地方自治体の行政運営においてデジタルトランスフォーメーション(以下、DXとする)は不可欠な取り組みとなっていますが、それを実現するには相応の資金が必要です。しかし、予算に限りがある自治体にとって、自己資金だけでDXに必要なすべてを賄うのは非常に難儀です。
本記事では、資金調達に頭を悩ませる自治体に向けて、DXを推進するための貴重な手段として「補助金・交付金」を利用する方法を紹介します。これらの公的支援を活用することで、資金面での障壁を克服し、スムーズにデジタル化の道を歩むことが可能です。
DXについて
DXとは?
DXはデジタル技術が社会や組織に変革をもたらすことを指します。これは2004年にスウェーデンのエリック・ストルターマン教授によって提唱された概念で、現在日本を含む多くの国ではビジネス領域で広く用いられています。
DXが求められる背景
DXが求められる背景には、複数の社会・経済的要因があります。
1.業務効率化の要求
業務効率化は、現代の労働環境において欠かせない要素です。システムの改善とソフトウェアの導入により、単純かつ時間のかかる作業が自動化されることで、労働者はより価値の高い業務に注力できるようになります。このことは、自治体の生産性向上に大きく寄与します。
特に、少子高齢化が進む現代では労働力不足が深刻化しているため、効率的な業務遂行はより一層重要です。そんな中、DXが実現することで、業務が迅速化することに加え、労働者のストレス軽減や長時間労働の是正が可能になるなど、より健全な労働環境が構築されます。
2.2025年の崖
「2025年の崖」とは、自治体や企業が直面しているデジタル化の緊急性を象徴する言葉です。経済産業省が2018年に発表したDXレポートによると、自治体や企業が2025年までに古いITシステムの課題に対処しない場合、年間最大12兆円の経済損失が生じるとされています。これは、技術的に老朽化しているITシステムが、肥大化や複雑化、ブラックボックス化などの問題を抱えていおり、維持管理費が高額であるためです。
また2025年頃には、多くの技術者が定年退職を迎えることから、既存のITシステムを維持管理できる人材が不足すると予想されています。これによって、サイバーセキュリティリスクの増加やシステムトラブルによるデータの滅失など、さらなるリスクが発生する可能性があります。
自治体はこの問題を理解し、DXを推進することで、未来への大きな経済損失を防ぐ必要があります。
3.コロナウイルス感染症の影響
新型コロナウイルス感染症拡大によって、多くの企業はデジタル技術の導入を余儀なくされました。この影響でリモートワークが一般化し、オンラインでの営業や打ち合わせが定着した結果、交通費節約やオフィススペース削減など、大幅なコスト削減を実現した自治体が多く見られました。
しかし、このような状況においてもDXが進展しない自治体も少なくありません。その主な理由の1つが資金不足です。新しいテクノロジーやシステムを導入し運用するための初期投資や継続的なメンテナンスには、多くの費用がかかります。そのため、予算が限られている地方の自治体の多くは、DXへの投資が後回しになります。
DX推進にかかる費用の項目
DXには多くのコストが必要ですが、その中でも特に重要な経費項目について以下で解説します。
1.情報収集
情報収集は、DXの成功を左右する重要な要素です。自治体はDXを進めるにあたって、市民のニーズや社会の動向を正確に把握することが不可欠です。具体的には、新しい技術やサービスの可能性を探るための研究費、市民の意見を収集するための調査費が必要になります。
さらに、展示会出展やセミナー開催といった活動も欠かせません。これらのイベントに参加することで、DXに関わる民間企業と連携する機会が生まれ、DX推進における新しい道が開きます。
2.デジタル技術の導入
デジタル技術の導入は、DX推進における重要な投資領域です。このプロセスには、新しいITツールの選定、カスタマイズ、そして導入にかかる費用が含まれます。また、これらのテクノロジーを現行の労働環境に適合させるためには、デジタル機器や施設のアップグレードもしばしば必要とされ、これに伴うハードウェアの導入や修理にも相応の投資が求められます。
さらに、本格的にDXを実現するためには、単一のツール導入を超え、システム間の統合や特定の業務プロセスに合わせたカスタマイズが必要な場合があります。自治体が大規模な変革を目指す際にはさらに大きな経費が発生することがあるため、持続可能な財政戦略を策定することが重要です。
3.IT人材の獲得
IT人材の採用や教育も重要です。これは、デジタル技術を理解し、活用する能力を自治体内に構築するための必要な投資です。IT人材の獲得のためには、DXに適した人材を採用する場合もあれば、既存の職員に対する研修や教育を通じて内部から育成するケースもあります。どちらにしても、これらの人材の獲得費用はDX推進の成功に不可欠です。
さらに、DXを加速するために外部からコンサルタントや専門家を招くこともあります。これらのプロフェッショナルは、最新のテクノロジーや戦略に関する貴重な知見を提供し、自治体のDXを強力にサポートします。
IT人材獲得のための投資は一見すると費用がかかるように見えますが、長期的に見れば自治体のデジタル化を加速するための重要なステップです。
補助金・交付金について
本記事ではこれまでに、自治体がDXを推進する必要性と、それにもかかわらずDXには多くのコストがかかるという課題を詳しく説明してきました。多額の初期投資や継続的なメンテナンス費用は、特に予算が限られている地方の自治体にとって大きな障壁となっています。
本項ではこうした財政的な課題を克服し、DX推進を現実にするための一策として、自治体が活用できる補助金や交付金に焦点を当てます。
補助金・助成金を活用するメリット
1.返還不要な資金を確保
補助金や交付金は、融資には求められる返済義務がないため、自治体の金銭的な負担を大幅に軽減します。特に、DXに関わる資金調達が困難な自治体にとっては、デジタル技術の導入とDX推進のための大きなサポートになります。
2.リスクの軽減
DXを推進する過程では、多くの自治体が高額な投資とそれに伴うリスクに直面します。補助金や交付金の活用は、このリスクを大幅に軽減する効果的な手段です。また、予算の制約が緩和されることで、自治体はより大胆なイノベーションに挑戦しやすくなります。
3.公的評価の向上
過去に補助金や交付金の採択を受けた実績は、その自治体が信頼できる事業を行っていると認定された証となり、今後補助金を受けやすくなります。これは、自治体が持続的に資金を確保し、事業展開を加速する上で大きなメリットとなります。
交付までの流れ
補助金・交付金の申請から交付までの流れは、次のように進みます。
- 公募要領の調査:公式サイト等で補助金・助成金の公募要領を調査し、自身の自治体に適したプログラムを選定します。
- 書類準備:必要な事業計画書やDX推進の進捗状況報告など、申請に必要な書類を準備します。
- 申請手続き:準備した書類をもとに、申請手続きを行います。
- 審査:省庁・事務局等が審査を行い、補助金・助成金の採択を決定します。
- 交付申請:採択されたら、交付申請を行います。
- 事業開始:交付決定に基づき、DX推進事業を開始します。
- 実績報告:事業が進行した段階で、実績報告書を提出します。
- 確定検査:提出された実績報告書に基づき、確定検査が行われます。
- 支給額の確定と振込:検査完了後、認定された支給額が振り込まれます。
補助金・交付金利用にあたっての注意点
1.後払いの交付
多くの補助金や助成金プログラムでは、資金の交付が後払いであることが一般的です。これは、事業が一定の進行や成果を見せた後に、支援金が支給されるということを意味します。そのため、実際にプロジェクトを開始する前に、十分な資金計画を立て、初期段階で必要な経費を他の資金源で賄えるように準備することは不可欠です。
2.期日と必要書類
補助金や助成金の申請期間は短い傾向にあり、必要書類も多岐にわたります。そのため、申請手続きを始める前にすべての要件をよく理解し、期限内に適切な書類を準備できるように計画を立てることが求められます。また、公募要領やガイドラインを熟読し、自身の自治体の事業計画が補助金・交付金の対象となるかどうか、どのような評価基準が適用されるのかを把握することも重要です。
3.交付決定前に事業を開始しない
補助金や交付金の交付決定前に事業を開始してしまうと、その時点で発生した費用が補助対象外と判断される可能性があります。そのため、交付決定の通知を待ってから事業を開始することが推奨されます。交付決定後に迅速に行動を開始できるよう、事前に準備を整え、プロジェクトのロードマップを明確にしておくことが望ましいです。
自治体が活用できる補助金・交付金の例
デジタル基盤改革支援補助金
参考:総務省「自治体の行政手続のオンライン化」
デジタル基盤改革支援補助金は、自治体DXを推進するために総務省が提供する重要な財政支援策です。この補助金の主な目的は、自治体がマイナポータルと基幹システムをオンラインで接続し、特に子育てや介護に関する26の重要手続きをオンライン化するための経費をサポートすることにあります。
補助金は具体的に、連携サーバやファイアウォールの設置、申請管理システムの導入など、オンライン接続に必要な経費に充てられます。これにより、自治体は地域住民に向けたサービスの質を高めることができます。
デジタル田園都市国家構想交付金
参考:内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局
内閣府 地方創生推進事務局「デジタル田園都市国家構想交付金について」
デジタル田園都市国家構想交付金は、内閣府が推進する「新しい資本主義」の一環として地方創生を加速化・深化させるための財政支援策です。この交付金は、自治体がデジタル技術を駆使して地域特有の課題を解決し、目指す地域ビジョンを実現することを支援します。主な対象事業には、実証済みの優良モデルの導入、データ連携基盤を活用したモデルケースの構築、マイナンバーカードの高度利用などが含まれます。
自治体DXにはRESERVA
自治体がDXを推進するにあたって、おすすめなのが予約システムの導入です。予約システムの機能は、予約管理にとどまらず、決済から顧客管理、さらに集客に至るまで自動化する機能を持つシステムです。複数のツールやプラットフォームを切り替える手間は一切不要で、これにより、自治体の業務プロセスがより効率的に進められるだけでなく、利用者にとっても一元的で使いやすい環境が提供されます。
現在多数の予約システムがありますが、自治体が効率的にDXを促進するためには、実際に導入事例もあるRESERVAを推奨します。RESERVAは、26万社が導入、500以上の政府機関・地方自治体も導入したという実績がある国内No.1予約システムです。予約受付をはじめ、機能は100種類を超えており、自治体の業務プロセスがより効率的に進められます。初期費用は無料で、サポート窓口の充実やヘルプの利便性が高いため、予約システムの初導入となる地方自治体にもおすすめです。
まとめ
自治体DXは、持続可能な社会の構築と市民サービスの質の向上のために不可欠です。この記事では、自治体DXにまつわる背景、かかる費用項目、利用できる補助金や交付金について紹介しました。また、予約システムを導入することで、DXを効率的に推進することが可能であることも示しました。DXを推進するにあたって課題を抱えている自治体の職員は、ぜひ本記事を参考にしてください。
RESERVA.lgでは、今後も自治体DXに関する学び、挑戦を取り上げていきます。