自治体が実践する観光DXの最前線|地域活性化の新戦略

自治体が実践する観光DXの最前線|地域活性化の新戦略

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デジタルトランスフォーメーション(以下、DXとする)とは、デジタル技術によって社会や組織を根本から変革し、新たな価値を創出するプロセスです。2024年現在、DXは自治体が行うあらゆる事業分野で注目を集めています。特に観光事業において、DXは事業効率の向上や新しい顧客体験の創出のために不可欠です。

本記事では、観光事業を行う自治体が直面する課題を踏まえ、DXを推進する上での具体的なメリットや事例などを紹介します。

観光DXとは

観光DXとは、観光産業にデジタル技術を導入し、業務の効率化と新しいビジネスモデルの創造を目指す取り組みです。これは、収集されるデータの分析によって、事業戦略を再検討することに重点を置いています。特に、新型コロナウイルスの影響を受けて観光需要が減少している現状において、このようなデジタル変革は、観光地の課題解決において重要な役割を担っています。

観光DXを積極的に推進している観光庁は、Society5.0の時代に適応する新しい観光モデルを模索しています。このプロセスにおいて、5G高速通信、生体認証、GPSによる位置情報の取得などの技術が活用され、より豊かな観光体験が提供されることが期待されています。

Society5.0とは

Society5.0は、サイバー空間とフィジカル空間を統合することにより、経済成長と社会的な問題解決を同時に達成しようとする新しい社会の概念です。これは、人間中心の社会を目指しており、過去の社会の進化を続く次の段階です。これまでの社会の進化過程は、狩猟社会(Society1.0)、農耕社会(Society2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society4.0)とされており、Society5.0はこれらに続く新しい時代を象徴しています。日本政府は、第5期科学技術基本計画において、このSociety5.0を目指す未来社会のビジョンとして掲げています。

参考サイト:内閣府「Society5.0

観光DXが推進される背景

新型コロナウイルスの流行

新型コロナウイルスの世界的な流行は、観光産業に深刻な影響を及ぼしました。これは、観光DXに注目が集まる背景の1つです。パンデミックによる旅行制限や3密回避の必要性が、非接触のサービスや安全性を重視するニーズを高めました。このような変化に応じて、旅行の予約から決済までをデジタル化し、オンラインで完結できるシステムが注目されています。

また、新型コロナウイルス感染症の流行が落ち着いた2024年現在、コロナ禍での人員削減により生じた人手不足の問題や、離職率の上昇や生産性の低下などの課題が顕在化しており、効率的な経営がより一層求められています。これに対応するため、自治体では旅行者の利便性と働き手の生産性向上に向けた対策として、観光DXの推進が新たな意味で必須です。

外国人観光客の誘致

2024年現在、日本ではコロナ禍による規制が徐々に緩和され、外国人観光客の受け入れを再開しています。観光庁は「明日の日本を支える観光ビジョン」において、2030年までに訪日外国人旅行者数を6,000万人、旅行消費額を15兆円に増やすという目標を設定しました。これらの達成に向けて、観光DXを自治体に積極的に推進しています。

DXの波

インターネットとモバイルデバイスの普及、ビッグデータとAIの活用により、観光産業もDXの波に乗り始めています。観光客は、インターネットやSNSを通じて旅行情報を集め、計画を立てるようになりました。旅行中も、デジタルツールを使って情報を収集し、旅行体験を共有します。このように、観光客はパーソナライズ体験を求めるようになったため、観光業界はこれに応えるためにDXを進める必要があります。

DXの波は、観光事業に大きなチャンスをもたらしています。テクノロジーの進化は、自治体が提供できるサービスの幅を広げ、観光客に新しい体験を提供する機会を創出します。

観光DXのメリット

効率的なマーケティングが可能になる

自治体はより効率的にマーケティング戦略を展開できます。データ分析やAIの活用により、観光客の好みや行動パターンを正確に把握し、ターゲットに合わせたマーケティングを実施することが可能です。これにより、自治体は観光客の満足度を高める施策を打ち出すことができます。

また、SNSの口コミやレビューを活用することで、観光客の声を直接収集し、マーケティング施策に反映させることも可能です。SNSは観光地と観光客の対話や、観光客同士の情報共有にも貢献し、観光客の旅行への意欲を向上させます。

パーソナライズされたサービスが可能になる

自治体は観光客に対してパーソナライズされたサービスを提供できます。例えば、オンラインツアーの実施により、バーチャルながらもリアルな観光体験が可能になります。これにより、観光客は自宅から世界各地の観光地を訪れることができ、新たな体験を楽しむことができます。

さらに、デジタル技術を活用することで、観光地におけるナビゲーションや情報提供がより効果的になります。スマートグラスや音声ガイド、多言語対応の翻訳アプリなどを利用することで、観光客は言語の壁なく、ストレスフリーで旅行を楽しむことができます。

おもてなしへの注力が可能になる

観光DXの推進により、自治体は業務の効率化を図り、人材をより効果的に活用できます。デジタル化によって時間が節約されることで、観光地のスタッフはより人間らしいおもてなしや、顧客に直接的な価値を提供する業務に専念できるようになります。これにより、観光客はきめ細やかな対応を受けることができ、顧客満足度が向上します。

トラブルが減少する

デジタル化の進展により、宿泊予約、チケット発行、施設の利用など、多岐にわたる業務プロセスが自動化され、人的ミスのリスクが軽減されます。また、予約情報や顧客データのデジタル管理により、予約の過不足や人数の記載ミスなどの問題も発生しにくくなります。

さらに、オンライン決済システムの導入により金銭トラブルの件数も減少するため、観光客はより安心してサービスを利用できるようになります。

観光客の旅行体験がより快適になる

観光DXの進展によって、観光客の旅行体験はより快適になります。例えば、オンラインでの24時間宿泊予約システムを利用することで、観光客はいつでもどこでも旅行計画を立てることが可能です。これにより、都合が良い時に観光地に行き、休暇を満喫できます。さらに、キャッシュレス決済により、観光地での支払いがスムーズかつスマートになり、旅行中の金銭の取り扱いに関するストレスが軽減されます。

観光DXの課題

デジタル技術導入のハードルが高い

デジタル化に必要な専門知識や技術を持つ人材が不足している場合、DX化の道のりは困難になります。特に、観光事業は従来デジタル技術が用いられなかった傾向にあるため、新しい技術やシステムの導入には教育や研修が必要です。

加えて、新しいデジタルインフラの構築やシステムのカスタマイズには、相応の投資が必要となります。これには、機器の購入費用だけでなく、運用やメンテナンスのコストも含まれます。

DX人材の獲得が大変

DXの進行には、ビッグデータ管理や高度なデジタル技術の運用能力が求められますが、こうした技術を持つ人材は容易に見つかりません。特に、地方自治体においては、ITスキルを持つ人材の採用と育成が急務であるにもかかわらず、限られた資源と予算内でこれを達成しなければならないという困難があります。

専門的なDX人材の確保は民間企業でも難しいため、自治体は獲得競争において不利な立場にあります。

DXの推進に時間がかかる

観光DXの推進には、長期的なプランニングが不可欠です。その理由として、観光DXは単なるデジタル化に留まらず、ビジネスモデルの再構築や戦略の見直しを伴う包括的な取り組みであることが挙げられます。これには、自治体内外の調整と合わせて、新たな事業計画の設計や市場ニーズへの適応も含まれます。

特に自治体では、トップから現場の職員に至るまでDXの意義と重要性を理解し共有することが求められます。DXは技術導入のみならず、市民サービスの質の向上と効率化のための手段として捉える必要があります。首長や幹部のリーダーシップによるエンゲージメントと組織全体の意識改革が、DX推進において極めて重要となります。

観光DXを進めるうえでの注意点

観光地ごとに課題を明確にする

観光DXを進める上で不可欠なのは、観光地特有の課題を明確にすることです。他の観光地の成功例を模倣するだけでは効果が限定的になります。そのため、観光地ごとに異なる問題点を把握し、それに適したデジタルツールを選定し活用することが必要になります。

具体的には、観光客の不満点や要望を分析し、予約手続きの簡素化や情報提供のデジタル化に取り組むことが挙げられます。また、地域のインフラ整備状況やネットワーク安定性などの技術的な課題に対する改善策の実施も重要です。

民間企業との連携を強化する

デジタル技術の専門知識を持つ企業と協働することによって、観光DXが加速します。これは、自治体単独での取り組みでは難しいデジタル化の戦略立案やシステム導入が、民間企業との連携によって容易になるからです。

また、観光DXの実績を持つ企業と協力することで、新しいテクノロジーや革新的なアイデアを自治体に取り入れることができます。これらの企業は観光DXに必要な専門知識や人材が豊富なため、プロジェクトの成功確率が高まります。

セキュリティに注意する

デジタル技術には、観光客の個人情報を含む様々なデータが組み込まれています。このため、データの管理のセキュリティには特に注意を払うことが必要です。IDを用いて誰がいつデータにアクセスしたかを明確に追跡できるシステムを利用し、不正アクセスやデータの漏洩を防ぐことが求められます。

また、新しいシステムの導入に際しては、設計段階からセキュリティ面を考慮することが重要です。これにより、システムが実際に運用される際に、セキュリティ上のリスクを最小限に抑えることができます。

観光DX推進プロジェクトの事例

観光DXを積極的に推進している観光庁は、「観光DX推進プロジェクト」を実施しています。このプロジェクトは、旅行者の利便性の向上に加え、観光産業の生産性向上・観光地経営の高度化を目的としています。

2023年度は、7つの実証事業が実施されています。本項では、その中から自治体が関わる3つの事例を紹介します。

山形県天童市、米沢市、尾花沢市

山形県の天童市、米沢市、尾花沢市は、観光DXを推進するために、地域全体の観光資源を最大限に活用する取り組みを行っています。これらの地域は、それぞれ独自の魅力を持っていますが、従来は各自治体や個々の事業者が単独で観光コンテンツを提供していたため、観光客の周遊や長期滞在を促進することが難しい状況にありました。

この課題に対処するため、これらのエリアは「広域連携型販売システム」の構築に着手しました。このシステムでは、宿泊施設、体験ツアーなどの複数の観光コンテンツを、1つのプラットフォーム上で同時に予約できるようになっています。これにより、より効果的なマーケティング施策の立案が可能になりました。

福井県

福井県は、観光DXを推進するために、観光に関連する多様なデータの収集・分析に力を入れています。2022年度の実証事業では、県内の来訪者からのアンケート調査を基に、実態をリアルタイムで把握し、これをオープンデータとして公開しました。この取り組みは、福井県観光データ分析システム「FTAS(エフタス)」を通じて行われ、地域の商品造成や消費拡大の促進に寄与しています。

2023年度の実証事業では、これらのデータを活用し、エリアごとのマーケティングモデルケースの構築に取り組んでいます。これにより「データの見える化」が実現し、地域の観光事業者や関係者は高度なマーケティング戦略を立案し、実行することが可能になります。また、福井県はこのプロセスを通じて、データ活用ができる人材も育成しています。

神奈川県足柄下郡箱根町

箱根は年間約2,000万人が訪れる人気温泉地です。しかし、その人気ゆえに交通渋滞や施設の混雑が慢性化しており、観光客に快適な滞在体験を提供するための新たな対策が求められていました。

この課題に対応するため、神奈川県足柄下郡箱根町は「交通の最適な分散」と「周遊性の向上」を目指し、デジタル技術を活用しています。具体的には、箱根観光デジタルマップの構築、BtoB向けデータのオープン化の実施などが挙げられます。これにより、観光客は自分の興味やニーズに応じた情報を受け取れるようになり、リアルタイムの混雑情報や渋滞予測などへのアクセスが可能になりました。

観光DXにはRESERVA

画像引用元:RESERVA公式サイト

自治体が観光DXを推進するにあたって、おすすめなのが予約システムの導入です。予約システムの機能は、予約管理にとどまらず、決済から顧客管理、さらに集客に至るまで自動化する機能を持つシステムです。複数のツールやプラットフォームを切り替える手間は一切不要で、これにより、自治体の業務プロセスがより効率的に進められるだけでなく、利用者にとっても一元的で使いやすい環境が提供されます。

現在多数の予約システムがありますが、自治体が効率的に観光DXを促進するためには、実際に導入事例もあるRESERVAを推奨します。RESERVAは、26万社が導入、500以上の政府機関・地方自治体も導入したという実績がある国内No.1予約システムです。予約受付をはじめ、機能は100種類を超えており、自治体の業務プロセスがより効率的に進められます。初期費用は無料で、サポート窓口の充実やヘルプの利便性が高いため、予約システムの初導入となる地方自治体にもおすすめです。

まとめ

観光DXは、自治体が持続的に観光事業を実施するうえで不可欠です。この記事では、観光DXにまつわる背景、推進することで得られるメリットや自治体の事例などについて紹介しました。また、予約システムを導入することで、観光DXを効率的に推進できることも示しました。DXを推進するにあたって課題を抱えている自治体の職員は、ぜひ本記事を参考にしてください。

RESERVA.lgでは、今後も自治体DXに関する学び、挑戦を取り上げていきます。

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