地域医療連携をDX化|医療機関同士の円滑なコミュニケーションを実現

地域医療連携は、医療機関や介護・福祉施設が協力し、住民一人ひとりに対して切れ目のない医療・福祉サービスを提供するために欠かせない仕組みです。少子高齢化や人口減少が進む現代社会において、医療提供体制の維持や効率化が求められており、自治体や医療機関はデジタル技術を活用して課題解決に取り組んでいます。

本記事では、地域医療連携の背景や課題を整理し、各地域の地域医療連携におけるデジタル技術の活用事例を紹介します。さらに、地域医療連携のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に役立つの予約システムについても解説します。

地域医療連携とは

画像引用元:東京都立病院機構「地域医療連携とは

地域医療連携とは、東京都立病院機構で次のように説明されています。

地域医療連携とは、地域の医療機関が自らの施設の実情や地域の医療状況に応じて、医療機能の分担と専門化を進め、医療機関同士が相互に円滑な連携を図り、その有する機能を有効活用することにより、患者さんが地域で継続性のある適切な医療を受けられるようにするものです。

引用元:東京都立病院機構「地域医療連携とは

つまり、近くの病院やクリニックが協力して役割を分担し、患者の住んでいる地域で必要な医療を受けやすくする仕組みです。これにより、患者はかかりつけ医などより身の回りの地域で専門的な医療を受けられます。

地域医療連携が求められる背景

地域医療連携の必要性

地域医療連携は、患者が急性期から回復期、そして自宅に戻る生活期まで切れ目なく適切な医療を受けられるようにするための仕組みです。高度救急医療やリハビリ、在宅診療など、それぞれの医療機関が役割を分担し、1つのネットワークを形成することで効率的な医療提供が可能です。

さらに、医療機関だけでなく、介護や福祉施設、ソーシャルワーカーとも協力し、地域全体で包括的なケアを進めることが重要です。また、医療資源を適切に分配し、高額な機器の共有や専門分野ごとの医師の配置を進めることによって、地域全体の医療水準が向上します。地域住民が安心して医療を受けられる体制づくりに地域医療連携は欠かせません。

少子高齢化と人口減少による医療提供の課題

地域医療連携が求められる背景には、少子高齢化や人口減少が大きく影響しています。

「2025年問題」とは、2025年には人口の約30%が65歳以上となり、高齢化社会がさらに進展することを指します。これにより、医療費や介護費の増大、労働力の不足、そして社会保障制度の持続可能性の確保などが深刻な課題として予想されています。実際に、内閣府が発表した「令和6年版 高齢社会白書」(2024年)によると、「65歳以上の人口は3,623万人に達し、総人口に占める割合(高齢化率)も29.1%となった」とされています。このデータからも、2025年問題が現実的なものであることがわかります。

高齢者、後期高齢者、さらには認知症高齢者の増加に伴い、医療・介護人材の確保はさらに重要な課題となります。厚生労働省が2024年7月12日に発表した「介護人材確保に向けた取組」では、介護職員数について、2026年度には約240万人(2022年比+約25万人、年6.3万人の増加)、2040年度には約272万人(2022年比+約57万人、年3.2万人の増加)が必要と予測されています。

しかし、少子高齢化により労働力が不足する中、医療体制の維持はさらに厳しい状況となっています。そのため、地域医療連携やデジタル技術の活用が不可欠です。これにより、限られた人材でも医療の質を下げずに効率よく提供できる仕組みを築いていくことが求められています。

自治体が果たすべきリーダーシップ

医療連携は、未来に向けて医療サービスの提供を維持するために欠かせません。では、地域の医療連携において、自治体はどのような働きが求められるかを考えていきます。

医療機関・介護、福祉施設・住民間の橋渡し

地域医療連携を円滑に進めるために、自治体は医療機関、介護・福祉施設、住民(患者)の3者間の橋渡し役として重要な役割を担います。地域医療の現場では、医療機関だけでなく、介護施設や福祉施設、地域住民との連携が不可欠です。しかし、それぞれの施設や関係者が独立して動いてしまうと、情報共有の不足や支援の重複・抜け漏れが発生し、効率的な医療・福祉提供が難しくなります。

自治体はこうした課題に対し、各機関・関係者をつなぐ調整役として機能する必要があります。また、地域ならでは課題を把握し、医療資源や人的リソースを適切に配置することで、効率的で効果的な医療・福祉サービスの提供が可能です。さらに、自治体が住民向けの相談窓口や情報発信を行うことで、地域住民自身が医療や福祉サービスに関心を持ち、必要な支援を受けやすくなる環境づくりが期待されます。

地域課題に応じた柔軟な支援体制の構築

地域医療連携を推進するためには、自治体が地域ごとの医療分野の課題を的確に把握し、柔軟な支援体制の構築が求められます。例えば、高齢者が多い地域では在宅医療や介護支援の強化が重要となり、子育て世代の多い地域では小児科や産婦人科の充実が求められます。

さらに、緊急時には迅速に支援策を打ち出せる柔軟な対応力も必要です。例えば、感染症の拡大時に医療機関の連携体制を強化し、予防接種や検査体制の整備を進めることが挙げられます。自治体が主体的に動き、地域に合った支援体制の構築により、医療・福祉の提供を途切れなく継続し、住民が安心して暮らせる地域社会を実現可能です。

地域医療連携にデジタル技術の活用が求められる理由

地域医療連携のデジタル化を進めることで、主に3つのメリットが得られます。

1つ目は、地域間の医療格差の改善です。オンライン診療の導入により、都市部・農村部・離島を問わず、専門医による医療提供が可能になります。農村部や離島では、慢性的な医療従事者不足や、専門医が地域内にいないことで通院が難しいという問題があります。そこで、デジタル技術を活用し、地域外からのオンライン診療が可能になれば、身近で高度な医療を受けることが可能です。

2つ目は、効率的な医療の推進です。業務の自動化でスタッフの作業が軽減し、長時間労働の改善やコスト削減につながります。デジタル化を進め、電子カルテが導入されることで医師、看護師、薬剤師など、医療にかかわるすべての人が迅速に確認できるようになり、緊急を要する患者への対応が迅速になります。

3つ目は、データ保存性の向上です。電子カルテの導入により、クラウド上で安全に管理・共有が可能となり、災害時のデータ消失リスクも減少します。また、電子カルテを使うことで、カルテ上に文字や表現など医師それぞれの個性が減り、共有時のミスを事前に防げます。

デジタル技術を活用した地域医療連携の事例

新潟県魚沼地域|魚沼地域医療連携ネットワーク

画像引用元:うおぬま・米ねっと「米ねっとの必要性

新潟県魚沼地域(十日町市、魚沼市、南魚沼市、湯沢町、津南町)では、地域医療連携ネットワーク(愛称:うおぬま・米(まい)ねっと)という圏域住民の健康寿命延伸とよりよい医療サービスの提供を目指したシステムを構築しています。2024年9月30日時点では、病院・診療所・調剤薬局が97施設、訪問看護・介護・福祉施設等が198事業所、延べ47,288人が加入しています。

魚沼地域では、高齢者の増加に伴い医療・介護のニーズが高まる一方で、医師や介護職員の不足が深刻化しており、限られた資源での対応が求められていました。そこで、地域連携を図っていましたが、これまでは診療情報など必要な情報共有が電話やFAXに依存していたことで、大量の情報を医療機関同士で共有するのが難しい状況でした。こうした課題を解決するため、医療・介護分野の連携を確実かつ効率的に行う手段として、ICT(情報通信技術)を活用し、魚沼地域医療連携ネットワークを構築しました。

期待されるメリット
・重複検査の低減
・安全で効率的な服薬
・これまでの治療内容の説明がかんたん
・救急搬送時の迅速な治療
・介護の記録も医療従事者に共有

岩手中部地域|医療情報ネットワークシステム

画像引用元:NPO法人岩手中部地域医療情報ネットワーク協議会「岩手中部地域医療情報ネットワークシステムについて

岩手県中部では、高齢化の進行と慢性的な医療従事者不足が深刻な課題となっており、特に循環器科専門医の不足が課題として挙げられていました。こうした状況を改善するために、ICT技術を活用して医師やコメディカル(診療を支援する部門のスタッフ)が遠隔で医療に参加できる仕組みを導入しました。これにより、医師が不在の現場でも、遠隔の医師の指示のもとで現場のコメディカルが適切に対応できる体制を整えています。

この取り組みでは、遠隔参加する専門医、地域医療機関、地域のコメディカルや住民組織が柔軟に連携し、効率的な社会システムの構築を目指しています。既存の技術を活用した遠隔医療およびコミュニケーションマネジメントシステムを構築することで、高齢者の健康不安の解消を図るとともに、地域力を高め、持続可能な医療サービスの提供が期待されています。

医療連携ネットワークのポイント

・さまざまな職種や施設が1人の住民に関わるとき、現状を整理、表示、状況の把握が一目で行える仕組みを構築する。
・電子カルテからの情報提供のみとせず、レセプトシステムや調剤システムなど既存システムを最大限に活用、真の双方向連携を目指す。
・システムセキュリティ対策として、「三省ガイドライン」(厚生労働省・経済産業省・総務省)に準拠するとともに、個人情報保護対策として、本人同意に基づいた情報連携・運用ルールを明確化する。
・将来におけるHPKIを用いた電子処方箋や電子紹介状発行への展開や、「電子的診療情報評価料」の算定を視野に入れるなど、ICT技術の進化に対応し、多角的な視点で柔軟性・拡張性をもったシステム構築を目指す。

参考:NPO法人岩手中部地域医療情報ネットワーク協議会「岩手中部地域医療情報ネットワークシステムについて
参考:総務省総合通信局「『医療における地域ICTの利活用』全国先進事業事例集

愛知県名古屋市|はち丸ネットワーク

愛知県名古屋市は、ICTを活用して医療と介護の連携、特に在宅医療と介護の連携における地域包括ケアシステムを推進しています。在宅医療・介護連携推進事業や在宅医療体制の整備事業に係る相談窓口「名古屋市はち丸在宅支援センター」を設置し、在宅療養に関する相談対応や、多職種連携の推進、在宅医療の体制整備を行っています。

画像引用元:はち丸ネットワーク

また、中部テレコミュニケーション株式会社が運用するICTによる医療・介護ネットワーク「はち丸ネットワーク」により、医療・介護現場における情報共有と連携を促しています。はち丸ネットワークでは、3つのツールが提供されており、医療・介護従事者が効率的に連携を図ることができます。

1つ目は「多職種連携ツール」で、患者チャットやスケジュール共有、連携サマリ作成など、多職種間のコミュニケーションを円滑にします。2つ目の「医療連携ツール」では、診療情報の表示や文書送受を通じて、医療機関同士の情報交換が可能です。3つ目は「看護・介護連携ツール」です。訪問看護記録やデータ連携機能を提供し、介護現場の業務を支援します。これらのツールはPCやスマホから利用可能で、国のガイドラインに沿ったセキュリティ対策が施されています。

長崎県|あじさいネット

画像引用元:あじさいネット

あじさいネットは、暗号化したインターネットを使って医療機関同士や薬局をつなぎ、医療情報を共有するシステムです。現在、長崎県では全域で導入されていて、総合病院での診察や検査・処方などの情報を、いつも利用している医院・薬局・訪問看護サービス等でも共有することで、遠くの総合病院へ行かなくても高度な医療を受けられるようなります。あじさいネットが役立つ場面は次のようなケースです。

あじさいネットが役立つケース

①初診時の対応
初めて来院した病院で過去の症状を伝える際、あじさいネットが導入されていることで、医師に正確な情報を把握してもらえます。以前にレントゲンやCTを撮影した場合は、画像の定時もスムーズに行えます。
②投薬、調剤への不安
同じ病気であっても人それぞれ治療薬に違いがあります。あじさいネットで既往歴を確認できると、過去の投薬履歴をさかのぼり、適切な調剤が可能です。
③入院時
かかりつけ医より大きな病院での入院が決まった場合でも、あじさいネット上でかかりつけ医が随時治療の進捗を確認できます。
④退院後
総合病院での入院を終え、かかりつけ医の下での治療に切り替わっても、過去の治療歴をネット上で遡れるため、医療に途切れがありません。

地域医療連携のDX化推進には予約システムRESERVA

画像引用元:RESERVA公式サイト

地域医療連携の効率化を進めるために、予約システムの導入は重要です。特に、予約システムRESERVAは、30万社と500以上の政府機関・地方自治体700を超える医療機関で導入されている実績のある国内No.1の予約システムであり、地域医療連携のDX推進に適しています。RESERVAの導入により、地域医療の業務プロセスを効率化し、患者や住民にとってもわかりやすく使いやすい環境を提供することで、地域医療連携のDX化が加速します。

予約時アンケート機能を利用することで、前病院とのやり取りや診療内容を事前に患者から確認できます。さらに、ファイル提出機能を活用すれば、紹介状や証明書などを撮影して提出してもらえるため、当日その場での確認が不要になります。

予約時アンケート機能について くわしくはこちら:予約時アンケート設定で業務効率化を実現!【RESERVA機能紹介】

ファイル提出機能について くわしくはこちら:予約時に画像や書類などのファイルを提出してもらおう!【RESERVA機能紹介】

RESERVAでは予約情報をCSVファイルで出力できます。CSVファイルは互換性が高く、Excel、Googleスプレッドシート、テキストエディタ、データベースソフトなど、ほとんどのソフトウェアで閲覧・編集が可能です。Excelを持っていない場合や、データを共有する相手の環境が不明な場合でも、CSVファイルを活用することで柔軟に情報を管理・共有できます。

CSVファイル出力について くわしくはこちら:予約情報をCSVファイルで出力【RESERVA機能紹介】

RESERVAに関して詳しくはこちらをご覧ください。

まとめ

今回は、地域医療連携を促進するデジタル技術について紹介しました。デジタル技術の導入により、医療機関や福祉施設が効率的に連携し、医療提供体制の質を維持・向上させることが可能になります。

今後は、デジタル技術を最大限に活用し、地域ごとの課題に応じた柔軟な支援体制を構築することが、地域医療の持続可能な発展に不可欠です。自治体、医療機関、地域住民が一体となって取り組み、誰もが安心して医療サービスを受けられる社会の実現を目指しましょう。

RESERVA lgでは、今後も自治体におけるDX化推進について取り上げていきます。

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