近年、少子高齢化により、人口減少が進む地域の自治体では、人手不足が課題となっています。従来の自治体業務に加えて、災害対策や新型コロナウイルスの対応など、業務量は増加する一方で、人員の確保が進んでいないのが現状です。株式会社マイナビが2021年3月卒業予定の全国の大学生・大学院生を対象として行った調査「マイナビ 2021年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査」の結果によると、卒業した高校の所在地と最も働きたい都道府県の一致率は48.7%(前年比1.1pt減)となっており、特に地元外に進学した学生のうち、地元就職希望者が占める割合は30.9%(前年比2.5pt減)と低くなっています。
地方から都市部への若者流出が深刻化する一方で、地方での就職を考える若者を増やし支援すべく、独自の就活支援を行っている自治体があります。今回は先行モデル都市の事例を紹介し、今後自治体が継続的な人員確保に成功するためには、どのような取り組みが必要かについて解説していきます。
U・I・Jターンとは
最近、地方移住や地方就職の話題は、「U・I・Jターン」というワードをよく耳にします。どれも最終的な結果としては、人口過密が進む東京や大阪といった大都市圏から、地方へ移住することを意味していますが、出身地や進学地の差異によって使い分けています。
まず「Uターン」とは、生まれ育った故郷から進学や就職をきっかけに、都市部へ移住した後、再び故郷へ戻って移住することです。都会でのキャリアップを経た後、地元に戻って自然豊かな環境に囲まれ、ゆとりのある生活を送りたいという人が多く見られます。次に「Iターン」とは、都市部に生まれ育った人が、進学や就職をきっかけに、出身地ではない地方に移住することです。出産を機により子育てがしやすい環境や、起業のために安い地価や住居費を求めるもいます。最後に「Jターン」とは、生まれ育った故郷から進学や就職をきっかけに、都市部へ移住した後、故郷にほど近い地方都市に移住することです。故郷にはない利便性と、都会にはない自然豊かな環境のどちらも望む方にとって、魅力的に映る移住の新たな形となっています。
福島県「Fターン」の推奨
「Fターン」とは、福島へのUターン・Iターン・Jターンの総称です。福島県では「Fターンガイド」を作成し、県内の企業情報や就活イベント情報を発信しています。
「Fターンガイド」内には、様々なサービスが展開されています。中でも特徴的なのは、コミュニティサービス「つなふく」です。「つなふく」では「ふくしまと離れていても、ふくしまと繋がれること」をコンセプトとし、LINEアプリを用いてホームページのQRコードからわずか10秒で友達登録ができます。公式アカウント内では、つなふくキャンパスの先生・職員から、就活に役立つ情報や実際に福島で働く人のインタビュー記事、さらには福島の郷土食や地元ニュースなどのほっこりする情報が発信されています。
他にもガイド内には、企業のPR動画や若者を対象としたイベント、女性へ向けた仕事と育児の両立アドバイスなどが掲載されています。
広島市「有給長期インターンシップ」
広島市では2014年から夏休みに有給長期インターンシップを実施しています。「有給長期インターンシップ」とは、2週間から1カ月半にわたる期間中、受入企業から賃金をもらいながら、与えられた課題に取り組むインターンシップです。
参加対象者は広島県内の国公私立大学を中心とした大学生・大学院生(1・2年生も可)となっていますが、県外に住んでいる学生でも参加することができます。また広島市役所をはじめとした県内の様々な業界の企業が参加し、参加学生は長期間、実際の業務を体験することで、短期間では得ることのできない「働く」ことについての具体的なイメージをもつことができます。
長野県「シューカツNAGANO」
2017年に文部科学省が行った調査によると、長野県は都道府県別の大学収容力ランキングでワースト3位に入っており、大学進学時における若者の人口流出が深刻な課題となっていました。この事態を受けて、長野県は上伊那地域の市町村や金融機関などと連携し、2015年に上伊那地域若者人材確保連携協議会を設立しました。
信州の就活サイト「シューカツNAGANO」では無料のメールマガジンを購読できたり、最新の企業情報を得ることができます。さらに東京都銀座にある長野県アンテナショップ「銀座NAGANO」では、同ショップの4階に「シューカツNAGANOキャリア相談室」が設置されています。
銀座NAGANOは、地下鉄銀座駅から徒歩1分の好立地で、1階はアンテナショップとなっています。企業説明会の開催だけではなく、エントリーシートの書き方や面接練習などの就活全般に関する相談も無料で受け付けています。
他にも県外に住む大学生が、県内の企業や官庁で実施されるインターンシップに参加するための必要な経費の一部を、最大で4万円を助成する支援も行っています。
地方就職者を増やすカギは「システムの活用」にあり
地方自治体は、企業や都道府県と協力して、独自の就活支援を通して、地元への就職者を増やす努力を重ねていますが、未だに顕著な成果が見られない地域が多いのが現状です。「マイナビ 2021年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査」によると、地元以外に進学している人が地元企業への就職活動で最も障害に感じていることとして、最も多かったのは「地元までの交通費」、続いて「地元までの距離・時間」、「やりたい仕事がない」といった声が上がりました。
インターンシップ参加や面接を受けるためだけの膨大な時間や往復の交通費、宿泊費といった費用は、金銭的・時間的余裕のない学生にとって大きな負担となります。一方「地元企業がWebセミナーやWeb面接を実施している場合、その企業への志望度は上がるか」という質問に対して、約半分の学生が「Webセミナーを実施していると志望度が上がる」と回答しました。
新型コロナウイルスの感染拡大で、県境をまたぐ移動が懸念される中、今後は、オンラインツールの活用やチャットボット・AIなどを用いて、「いつでも・どこでも・誰でも」就活に関する情報を得られる仕組みづくりが重要になると考えられます。
すぐに導入できる!RESERVA予約システム
今回紹介した自治体による就活相談会や企業説明会といったイベントにおいて、必要不可欠となるのが予約や参加者管理といった業務です。当社が提供する予約受付システムRESERVA(https://reserva.be/)は、17万の事業者・官公庁に導⼊されている国内最⼤級のSaaS型予約システムであり、人口20万人を超える規模の自治体のほか、人口5万人以下の小規模な市町村でも導入実績があります。最初から大きなシステムを導入するのは難しいと考える方にとっても、かんたんな操作で利用することができます。
就活支援イベントへの導入事例(各項目概要ページにアクセスできます)
・就職課窓口のための予約システム
・オンライン進学相談のための予約システム
・オンライン転職相談のための予約システム
・採用セミナー・採用説明会のための予約システム
まとめ
時代の変化とともに、学生の「働くこと」に対する価値観は多様化し、一人ひとりが自分らしい将来を考える選択をできるようになりました。今後は、「地方就職」という選択肢をより周知させ、自治体を中心とした地域全体が魅力付けをしていく取り組みが重要です。今はまだ人口流出が進んでいない地域も、人口減少が日本全体で加速していく近い将来に備えて、積極的な人材確保や新たなシステムの活用を進めていくことが必要なのではないでしょうか。