現代社会におけるデジタル技術の発展は、私たちの日常生活に多大な影響を与えており、自治体もその例外ではありません。特に、現在地から目的地までの移動手段をワンストップで提供する「MaaS(マース、Mobility as a Service)」の普及は、住民の利便性を向上させ、地域経済を活性化させる重要な取り組みとなっています。
経済産業省が2023年に発表した「地域新MaaS創出推進事業」最終報告によると、沖縄県八重山郡では、周遊フリーパスなどのMaaSチケット購入者が未購入者に比べ、より多くの島へ訪れていることが明らかになりました。アンケートでは、約4割の購入者が「当初よりも多くの島を観光した」と回答しており、MaaSチケットの利用によって、滞在中に旅程を変更し、他島へ訪問する人の割合が増加しています。また、繁忙・閑散期で販売価格を変更したところ、閑散期価格を見た約2割の人が日程を閑散期に変更したという結果になりました。MaaSの導入が、観光の活性化や混雑回避につながる分散化に貢献していることがわかります。
デジタル化の波を受け、各地域がニーズに合わせた独自のモビリティサービスの導入を促進しています。自治体によるMaaSの導入は、住民の利便性を向上させるだけでなく、観光産業の発展や地域ブランドの強化など、多くのメリットを生み出しています。
本記事では、自治体におけるMaaSの現状とその背景について分析し、自治体が直面する課題やMaaSの必要性を具体的な自治体の事例と共に探ります。
日本における自治体のMaaSの現状と背景
自治体が直面する課題
地方部を中心とした人口の減少によって、地域の公共交通においては、利用者の減少や採算性の悪化、サービス水準の低下や路線廃止といった現象が連鎖的に発生しています。また、都市部においては、市街地の拡大や大型商業施設の郊外立地などにより中心市街地の衰退が進み、地域の活力が低下している事例が多く見受けられます。土地利用の変化だけでなく、これまで公共交通機関を利用して中心市街地に行き来していた人が、自動車を利用して郊外へ往復するようになったことが要因として考えられ、地域の活力を削ぐ一因になっています。
MaaSの必要性
MaaSの導入は、地域住民や訪問者の利便性を高め、地域経済の活性化が期待されます。アプリだけで交通機関の状況を確認できるため、交通サービスの使い方がわからない高齢者や、土地勘がない旅行者・出張者に対して、公共交通機関の利用を促すことができます。また、複数の交通手段を選択しやすくなるため、特定の交通機関が混雑する事態を防ぐことが可能です。MaaSは、IoTやAIなどのデジタル技術を駆使してデータを収集し活用する、スマートシティの実現にも役立つと考えられています。交通データや移動サービスを最適に組み合わせて、利便性や快適性の向上を目指すMaaSは、地域の課題解決に大きく貢献します。
自治体がMaaSを導入する目的
移動の利便性向上と地域経済の活性化
自治体がMaaSを導入する大きな目的の一つは、地域経済の活性化です。地域内の移動を効率化することは、住民の地域利用や観光客の消費を促進し、経済循環を高める効果があります。
特に観光産業は、MaaSの活性化が見込まれる分野です。ユーザーがアプリを経由して移動することで、行動データを獲得し、データを利用して効果的なマーケティングを図ることが可能です。また、公共交通機関の割引券や、バスの周遊チケットなどを発行することで、ユーザーの利用につながり、地域経済の発展が期待できます。MaaSの活用で、街のブランド性を高める効率的な施策を考えるデータを集められます。
渋滞緩和と環境保全
MaaSの導入によって、ユーザーが交通機関の混雑状況を把握できるようになり、渋滞の緩和が見込めます。また、公共交通機関の利用促進やカーシェアリングの普及によって、自家用車の利用数が減少し、排気ガスの削減効果も期待できます。都市の大気汚染や地球温暖化は世界的な問題となっており、MaaSは環境に優しい取組みとしても注目を集めています。
具体的なMaaSの活用方法
ここからは、MaaSが具体的にどのような場面で活用されているのかを説明します。
混雑の回避
MaaSを自治体に導入することで、公共交通機関の運行状況や渋滞情報、バスやタクシーの現在地情報などをシステムがリアルタイムで取得し、移動の効率化を図ることができます。電車が混雑しているときには、MaaSがユーザーに対してバスやタクシーなどの代替手段を提案するなど、利用者はよりスムーズに移動でき、移動時間の短縮やストレスの軽減が期待できます。都市部で問題となっている、車の渋滞緩和や、渋滞によるバスの遅延解消にもつながります。
交通の利便性向上
過疎地に住んでいる人や免許返納をした高齢者などに対して、循環バスやオンデマンド車両などの移動手段を提供することで、自由な移動をサポートできます。複数の交通手段を統合することで、ユーザーはかんたんに最適なルートを選択でき、予約から決済までを一つのプラットフォームで完結できます。MaaSを導入することで、高齢者や障害を持つ人でも自由に移動サービスを利用でき、地域社会や社会的な問題解決にも貢献できます。
観光の活性化
MaaSの導入によって、新しい移動サービスが提供されることで、これまでアクセスが不便だった地域にも観光客を呼び込めるようになり、地域内の移動が容易になります。自治体はユーザーに対して新たな観光ルートを提案し、観光の多様化を進めることで再訪も期待できます。
また、観光客はMaaSアプリを利用することで、旅行の計画から移動までがスムーズになります。移動手段の選択や予約、決済が一元化されるため、旅行中のストレスが軽減され、より快適な旅行を体験できます。MaaSは、交通の利便性を向上させるだけでなく、地域の観光産業全体の活性化や持続的な成長を支える重要な役割を果たしています。
自治体によるMaaSの取り組み
茨城県ひたち圏域|ひたちMaaS
茨城県日立市では、経済産業省と国土交通省が推進するスマートモビリティチャレンジに積極的に取り組んでいます。新型コロナウイルスの流行によって通勤形態が大きく変化した通勤客に向け、多様な移動手段の提供を目的としたデマンドサービスや、2代目のマイカー需要を代替するためのシェアリングサービスなど、新しいモビリティサービスの定着を目指し、検証を進めています。
2021年には、乗り換え検索や乗車券の購入、電子チケットやクーポン等の発券が可能なHitachi MaaSアプリの実証実験がおこなわれました。日立市内のさまざまな交通手段の複合的な検索・予約・決済が可能になり、BRTバス、路線バス、電車などの交通機関はもちろん、東京への移動に便利な高速バス、新しい交通手段であるデマンドタクシーも利用できます。アプリの実験を終え、今後の実装に期待が寄せられています。
京都府宮津市|医療MaaS事業
京都府宮津市では、人口減に伴う医療機関の減少や、医師の高齢化といった課題に対し、将来にわたり安心して医療が受けられる地域づくりを目指し、医療MaaSを実施しています。
医療機器などを搭載した車両に看護師が同乗し患者宅へ向かい、テレビ会議システムを通して、病院にいる医師が看護師に指示しながら車内でオンライン診療をおこないます。車両には血圧計、体温計、パルスオキシメーター、遠隔聴診器などが搭載され、必要に応じ採血なども実施する予定です。
MONET Technologies株式会社が提供する「マルチタスク車両」は、複数のレールを活用した専用フロア構造により、後席の取り外しやレイアウトの変更、テーブルの設置といった作業を、工具を使わずできる架装車両です。拡大する医療MaaSのニーズに対応するため、ベッドを分割することで対面式シートとしても使用できる車載用ベッドの開発も進めています。
宮城県仙台市|仙台MaaS
宮城県仙台市では、公共交通の利用促進や来訪者の増加による賑わいの創出を目指し、モビリティと街のアクティビティを1つのサービスとして提供するMaaSを推進しています。
仙台MaaSに登録されているデジタルチケットは、スマートフォン等からクレジットカード決済で購入できます。購入したデジタルチケットは、その画面を駅の改札口やバスの運転手、施設のスタッフ等に見せるだけで利用できます。また、ポータルサイトでは、仙台MaaSのデジタルチケットで行けるコースやスポットなど、仙台MaaSを使って仙台を楽しめるおすすめ情報を発信しています。
DX化には予約システムRESERVA
DXを推進するにあたって、おすすめなのが予約システムの導入です。予約システムの機能は、予約管理にとどまらず、決済から顧客管理、さらに集客に至るまで自動化する機能を持つシステムです。複数のツールやプラットフォームを切り替える手間は一切不要で、業務プロセスがより効率的に進められるだけでなく、利用者にとっても一元的で使いやすい環境が提供されます。
現在、多数の予約システムが存在している中で、 自治体が効率的にDXを促進するためには、実際に導入事例もあるRESERVAを推奨します。RESERVAは、30万社が導入、500以上の政府機関・自治体も導入したという実績がある国内No.1予約システムです。予約受付をはじめ、機能は100種類を超えており、自治体の業務プロセスが効率的に進められます。初期費用は無料で、サポート窓口の充実やヘルプの利便性が高いため、予約システムの初導入となる地方自治体にもおすすめです。
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まとめ
自治体のMaaS推進は、交通渋滞の緩和や公共交通機関の利便性向上にとどまらず、観光事業の振興による地域経済の活性化にも貢献します。また、観光地へのアクセスが向上し、観光客の増加が見込まれることで、地元ビジネスの成長と雇用創出の促進も可能です。今後も自治体と住民が協力し、デジタル技術を活用して持続可能な地域社会を築いていくことが期待されます。
RESERVA.lgでは、今後も自治体のDX化に関する国内事例を取り上げていきます。