【2024年版】独自調査から見えた地方自治体DXの現在地|地方自治体DX総括レポート

【2024年版】独自調査から見えた地方自治体DXの現在地|地方自治体DX総括レポート

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2020年の春から世界的に拡大した新型コロナウイルスの影響で、ここ数年で急速にその知名度を上げたのがデジタル・トランスフォーメーション(以下、DX)です。新型コロナウイルスの感染拡大対策として、テレワークや非接触の技術に注目が集まったことをきっかけに、官公庁や企業、大学などでDXの推進に向けた取り組みが活発化しました。

働き方改革や少子高齢化、都市部への人口集中など様々な課題を抱える日本において、DXはこれらの解決にも重要な取り組みであると考えられます。新型コロナウイルスが拡大するより以前からDXに取り組んできた地方自治体もあり、ポストコロナやウィズコロナに向けた対応だけではなく、以前よりあった課題解決に向けた取り組みにも注目が集まっています。

地方自治体DXのポイント

地方自治体でのDXは行政機関であることから、住民生活の利便性向上が重要であると考えられます。総務省が発表している「 自治体DX推進計画 」の冒頭で以下のように触れられています。

自治体においては、まずは、
・自らが担う行政サービスについて、デジタル技術やデータを活用して、住民の利便性を向上させる とともに、
・デジタル技術やAI等の活用により業務効率化を図り、人的資源を行政サービスの更なる向上に繋げていくことが求められる。

自治体DXの取り組みにおいて、住民生活の利便性向上が最優先だと考えられていることがわかります。行政上の手続きだけでなく、DXによって地域の魅力を活かし、生活の質を向上させる取り組みにも注目が集まっています。

加えて、業務効率化についても、技術の活用による業務改善は人的資源に余裕を生み、サービスの質向上につながります。こちらも、業務改善が目的というよりは、業務改善によって浮いたリソースを住民への対応に回すことを重要視しています。

自治体DXの基本となる2点の考え方を踏まえた上で、当社が独自調査した自治体DXや地方創生の事例と合わせて、自治体DXの現状と今後期待される取り組みについて5つの項目で整理していきます。

1.生活の利便性向上に関する取り組み

生活の利便性向上は、行政手続きのオンライン化などをはじめとして住民の多様な生活スタイルやニーズに合わせたDXが行われています。

代表的なものとしては、2020年の特別定額給付金の申し込みや、新型コロナワクチンの接種予約のオンライン化はDXによる利便性向上の1つです。日本全国で幅広い取り組みが確認できることから、地域性に合わせた取り組みが重要になると考えられます。

キャッシュレス決済

新型コロナウイルスの影響で広まったキャッシュレス決済は自治体でも導入が進んでいます。特に納税や公共料金の支払いにおいてキャッシュレス決済を活用する自治体が増えており、24時間どこからでもスマートフォンなどで支払うことができます。

・納税のキャッシュレス決済
東京都渋谷区|納税のキャッシュレス化
大阪府|納税のキャッシュレス化
千葉県|県税納付のキャッシュレス対応
青森県弘前市|スマホ決済による納税

マイナンバーカード

日本ではあまり普及が進まないマイナンバーカードですが、本人確認書類の他に、確定申告のオンライン化はもちろん、コンビニでの公的証明書の発行などに利用できます。地方自治体においては、マイナンバーカードの普及向上のために独自の取り組みを行う自治体もあります。

・マイナンバーカードの普及向上
宮崎県都城市|「都城モデル」でマイナンバーカードを交付

自治体独自アプリ

住民がよりよく生活するためのサポートとしてアプリを提供している自治体があります。目的は防犯・防災や、公共交通機関の情報提供、地域のごみ捨て日の確認など多岐にわたり、基本は住民生活の利便性向上を目指して運用されています。

・自治体公式アプリの提供
兵庫県加古川市|市公式アプリ「かこがわアプリ」
北海道札幌市|自治体が提供するアプリケーション
・母子手帳アプリ「母子モ」の提供
千葉県いすみ市|株式会社エムティーアイの「母子モ」を提供
青森県弘前市|自治体独自のアプリの提供

チャットボット

自治体での窓口対応とは別に、公式サイトなどにAIチャットボットを設置することで、窓口に来なくてもある程度の相談や質問対応ができるようになります。24時間対応はもちろん、窓口の負荷を減らすことで職員の負担軽減にもつながると考えられます。

・住民向けAIチャットボット・新型コロナワクチン専用チャットボットの実装
神奈川県横浜市|AIチャットボットの導入

利便化に関するその他の取り組み

・LINEを活用した情報発信や相談など
北海道札幌市|LINEによる情報発信
東京都渋谷区|LINEの利用
・行政手続きのオンライン化
神奈川県横浜市|行政手続きのオンライン化
・申請の電子化
石川県加賀市|139個の申請を電子化
・AIによるイベント情報の集約
滋賀県大津市|AIイベント情報集約サービス
・情報センターの設置
福岡県田川市|田川市内のDX化を推進

2.働き方改革や業務効率化に関する取り組み

新型コロナウイルスの感染防止策として取り組みが広がったテレワークですが、それに伴ってサテライトオフィスやワーケーションなど働き方についても徐々に見直しが始まり、地方ではこれを機運として都市部からの移住者を増やすべく支援策を講じる自治体も増えています。

他にも、ロボティック・プロセス・オートメーション(以下、RPA)やペーパーレス化などによって業務の効率化を進め、行政サービスの質の向上にも取り組んでいます。

テレワーク

テレワークは会社に出勤せずにオンラインで業務を行う働き方です。自宅で働く在宅勤務以外にも、サテライトオフィスのような施設で働いたり、あるいは観光地近くで働きながら観光を楽しむワーケーションという形もあり、さまざまな働き方が模索されています。

・テレワーク環境の充実
静岡県沼津市|テレワーク環境の充実度全国で5位、東海4県で1位に
・県内外の企業をテレワークで結ぶ取り組み
新潟県妙高市|テレワーク研修交流施設の建設
・テレワーク向けの宿泊施設とコワーキングスペースを併設
徳島県名西群神山町|充実したテレワーク環境を実現したWEEK神山
・温泉地でのワーケーション
群馬県渋川市|伊香保温泉ワーケーション

RPA・ペーパーレス化など

RPAは人がコンピュータ上で行う定型作業をロボットに記録して行うことで、単純作業などをRPAに置き換えることで、作業時間の削減や人的資源の節約などのメリットが見込めます。その他、業務のデジタル化を進めることで、ペーパーレス化で作業効率の向上や環境への配慮するなどの取り組みがあります。

・RPAの導入
神奈川県横浜市|RPAの活用
千葉県|RPAの活用
・ペーパーレス化の推進
青森県弘前市|ペーパーレス会議の導入
・脱ハンコに関する取り組み
愛媛県今治市|愛媛県で初めて脱ハンコに向けた実証実験を開始
・オフィスのDX化による働き方改革
東京都|未来型オフィス実現プロジェクト
大阪府|大阪府庁へのフリーアドレス導入

3.産学官連携や市民参画に関する取り組み

DXにおける産学官連携は日本全国で確認できます。大学の研究成果を民間企業が実用化し、行政で実践するケースや、行政主導で大学と民間企業に協力を呼び掛けて1つのプロジェクトを進めているケースなどがあります。

その他、DXを考える上で欠かせないのが市民参画です。オープンデータの利用を容易にする整備や、それによってシビックテックをはじめとした市民も地域に貢献できるようなしくみが求められています。

産学官連携

地方創生とDXを並行する形で、地元に密着した大学と企業、自治体間で行われる産学官連携の他、DX化に向けて大手IT企業や有名大学と提携してDXの推進に取り組む場合もあります。

・産学官連携によるDX人材育成
青森県弘前市|生活創生カレッジセミナーの開催
・IT企業との事業連携でDX化やICT活用の基盤作り
岡山県玉野市|IT企業との事業連携によってICTプラットフォームの整備
岐阜県岐阜市|岐阜市とソフトバンク株式会社がDX化のための連携協定を締結

オープンデータ

行政が持つ膨大なデータを民間で利活用できるような取り組みとして、オープンデータ化とそれに伴うデータ利用しやすい環境づくりが挙げられます。あくまでもオープンデータはイノベーションの創出を含めた民間での利用を目的としているので、住民側にも取り組みが求められます。

・オープンデータの公開と気軽に利用できるダッシュボードの解説
北海道札幌市|DATA-SMART CITY SAPPORO
・防災関連データのモニタリングと発信
香川県高松市|防災用水位・潮位センサー

4.デジタル技術の普及に関する取り組み

デジタル技術の普及という観点では大きく2つの観点があります。

1つ目はDXに携わる人材の育成や雇用です。DXによって社会に還元するには、漠然と取り組むのではなく、DXに関する知見を有した人材が必須です。DXを普及させる上では欠かせない要素と言えるでしょう。

2つ目はより広く利用してもらうことです。具体的には学校教育のDX化や、デジタルデバイドの解消などが挙げられます。デジタル技術に慣れ親しみ、利用してもらえる環境がなくては、利便性向上とは言えません。

DX人材育成

地方自治体がDXを進める場合のDX人材確保の手段は育成か雇用です。しかし、DX人材は現時点では需要に対して供給が間に合っていないのが現状です。外部から指導者を招いて育成に取り組む自治体も少なくありませんが、DX人材にはICT活用の理解だけではなく、課題解決能力も必要とされており、一筋縄ではいかない現実もあります。

・多角的なDX人材確保への取り組み
長野県塩尻市|DX人材の確保
・地域課題の解決とDX人材の育成
青森県弘前市|デジタル人材の育成
・DXを推進するリーダーの育成プログラム
北海道札幌市|DX人材の育成

教育のデジタル化

新型コロナウイルスの影響によるオンライン授業の実施などを含め、教育分野でもデジタル化に大きく舵を取る動きが確認できます。取り組んでいく中で問題点もありますが、教育DXによってより質の高い教育の実践が期待されます。

・教育用タブレット端末の配布とICT教育システムの構築
東京都渋谷区|教育向けICTの取り組み
・連絡黒板の電子化
大阪府|教育ICT導入の一環として連絡黒板の電子化へ
・ICTを活用した教育の実施
愛媛県西条市|ICT教育の推進

デジタルデバイドの解消

デジタルデバイドの解消については、デジタル技術に不慣れな人も取り残されることのない仕組み作りが必要です。特に高齢者などを中心に対策が必要で、一部の利便性向上では行政の取り組みとしては不十分と言えます。

・スマートフォンの貸し出し、講習会の開催
東京都渋谷区|デジタルデバイドの解消
・スマホ教室やキャッシュレスアプリの使い方講座の開催
大阪府|高齢者に向けたデジタルデバイド対策

5.スマートシティやSDGsに関する取り組み

「スマートシティ」は、ICT活用と高度なマネジメントによって都市や地域の課題を解決し、新たな価値を創出し続ける持続可能な都市や地域であり、「Society 5.0」の先行的な実現の場と定義されています。

Society5.0とは

 Society5.0とは、1.0(狩猟社会)、2.0(農耕社会)、3.0(工業社会)、4.0(情報社会)に続く新たな社会として、情報社会にAIやIoTが加わったより生活しやすい社会のことです。内閣府はこれを「仮想空間と現実空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」と定義しています。

他にも、地方創生SDGsの達成に向け、優れたSDGsの取組を提案する地方自治体を「SDGs未来都市」と呼び、その中にDXによってSDGsの目標達成に取り組む自治体もあります。

・スマートシティ推進に向けて大手IT企業と提携
香川県高松市|スマートシティ推進に向けソフトバンクやアクセンチュアと連携
北海道札幌市|スマートシティモデル事業の展開
・「SDGs未来都市」選定都市
山形県鶴岡市|SDGs未来都市に選定

DX化が進んでいる自治体の特徴

指針・方針と具体的な施策が明示されている

都道府県においては各都道府県ごとに「情報化推進計画」として計画を立てています(参考:47都道府県の「情報化推進計画」一覧)。概ねどの都道府県においても「デジタル化の目標と方針」と「具体的な施策」について触れられており、都道府県ごとに地域性を持った取り組みの計画が準備されています。

自治体レベルでは、都市圏や一部の自治体では都道府県と同程度のDX化やICT活用に関する推進計画を立てており、取り組みを進めている自治体が出てきています。成功事例として多いのは「その土地の課題をDXによって解決した」というケースで、DXが住民に受け入れられるために重要な要素だと考えられます。

一方で、多くの自治体ではDX化に向けた人材・財源不足や書類ベースでのやりとりに慣れているなどの理由から、満足にDX化の動きに取り組めていない自治体も少なくなく、地方格差を助長しないような取り組みも必要と言えます。

DXの推進に取り組む中心になる人物がいる

自治体の職員は基本的に公務員のため、DXを専門に学んでいる人は現時点では少ないと考えられます。まだ事例として数は少ないですが、民間企業と同様にCDO(Chief Digital Officer:最高デジタル責任者)を雇用する自治体もあります。

DXは技術そのものの理解よりも技術をどう活用するかの方が重要であるため、課題解決のプロセスが大きな意味を占めています。そのため、DXの成功事例を見ていると、担当者が情報技術を専門としていなくても「課題を分析することで解決策としてDX化を進めたことで成功した」というものもあり、必ずしもDX人材が必須というわけではないことがわかります。

現時点ではある個人のリーダーシップで実行されている傾向のあるDX化ですが、DX推進の専門部署などが作られている自治体もあり、組織内に推進を進める体制ができていることが望ましいと考えられます。

自治体DXに関連する国の動き

総務省「自治体DX推進計画」

2020年(令和2年)の12月に総務省が策定した「自治体DX推進計画」は、国を挙げた取り組みである「デジタル・ガバメント実行計画」を効果的に進めるために、国が主導しつつ自治体と足並みを揃えて進めて行く必要があるという考えに基づいています。

国はデジタル社会の実現には自治体の協力が不可欠であると考えており、自治体が取り組むべき課題とそれに対して総務省や関係省庁の支援策を取りまとめています。

総務省「自治体DX推進手順書」

「自治体DX推進手順書」は自治体が着実にDXに取り組めるように総務省が2021年(令和3年)の7月に作成されたもので、「自治体DX全体手順書」「自治体情報システムの標準化・共通化に係る手順書」「自治体の行政手続のオンライン化に係る手順書」「参考事例集」からなります。主に重要なのは「全体手順書」と「参考事例集」でDX推進の度合いに応じて以下の4段階に分類して掲載されています。

  1. DXの認識共有・機運醸成(ステップ0)
  2. DXの全体方針等(ステップ1)
  3. DXの推進体制(ステップ2)
  4. DXの取組みの実行(ステップ3)

これらを確認することで、自治体の現在のステップと対応する取り組み事例からこれから取り組むべき内容を実際の事例を踏まえて整理でき、DXに取り組む上でよくある何からすればいいかわからない、ということが改善できます。

参照:自治体DX推進手順書とは?全体手順書、参考事例集を含めて解説!

デジタル庁「デジタル社会の実現に向けた重点計画」

デジタル庁が策定し、2021年(令和3年)12月に閣議決定された計画で、自治体に限らず日本全体におけるデジタル化の推進について指針となる計画です。各分野にわたって、あらゆるデジタル化の取り組みを網羅しているので、デジタル化に取り組む上では確認するべき計画となっています。

デジタル庁は国内のデジタル化における司令塔としての働きを打ち出していることからも、地方自治体を対象としたデジタル化支援の取り組みなどがデジタル庁からも行われる可能性は低くないと考えられます。

まとめ

既に、DXの動きはコロナ対策から次のフェーズへと移行しつつあり、コロナのためのDXはそう長く続かないことが予想できます。また、DX化を進めることが目的となってしまうと、住民への還元や業務改善などが十分に見込めず、形だけのDX化となってしまう恐れがあります。

DXはあくまでも課題解決の手段であり、今後人手不足が進行する日本において、継続的に人手を必要としない課題解決は重要な意味を持ちます。DXによって生産性や利便性がどう変化したかを注意深く確認して、次に活用、発展を進めることがDX化推進のポイントになります。

さらに、行政では課題解決に加えて住民の利便性向上がDXの目的として含まれるため、住民目線での課題解決が重要です。住民に寄り添った課題解決は自治体の評価につながり、完成した住みやすいまちづくりが人口の流出を防ぎ、移入を増やすきっかけになります。

まずは手のつけやすい課題や解決が急務である課題から、DXを取り入れて解決するとしたらどうすればいいのか、考えてみましょう。

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