーションをスムーズに行う能力が求められます。ビジネスアーキテクトのこの能力により、組織内での変革プロジェクトが円滑に進行し、業務プロセスの効率化や生産性の向上が実現します。

期待される役割

設計したビジネスの実現に責任を持つ

ビジネスアーキテクトは、デジタル技術を活用して新しいビジネスモデルやプロセスを設計し、その設計に基づいたビジネスの実現を一貫して推進することが求められます。具体的には、目標やビジョンを明確に設定し、それを実現するためのプロセスを計画的に、かつ一貫性を持って進めることが重要になります。このプロセスには、ビジネスモデルやプロセスの設計から始まり、適切な技術やツールの選定、仮説の検証、そして導入後の成果の評価が含まれます。

ビジネスアーキテクトは、これらの活動を通じて、設計段階から実装、評価に至るまでの全プロセスにわたり、リーダーシップを発揮し、プロジェクトの成功に責任を持ちます。また、ビジネスアーキテクトが設計する内容は、ビジネスモデルやプロセスだけにとどまらず、技術面においても幅広い知見が求められます。この過程で、ビジネスアーキテクトは必要に応じて他の専門家と協働することが望まれます。

協働関係を構築する

ビジネスアーキテクトは、DXプロジェクトにおいて中心的なコーディネーターとして機能し、各関係者が自分の専門領域でスムーズに業務を行えるようにサポートします。

この役割を果たすために、ビジネスアーキテクトは以下のような活動を行います。

  1. 関係者のコーディネーション
    プロジェクトの目標を達成するためには、異なる専門知識を持つ関係者間の連携が不可欠です。ビジネスアーキテクトは、これらの関係者を結びつけ、共通の目標に向かって効果的に作業できるようにします。
  2. リソースの確保
    プロジェクトがスムーズに進行するためには、必要なリソースの確保が重要です。ビジネスアーキテクトは、プロジェクトに必要な人材、技術、資金などのリソースを確保する責任を持ちます。
  3. チームの組成
    効果的なチームワークを促進するために、ビジネスアーキテクトは適切なチームの組成を計画し、チームメンバーのスキルや経験を考慮してタスクを割り振ります。
  4. 合意形成の促進
    プロジェクトの進行においては、関係者間の意見の相違が発生することがあります。ビジネスアーキテクトは、これらの関係者間での合意形成を促進し、プロジェクトの目標に向けて全員が一丸となって取り組めるようにします。

他の人物類型との間の連携

デザイナー

DXプロジェクトにおいて、ビジネスアーキテクトは実際のユーザーが直面しているニーズや課題を正確に把握し、理解する必要があります。この点で、デザイナーとの協働が極めて重要となります。デザイナーは、顧客やユーザーの声を集め、その情報を分析することで、製品やサービスをどのように改善すればより魅力的になるかの貴重な洞察を提供します。

データサイエンティスト

ビジネスアーキテクトとデータサイエンティスト間の連携は、製品やサービスの開発におけるデータ駆動のアプローチを強化します。具体的には、データサイエンティストが膨大なデータをから抽出した洞察が、ビジネスアーキテクトによる製品やサービスの開発方針の策定や、既存のビジネスモデルの改善提案に役立てられます。

サイバーセキュリティ

DXの推進において、セキュリティは非常に重要な要素であり、製品やサービスの設計初期段階から緊密に考慮する必要があります。ビジネスアーキテクトがサイバーセキュリティの専門家と連携することによって、製品やサービスに関連するコストとリスクのバランスを考慮しながら、最適なセキュリティ対策を講じることができます。

ソフトウェアエンジニア

ビジネスアーキテクトとソフトウェアエンジニアの連携により、新しい技術やツールを基にしたイノベーティブなアイデアの検討が可能となります。ビジネスアーキテクトは市場の要求や顧客のニーズを理解し、それらを満たす製品やサービスのコンセプトを考案します。一方、ソフトウェアエンジニアは、そのアイデアを実現するために必要な技術的要件を定義し、効率的かつ機能的なソフトウェアアーキテクチャを設計します。

自治体DXにはRESERVA

画像引用元:RESERVA公式サイト

自治体がDXを推進するにあたって、おすすめなのが予約システムの導入です。予約システムの機能は、予約管理にとどまらず、決済から顧客管理、さらに集客に至るまで自動化する機能を持つシステムです。複数のツールやプラットフォームを切り替える手間は一切不要で、これにより、自治体の業務プロセスがより効率的に進められるだけでなく、利用者にとっても一元的で使いやすい環境が提供されます。

現在多数の予約システムがありますが、自治体が効率的にDXを促進するためには、実際に導入事例もあるRESERVAを推奨します。RESERVAは、26万社が導入、500以上の政府機関・地方自治体も導入したという実績がある国内No.1予約システムです。予約受付をはじめ、機能は100種類を超えており、自治体の業務プロセスがより効率的に進められます。初期費用は無料で、サポート窓口の充実やヘルプの利便性が高いため、予約システムの初導入となる地方自治体にもおすすめです。

まとめ

DX人材は、自治体がDXを推進して持続可能な社会を形成するうえで不可欠です。この記事では、自治体DXの推進のために作成された「デジタルスキル標準」に記載された「ビジネスアーキテクト」について紹介しました。また、予約システムを導入することで、DXを効率的に推進できることも示しました。DXを推進するにあたって課題を抱えている自治体の職員は、ぜひ本記事を参考にしてください。

RESERVA.lgでは、今後も自治体DXに関する学び、挑戦を取り上げていきます。

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