自治体DXに欠かせないスマート農業|デジタル技術を活用するメリットを紹介

自治体が地域の活性化や行政サービスの向上を図るうえで、デジタル技術を活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進は欠かせない取り組みとなっています。特に、農業分野における労働力不足や高齢化、農家の後継者不足などの課題を背景に、新たなデジタル技術を活用したスマート農業が注目されています。

近年では、自治体DXの一環としてスマート農業を推進し、地域経済の活性化や雇用創出につなげる事例も増えています。そこで本記事では、スマート農業の概要や現在の普及率、期待されるメリット、そして自治体DXの一環であるスマート農業の展望を解説します。

スマート農業とは

スマート農業とは、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、ロボット技術、ドローン、ビッグデータ解析などの先端技術を農業に取り入れ、生産性を高める取り組みを指します。たとえば、土壌センサーや気象センサーの情報をリアルタイムで収集・分析し、作物の栄養状態や生育状況をデータに基づき管理することが可能です。

また、農薬散布や収穫作業を自動化するロボット・ドローンの活用によって、作業負担の軽減や効率の向上が実現します。これらの技術は、世界的に加速する人口増加や気候変動に対処しながら、持続可能な農業体制を築くうえで重要視されています。近年では、大手農機メーカーやIT企業が連携し、スマート農業関連のシステムやサービスの開発を積極的に進めており、農業の現場にも少しずつ浸透してきています。

自治体DXとは

総務省が発表した「自治体DX推進計画」では、デジタル技術を活用して住民の利便性向上を図るとともに、自治体職員の業務効率化によって市民サービスを向上させることが自治体DXの要となっています。たとえば、住民票の発行や税金の納付手続きなどの幅広い業務プロセスを電子化・オンライン化することで、住民や事業者の負担を軽減するとともに、業務にかかるコストや時間を削減できます。

さらに、データ分析により地域の人口動態や経済状況を可視化することで、より適切な政策立案や予算配分を行うことができます。自治体DXは、行政手続きの効率化だけではなく、地域課題の解決や新たな価値の創出を目指す取り組みでもあるため、地方創生にも大きく寄与することが期待されています。

スマート農業の現状と普及率

現行の普及率と課題

農林水産省が2024(令和6年)に発表した「令和6年農業構造動態調査結果」によると、データを活用した農業を行っている農業経営体は24万4,600経営体であり、前年に比べ0.9%増加しました。また、個人経営体、団体経営体ともに農業におけるデータの活用率が増加していることから、スマート農業は経営体の規模を問わず、農業の現場に徐々に浸透しつつあることがわかります。

一方で、中小規模の農家では初期投資費用や専門知識の不足が導入のハードルとなるケースがあります。また、高齢化により新たな技術を学ぶための時間的・心理的負担が大きいことも課題として挙げられます。こうした現状から、国や自治体が補助金制度や技術支援プログラムを充実させ、スマート農業の普及拡大を促進する取り組みを進めることが重要です。

技術の導入と実証実験

スマート農業の技術導入にあたっては、まず実証実験の場を設けることが一般的です。たとえば、自治体と民間企業、大学・研究機関が協力し、地域の実情に合った技術の選定やテストを繰り返す取り組みが各地で進められています。

特に、ドローンを用いた精密農業や自動運転トラクターの導入などは、圃場の地形や気象条件によって効果が異なるため、現地での試験が重要です。また、既存の作業プロセスと新しいテクノロジーをどう融合させるかを検証するには、現場の声を反映した細やかな調整が必要となります。

スマート農業のメリット

農業生産性の向上と効率化

スマート農業の最大のメリットは、生産性と効率性の飛躍的な向上です。センサーから得られる土壌や気温、湿度、日照量などのデータを活用することで、作物に最適な水や肥料を適切なタイミングで与えられるため、安定した収穫量を確保できます。

さらに、ロボットによる収穫作業やドローンによる農薬散布を組み合わせれば、人手不足の深刻化にも対策が可能となります。データに基づいて栽培計画を組み立てるため、不測の天候不順や病害虫被害などにも柔軟に対応しやすくなります。

コスト削減と省力化の実現

農業従事者の高齢化や後継者不足が進む中で、コスト削減と省力化は喫緊の課題です。スマート農業では、自動運転トラクターやロボットなどを活用することで、人件費削減を図ることが可能です。また、データ分析を活用して最適な施肥やかんがいを行うことで、農薬や肥料の過剰使用を抑制し、経費を削減することも期待できます。

データ活用による経営の改善

スマート農業においては、生産データだけでなく市場価格や消費者ニーズ、気象データなどさまざまな情報をリアルタイムに収集し、農業経営に活かすことが可能です。たとえば、作物の生育状況を逐次把握できるため、収穫時期や販売時期を適切に予測し、収益の最大化を図りやすくなります。

さらに、過去のデータと照らし合わせることで、どの時期にどの作物をどれだけ植えるのが最適かといったシミュレーションも行えます。こうした取り組みは、農業経営が「勘と経験」から「科学的根拠に基づくマネジメント」へと進化する契機になることが期待されます。

スマート農業を実現している自治体の事例

北海道士別市(上士別北資源保全組合)

北海道士別市で稲の栽培を行う農業経営体では、水田の大区画化が差し迫ったことから、日々の水管理の省力化が急務となっていました。そこで、スマートフォンなどのデジタル機器で水田の給水・排水を管理できる「ほ場水管理システム」を導入しました。システムの導入により、遠隔で水管理ができるようになり作業負担が軽減されたほか、水管理にかかっていた作業時間が76%削減されました。

香川県観音寺市(株式会社讃久農園)

香川県観音寺市にある株式会社讃久農園は、1.4hの面積でイチゴを栽培・管理しています。当農園では、多くの従業員がイチゴを管理することから、管理基準の統一化を目指していました。

そこで、香川県が開発した「さぬきファーマーズステーション」という環境制御システムを導入したところ、ハウス内の環境をきめ細かに管理できるようになり、収量が増加しました。さらに、管理基準が明確になり従業員全員がイチゴを管理できるようになったため、栽培規模が1.4hから2.4hまで拡大しました。

岐阜県本巣市

岐阜県本巣市で柿といちじくを栽培する農家は、家族4名と臨時雇用数名で栽培を行っており、労働力不足が恒常的に発生している状況でした。そこで、作業効率の向上を目的にリモコン式除草ロボットとアシストスーツの導入を決めました。

まず、除草ロボットの活用によって、刈払い機による作業に比べ、1aあたりの作業時間が約31%も削減されました。さらに、以前は多くの休憩時間を必要としていましたが、アシストスーツの着用により疲労度が半分程度軽減しました。

スマート農業の展望

多様な技術との連携による高度化

スマート農業の今後は、農業分野に限らず、AIやロボット技術、ブロックチェーンなど、さまざまなテクノロジーとの連携によってさらに高度化していくと考えられます。たとえば、ブロックチェーンを活用して生産・流通過程を透明化すれば、食品トレーサビリティを強化し、消費者の信頼を一層得ることが可能です。

自治体としては、こうした新技術を地域の規模や特性に合わせて適切に導入するためのロードマップ作成が必要です。また、最先端技術を取り入れる企業や研究機関との協働を促進し、地域におけるイノベーションの波及を図ることも重要です。

地域ごとのスマート農業モデルの確立

スマート農業といっても、地域ごとに抱える課題や気候、作物の種類は多種多様です。そのため、各地域が独自の強みやニーズに合わせたスマート農業モデルを確立する動きが加速すると考えられます。

海に近い地域では、塩害に強い品種とドローンによる精密散布を組み合わせたり、山間部では小型ロボットや自動運転技術を活用した運搬システムを導入したり、地域に合わせたスマート農業が具体化していくことが期待されます。

次世代人材の育成と持続的発展

スマート農業を支えるうえで欠かせないのが、ITやAIなどの新技術に精通した人材の確保と育成です。高齢化が進行し、人手不足が深刻化する中、若い世代が農業に興味を持ちやすい環境作りが重要となっています。具体的には、農業高校や大学との連携による実習カリキュラムの充実や、自治体主催の勉強会・セミナーの開催が効果的です。

予約システムRESERVAで自治体DXを促進

画像引用元:RESERVA lg

自治体DXでは、スマート農業と並行して、予約システムやオンライン手続きの導入も非常に重要なテーマとなっています。たとえば、公共施設の予約や住民向け講座の申し込みなどをデジタル化することで、住民側の利便性はもちろん、自治体担当者の業務負担軽減にもつながります。

そのようななか、RESERVA予約管理システムは自治体DXを推進するシステムとして大きく注目を集めています。RESERVAは、30万社以上の導入実績があるほか、350以上の業種に対応可能なため、予約システムをはじめて導入する自治体でもスムーズに運用できます。

さらに、100種類以上の機能が搭載されており、自治体業務の運営に効果的な機能も数多くあることから、事業や自治体の規模に合わせて機能を活用することで、自治体DXをさらに推し進めることが可能です。

まとめ

本記事では、自治体DXの要として注目されるスマート農業の概要や導入状況、事例、そして今後の展望について紹介しました。スマート農業は、農業生産性の向上やコスト削減だけでなく、地域経済の活性化や雇用創出にも大きく寄与することが期待されています。

一方で、導入コストや人材育成などの課題が存在するため、自治体と民間企業、研究機関が連携しながら、現場のニーズに合った導入計画を立てることが欠かせません。また、さらなる自治体DXの推進には、農業分野のデジタル化だけでなく、オンライン予約システムなどの活用もポイントとなります。今後は、多様なテクノロジーとの連携や地域特性を考慮したモデルがますます発展し、持続可能な農業と地域の未来を支える重要な鍵となります。

RESERVA lgでは、今後も自治体におけるDX化推進について取り上げていきます。

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