近年、東京への一極集中化やそれに伴う地方都市の過疎化や超高齢化が問題視されています。これを解消するために、国が主導で地方創生を手掛けていますが、その方法の1つとして、政府は自治体DX推進計画の策定やデジタル庁の設置など、地方自治体のDX化を推進しています。また、岸田首相はデジタル田園都市国家構想を看板政策の1つとして挙げており、2021年11月に行われた初会合では、デジタル田園都市国家構想推進交付金を新設することを示しました。
(参考記事:デジタル田園都市国家構想実現会議|首相官邸)
それに伴い、各地方自治体でも独自のDX化による地方創生が取り組まれています。では、一体なぜ地方創生にDX化が必要なのでしょうか。また、そもそも自治体DXとは何なのでしょうか。
本記事では、地方創生における自治体DXやその必要性、さらに取り組み事例について、詳しく解説していきます。
自治体DXとは
DXとはDigital Transformationの略称で、この言葉を最初に使用したスウェーデンのストルターマン教授は、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」と定義しました。自治体DXとは、これを文字通り自治体レベルで行うことで、総務省は「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会 ~誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化~」という自治体DXのビジョンを示しました。
言い換えると、「住民の生活をあらゆる面で改善することを目標とし、その手段としてデジタル技術を活用する取り組み」を自治体DXといいます。
(参考記事:「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」の策定|総務省公式ホームページ)
例えば、香川県高松市では、デジタルの力によって市民の健康増進と地域経済の活性化を図る取り組みがなされています。高松市は民間企業と連携して、スマートフォンアプリ「ケンプリ」を開発しました。
このアプリは歩数、距離、消費カロリーの自動計測や血圧、食事、睡眠など体調に関する情報を記録することができ、1000歩歩くと2ポイント、体重を記録すると3ポイントというように利用するたびにポイントがたまっていく仕組みになっています。そして、今後たまったポイントは市内の地域通貨であるめぐりんポイントとして発行でき、市内の商店街などで利用できるよう開発を進めています。高松市はこのアプリを通じて市民の健康増進や医療費削減・地域経済の活性化に取り組んでいます。
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自治体DXの必要性
地方自治体では、過疎化や少子高齢化による労働人口の減少が問題視されています。それに伴って自治体運営の担い手の減少や税収の減少による財政難が深刻化しているにも関わらず、住民のニーズの多様化や最近では新型コロナウイルスへの対策など、自治体に求められる業務は増加しています。この働き手不足、資金難、業務量増加の傾向が続けば、いつか自治体運営が回らなくなってしまう日が来てしまいます。
そこで解決策として注目されているのが自治体DXです。デジタル技術を自治体運営に取り入れることで、業務の効率化や省人化、財政負担の軽減につながるからです。また、例えば税証明や住民票の写しの申請のオンライン化やAIチャットボットの導入など、自治体DXは経費削減だけでなく、より住民フレンドリーな自治体作りに繋がります。
また、教育、医療、エネルギー、交通、商業、行政など、自治体のあらゆる都市機能をDX化する計画のことをスマートシティ構想といいます。
スマートシティ構想
スマートシティは内閣府によると、以下のように定義づけられています。
・3つの基本理念、5つの基本原則(画像参照)に基づき(コンセプト)
・新技術や官民各種のデータを活用した市民一人ひとりに寄り添ったサービスの提供や、各種分野におけるマネジメントの高度化等により(手段)
・都市や地域が抱える諸課題の解決を行い、また新たな価値を創出し続ける(動作)
・持続可能な都市や地域であり、Society 5.0の先行的な実現の場(状態)
Society5.0とは?
Society5.0とは、1.0(狩猟社会)、2.0(農耕社会)、3.0(工業社会)、4.0(情報社会)に続く新たな社会として、情報社会にAIやIoTが加わったより生活しやすい社会のことです。内閣府はこれを「仮想空間と現実空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」と定義しています。
2021年4月9日、内閣府・総務省・経済産業省・国土交通省はスマートシティに取り組む地方公共団体を支援するため、スマートシティの意義や導入後の進め方などについてのガイドブックを作成しました。ガイドブック内では各都市・地域が抱える課題に合わせて、スマートシティの導入を検討できるよう、分野別に先行事例を紹介しています。
現在AI、IoTをはじめとするITシステムはまちづくりのさまざまな分野に活用されています。新型コロナウィルス対応で浮き彫りとなったシステムの脆弱性を改善すべく、今後は「IT化」へのさらなる投資が見込まれます。では既にスマートシティ化が進んでいる都市ではどんなサービスが展開されているのでしょうか。今回は2018年に国土交通省よりスマートシティの先行モデルプロジェクト・重点事業化促進プロジェクトとして選出された都市の中から、2つの都市を取り上げて解説していきます。
自治体DX 成功事例
札幌市「健幸ポイントプロジェクト」
2017年度、札幌市ではICTの利活用による生活・経済・教育・行政の生産性・質の向上、新価値の創造を目指したプラットフォーム「札幌市ICT活用プラットフォーム DATA-SMART CITY SAPPORO」を構築しました。このウェブサイトは、過去の気象観測記録や将来の推計人口など市が保有するデータや、民間企業から集めたデータをかんたんに探すことができる「データカタログ」、データを活用・分析し、交通機関運行状況、地下鉄人流等を地図やグラフで分かりやすく表示する「ダッシュボード」、オープンデータを用いて開発された様々なアプリやサービスを紹介する「データ活用アイデア」などで構成されています。
札幌市の代表的な取り組みは「健幸ポイントプロジェクト」です。市の調査によると、運動が習慣化している市民が少なく、健康寿命は政令指定都市の中でワースト3位(平成28年)となっています。この状況を改善すべく、「歩行増進による健康長寿社会の実現」と「スマート・プランニング歩きたくなるまちづくりの実現」を目指して、2018年10月から2019年2月にかけて取り組みが行われてきました。
GPSや健康関連データを駆使して、参加者には、スマートフォンアプリで計測された歩数・公共交通利用・健康状態に応じたポイントが付与されるという仕組みであり、「健幸ポイント」付与による健康・歩行活動への効果は以下のような成果が見られました。
・肥満体型であった参加者の18%が、わずか3カ月間で改善
・実験期間における歩数が、全体平均で約1,800歩増加
・積雪のある冬季期間においても歩数が増加・維持
札幌市では今後さらなるデータ駆動型社会を目指して、札幌市のICT活用プラットフォームの活用を模索し、さまざまな課題解決に挑んでいます。
柏市「エネルギー管理システムAEMS」
柏市では、大学キャンパス、病院等の施設が駅から2km圏内に分散しており、情報が集まりやすい好立地を活かし、民間データ・公共データを連携させたデータプラットフォームを構築しています。柏市、三井不動産株式会社、柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)が共同運営者として携わる「柏の葉スマートシティコンソーシアム」では、以下の3つをテーマにまちづくりが進められています。
・環境共生:人と地球にやさしく災害にも強い街
・健康長寿:すべての世代が健やかに安心して暮らせる街
・新産業創造:日本の新しい活力となる成長を育む
土地利用の推進、施設間のつながり強化、環境負荷の低減など解決に励んでいる課題は多岐にわたっており、市はさまざまな新技術を活用したデータ駆動型の「駅を中心とするスマート・コンパクトシティの形成」を目指しています。代表的な取り組みが日本初のエネルギー管理システム「AEMS」です。
「AEMS」の特徴は、町全体のエネルギー全体を可視化できること、そして、電力ピークが異なる施設間で電力の融通ができることです。「柏の葉AEMS」では、オフィスや商業施設などの各施設と、太陽光発電や蓄電池などの電源設備をネットワークでつなぎ、スマートセンターが地域全体のエネルギーを俯瞰しています。さらにオフィスでの電力需要が高まる平日は、「ららぽーと柏の葉」から「ゲートスクエア」へ、商業施設での電力需要が高まる休日は「ゲートスクエア」から「ららぽーと柏の葉」に電気を供給するなど、効率的な電力利用を促し、CO2排出量の低減や災害時のための電力維持を実現しています。
IT格差を減らすためには
政令指定都市を中心とした大都市ではIT化が進む一方で、多くの市区町村ではまだシステムの活用が検討されていないのが現状です。
2018年に総務省が行った調査によると、指定都市では約60%がAIを業務に活用しているにもかかわらず、その他の市区町村では5%にも及んでいません。
国内に見られる「IT格差」は、得られる情報量の可否だけでなく、都市部と地方間で居住環境が大きく変わることから、さらなる人口減少や地方の過疎化など、社会問題にも大きく直結する重要課題です。
では財政面の制約や人材の確保に悩む市区町村では、今後どのように「スマート化」を進めていけばいいのでしょうか。ポイントとなるのは、「できることから着実に導入する」という積極的な姿勢です。最後に、先行モデルの多くの都市で実際に取り入れられ、すぐにでも取り入れられる画期的なITシステムをいくつか紹介します。
音声認識システム
AIの音声認識機能によって議事録作成に時間やコストを大幅に下げることができます。このシステムによって、会議終了後に一から書き起こす必要がなくなり、リアルタイムで音声をテキストに変換することが可能です。最近では多言語に翻訳する機能がついているものもあります。
チャットボット
チャットボットはAIが搭載された新しいコミュニケーションツールで、住民からのさまざまな問い合わせに24時間365日対応することが可能になります。それまで職員が行っていた窓口業務や問い合わせ業務を、チャットボットが代替することとなり、人件費の削減にも貢献します。
RESERVA予約システム
公共施設の利用や町内イベントへの参加において、予約受付システムを駆使することで更なる業務改善が見込めます。最近では、新型コロナワクチン接種において、質の高い予約システムの重要性が顕在化しました。当社が提供する予約受付システムRESERVA(https://reserva.be/)は、18万を超える事業者・官公庁に導⼊されている国内最⼤級のSaaS型予約システムであり、人口20万人を超える規模の自治体のほか、人口5万人以下の小規模な市町村でも導入実績があり、最も選ばれている予約システムです。さらに、Zoomとの連携機能を搭載するなど、業務のデジタルトランスフォーメーションを図れるため、 スマートシティ化をさらに推進することができます。
地方創生事業への導入事例(各項目概要ページにアクセスできます)
自治体で活用されている予約サイト紹介
まとめ
現在、多くの地方自治体で少子高齢化に伴う課題を多く抱えており、地方創生の取り組みが行われています。そして、その課題解決やより住みやすい街づくりの手段としてデジタルを活用する自治体DXが注目を集めています。自治体DXは省人化や業務効率化、財政負担の軽減だけでなく、住民ファーストの自治体運営を行うことができます。その1つの手段として、人件費の削減、イベントや施設運営などの自動化を可能にした予約システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか?
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