近年、デジタル技術を活用した「行政手続きのオンライン化」が急速に進んでいます。これは、住民サービスをより便利にすると同時に、自治体職員の業務効率化にも大きく寄与する取り組みです。特に、デジタルトランスフォーメーション(DX)が各分野で進む中、自治体でも「紙の手続き」から「オンライン手続き」へのシフトが求められています。総務省やデジタル庁の支援もあり、多くの自治体が積極的に電子申請サービスやスマート窓口の導入に取り組んでいます。しかし、こうした変革は一筋縄ではいかず、セキュリティ対策やデジタルデバイドなどの課題も山積しています。本記事では、行政手続きオンライン化のメリット、課題、さらには具体的な成功事例を紹介し、今後の自治体DXの展望について考察します。
1. 自治体DXとは
「自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)」とは、デジタル技術を活用し、自治体業務を効率化しながら住民サービスの質を向上させる取り組みを指します。2021年9月に設立されたデジタル庁を中心に、行政全体のデジタル化が本格的に推進されています。例えば、これまで対面が基本だった各種申請や届出がオンライン上で可能になれば、住民は時間や場所に縛られず手続きができるようになります。また、自治体職員にとっても、事務作業が大幅に軽減されるため、より住民対応や政策立案など本質的な業務に専念できるようになります。一方で、自治体DXを進めるためにはシステム導入や人材育成が不可欠であり、各自治体はその実現に向けて計画的な取り組みが求められています。
2. 行政手続きのオンライン化のメリット
2.1 手続きの効率化と時間短縮
行政手続きのオンライン化は、住民と自治体双方にとって効率化をもたらします。従来、窓口での手続きには長い待ち時間や書類の記入が必要でしたが、オンライン化により24時間365日、場所を問わず手続きが可能になります。これにより、仕事や家庭の都合で平日に役所に行けない住民でも手続きがしやすくなります。また、自治体職員にとっても、データ入力が自動化されるため業務負担が軽減され、手続きの処理スピードが向上します。結果として、行政のサービス品質が向上し、住民満足度も高まることが期待されています。
2.2 コスト削減
オンライン手続きは、コスト削減の面でも大きな効果を発揮します。紙の申請書を印刷・保管する費用や、窓口対応に必要な人件費を削減できるため、自治体運営の効率化が図れます。また、業務の自動化が進むことで、住民からの問い合わせや申請ミスへの対応も減少し、職員の労働負担が軽減されます。こうしたコスト削減は、最終的には自治体の財政健全化にもつながる重要な取り組みです。
2.3 住民の利便性向上
住民の利便性向上は、オンライン化の最も分かりやすいメリットの一つです。例えば、引越しに伴う転出届や住民票の発行など、これまで役所に行かないとできなかった手続きが、オンライン上で完結するようになります。また、申請の進捗状況がインターネットで確認できるシステムを導入すれば、「申請がきちんと進んでいるのか」という不安も解消されます。さらに、スマートフォンやタブレットでも利用可能なシステムを整えれば、若い世代から高齢者まで幅広い住民が手軽に利用できます。オンライン化は、住民の生活に直接関わる利便性を飛躍的に向上させる手段として、今後ますます期待されています。
3. 行政手続きオンライン化の課題
3.1 個人情報保護
行政手続きのオンライン化が進む中で、最も懸念されるのは個人情報保護の問題です。デジタル化により申請書やデータがインターネット上でやり取りされるため、万が一の情報漏洩やサイバー攻撃が大きなリスクとなります。実際、他国では不正アクセスによる個人情報の流出が大規模に発生した事例も報告されています。そのため、自治体には高水準のセキュリティ対策が求められ、定期的なシステム監査や職員のセキュリティ教育が不可欠です。また、住民の信頼を得るためにも、安全な情報管理体制の構築が急務となっています。
3.2 高齢者のデジタルデバイド
デジタル化が進む中で、高齢者の「デジタルデバイド(情報格差)」は深刻な課題となっています。高齢者の中には、インターネットやスマートフォンの操作に不慣れな人も多く、行政手続きのオンライン化が「利用しにくい」と感じるケースが少なくありません。例えば、住民票の申請や税金の支払いをオンラインで行う手続きを案内されても、「操作が分からない」「入力ミスが心配」といった不安から手続き自体を諦める高齢者も存在します。こうした課題に対応するために、自治体はデジタルサポート窓口の設置や、操作方法を学ぶための講習会や個別サポートを提供するなど、支援体制を整備することが求められています。さらに、オンライン手続きを促進する一方で、従来の窓口手続きも並行して維持し、高齢者やデジタルに不慣れな住民が取り残されない仕組みづくりが不可欠です。
3.3 人材不足
行政のデジタル化を推進するためには、IT技術に精通した専門人材の確保が欠かせません。しかし、現状では多くの自治体でIT人材が不足しており、これがデジタル化の進展を阻む大きな要因となっています。特に中小規模の自治体では、デジタルシステムを導入しても「運用できる職員がいない」「トラブル発生時に対応できない」といった問題が起こりがちです。また、デジタル化に必要なスキルや知識が不足している職員が多く、既存職員への過度な負担も懸念されています。この課題を解決するためには、外部のIT専門企業と連携し、技術支援や運用サポートを受ける体制を整えることが一つの有効な手段です。同時に、職員向けのIT研修やリスキリングを充実させ、デジタル技術に強い人材を育成する取り組みも重要です。
行政手続きのオンライン化の具体的な事例
埼玉県庁:電子申請サービスの導入
埼玉県庁は、NTTデータ関西の電子申請サービス「e-TUMO APPLY」を導入し、自動車税の住所変更や職員採用試験の申込などの行政手続き、アンケートへの回答、イベントへの申込みなど、様々な用途で利用しています。住民は24時間365日、いつでも行政サービスを利用可能になったため、令和3年度にe-TUMO APPLY経由の手続きや申請の件数は100万件を超えるなど、高い利便性を提供しています。
さらに、オンライン経由で県へ届いた申請情報を自動的に各部署の業務システムへと連携される仕組みを複数の手続きで導入しました。その結果、手入力による手間の削減や入力ミスの減少など、県職員の業務負担の低減にも貢献しています。
大阪府四條畷市:住民票・転出届のオンライン化
大阪府の四条畷市は、Grafferの市民がオンラインで転出届の手続き・住民票の請求ができる行政サービス「Graffer スマート申請」を導入しました。その結果、住民は、郵送請求を行う場合に面倒な、手書きでの申請書の記載や、定額小為替の購入、返信用封筒や切手の準備が不要になり、無駄を省くことができました。また、郵送請求は、市役所の職員にとってもボリュームが大きい業務の一つであったため、行政手続きのオンライン化により、業務効率が大幅にアップしました。
栃木県宇都宮市:スマート窓口を推進
栃木県宇都宮市は、2023年12月からTKCグループの「かんたん窓口システム」を導入し、窓口の混雑緩和と職員の負担軽減を実現しています。外国人市民の場合、申請者欄にアルファベットで氏名を記入してもらうため、申請を受け付ける職員はその確認に苦労していました。同システムの導入で、在留カード等から情報を読み込み・印字が可能になり、市民と職員の双方にとって利便性が高まりました。
自治体DXにはRESERVA
自治体がDXを推進するにあたって、おすすめなのが予約システムの導入です。予約システムの機能は、予約管理にとどまらず、決済から顧客管理、さらに集客に至るまで自動化する機能を持つシステムです。複数のツールやプラットフォームを切り替える手間は一切不要で、これにより、自治体の業務プロセスがより効率的に進められるだけでなく、利用者にとっても一元的で使いやすい環境が提供されます。
現在多数の予約システムがありますが、自治体が効率的にDXを促進するためには、実際に導入事例もあるRESERVAを推奨します。RESERVAは、30万社が導入、500以上の政府機関・地方自治体も導入したという実績がある国内No.1予約システムです。予約受付をはじめ、機能は100種類を超えており、自治体の業務プロセスがより効率的に進められます。初期費用は無料で、サポート窓口の充実やヘルプの利便性が高いため、予約システムの初導入となる地方自治体にもおすすめです。
まとめ
行政手続きのオンライン化は、業務の効率化や住民サービスの向上、コスト削減など多くのメリットをもたらします。しかし、その一方で個人情報保護やデジタルデバイド、人材不足といった課題が浮き彫りになっており、解決には時間と努力が必要です。行政手続きのデジタル化が進む中、自治体には住民一人ひとりに寄り添い、柔軟で安全なシステムを構築する姿勢が求められています。今後も、行政手続きのオンライン化が着実に進むことで、効率的で持続可能な社会が実現されることが期待されています。
RESERVA.lgでは、今後も自治体DXに関する学び、挑戦を取り上げていきます。