笠岡市は広大な笠岡湾開拓地での畜産や農作物の栽培、立地を活かした海水産業への従事、そして日本遺産にも選ばれた笠岡諸島などの美しい自然を用いた観光業によって発展してきました。
しかし、近年では産業従事者の高齢化・後継者不足、自然環境の変化や乱獲による漁獲量の減少、そしてコロナ禍による観光客の減少が大きな問題となり、苦境に追い込まれました。そこで本市は、各分野にデジタル技術を導入し、業務の効率化や市の魅力向上を進め振興を目指しています。特に市外への魅力発信活動が評価され、その取り組みは日経デジタルフォーラムと自治体DX白書が共催する日経自治体DXアワードの行政業務/サービス変革部門で部門賞を受賞しました。
本記事では小規模な自治体でありながら、先進的に自治体DXを進める笠岡市の取り組みを紹介します。
岡山県笠岡市の基本情報
人口 | 4万5940人(2022年5月末時点) |
面積 | 136.24k㎡(2017年10月1日時点) |
公式サイト | 笠岡市 まったり、のんびり、ゆったり |
市役所住所 | 笠岡市中央町1番地の1 |
グルメ・お土産 | 海鮮、笠岡ラーメン、灰干し、蓬莱柿 など |
観光地 | 笠原諸島、笠岡市立カブトガニ博物館、笠岡市立竹喬美術館 など |
笠岡市は岡山県の南西部にあり、瀬戸内海に面した港町です。本市は沖合には個性豊かな7つの島々からなる笠岡諸島や、四季折々の花々が咲き乱れる笠岡湾干拓地があり、自然に溢れゆったりとした時が流れています。本市は『田舎暮らしの本』が発表する住みたい田舎ベストランキング(2021年第9回)で瀬戸内海沿岸の市で第1位を獲得しており、都心からの移住者も増えています。
移住・定住支援
VR空き家内覧
笠岡市はコロナ禍でも移住者を呼び込むために、空き家バンクにVR内覧を導入しています。VR空き家内覧では360度カメラで各部屋を撮影することで、利用者に実際に家の中を歩いているかのような体験を提供しています。VR内覧では、移住希望者自身が部屋を隅々まで確認できるため、希望者とのミスマッチや担当者への問い合わせが減少し業務の効率化が促進されています。
また、オンライン相談会を並行して行うことで、移住希望者の細かな疑問やニーズにも対応し、対面時と同等のサービスを行っています。VR導入後は問い合わせ件数が急増し、導入から4カ月でVR内覧可能物件中2件が契約済み、9件が契約間近となりました。
参考サイト:「笠岡市 VR空き家内覧」
笠原オーダーメイドツアー
笠岡市では移住希望者に対し、市内案内から空き家バンクの紹介まで、希望者の需要やスケジュールに応じたオーダーメイド型の現地案内を実施しています。行きたいところ、体験したいことに応じてルートを決めるため、空き家バンクの内覧ついでに海を見たり、少し足を延ばして隣町まで行きアクセスの良さを確認したりと、柔軟なツアーとなっています。
また、笠岡市に行ってみたいけど一人は不安といった悩みを抱える人の利用も受け付けているため、市の魅力だけでなく、市民の温かさも感じられるサービスです。
参考サイト:「笠岡市 オーダーメイドツアーについて」
移住・定住支援金
本市は、様々な層への移住支援を行っています。具体的には、子育て世代(40代以下)への住宅新築助成金の給付や、多世代同居等支援助成金、新婚世帯に対する新婚等世帯家賃助成金給付などが挙げられます。
また、空き家・空き地の有効活用に向け、空き家・空き地バンクに登録すると、家財道具処分及び運搬にかかる費用を負担する空き家等における家財等処分助成金給付や、空き家の老朽化を防止するための空き家解体撤去費助成金補助も実施されていることが確認できました。
参考サイト:「笠岡市 移住・定住の支援制度」
お試し住宅
笠岡市では市への移住やサテライトオフィス・リモートワークを希望する人向けに、笠岡市での暮らしを体験できるお試し住宅を設置しています。料金は1日1,000円で最大60日間滞在可能です。Wi-Fi、冷蔵庫や調理器具、洗濯機、寝具などは備え付けで用意されているため、旅行感覚で気軽に移住体験が可能です。
参考サイト:「笠岡市 移住・多拠点生活用お試し住宅を利用してみませんか」
特産品発信
笠岡市は、コロナ禍で観光客も周辺の観光産業消費も減少している一方で、ふるさと納税に対する関心が上昇していることに目を付け、笠岡市と笠岡市の特産品の魅力を伝えるオンラインイベントを開催しました。
このイベントでは、ふるさと納税品の人気商品シャインマスカットとVRイベント参加券をセットで販売しています。イベントの前日までにシャインマスカットが配達されるため、実際に笠岡市のぶどうを食べながら生産者の話をリアルタイムで聞くことができます。また、VR空間ならではの機能を活かし、360度カメラで撮影した農園や、人気観光地笠岡ベイファームのコスモス畑の画像内をアバターで移動して観光気分を味わったり、アバターを活かしたクイズや宝箱探しゲームが行われました。
冬には海のオンラインマルシェイベントをZoomで開催し、冬の人気商品である牡蠣と地酒の魅力を発信しています。本イベントでは、生産者による殻の向き方レクチャーや、シェフによる牡蠣鍋とカルパッチョの調理を見て学ぶことができます。
笠岡市は、非対面だからこそ楽しめるイベントを開催することで、参加者が市に興味を持ち、観光やふるさと納税に踏み出すきっかけづくりをしていました。本市は今後、ZoomとVR空間を組み合わせた視聴と参加が融合した新たなオンラインイベントを行い、より多くの市外の人々へ魅力を発信していく予定です。
参考サイト:「岡山県笠岡市ふるさと納税人気商品シャインマスカットの魅力を伝えるバーチャルイベント!前日までにマスカットもお届け。」
参考サイト:「自宅にいながら岡山県笠岡市への旅気分を味わえる自治体初のふるさと納税品体験バーチャルイベント事後レポート~笠岡名産のシャインマスカットをリアルとVRで体験~」
参考サイト:「岡山県笠岡市「ふるさと納税」冬のNo.1人気商品濃厚牡蠣の魅力を伝えるイベント“海のオンラインマルシェ”~殻付き牡蠣の簡単なむき方や、シェフによる絶品鍋レシピも紹介~」
スマート農業
笠岡市はロボット・AI・IoTなどの先端技術を生産現場に導入し、効果を明らかにすることを目的に展開されているスマート農業実証プロジェクト(2020年度)に採択されています。このプロジェクトに選ばれた農業生産法人有限会社エーアンドエスは、ロボットトラクターの導入・全自動野菜収穫機・育苗自動機・ドローン等を導入することで、苗植えや収穫の労力を大幅に削減し、以前は3日かかっていた耕作を機械化後は2時間で完了しています。
また、笠岡市には「世界最先端の園芸テクノロジーと再生可能エネルギーを活用して、安心して食べられる美味しい野菜を、一年を通して安定的にお届け」することを目的として先進的な農業を進めている株式会社サラがあります。パプリカ棟3.4ha、トマト棟6.0ha、レタス棟2.5ha、梱包・出荷エリア1.0haから成る国内最大規模の農園を持つサラは、干拓地にバイオマス発電所を建設しました。木材チップやヤシ殻などのバイオマス燃料を燃やして発電した電力を使って野菜栽培を行くことで、循環型の持続可能な施設運営を実現しています。
スマート農業は、農業従事者の減少や作業の効率化だけでなく、環境への負担軽減や食料自給率向上に大きく貢献します。笠岡市では、干拓地の活性化・第一次産業の再興に向け、以上の農場と連携しながらスマート農業を推進しています。
参考サイト:「農業効率化の実現 エーアンドエス×JA倉敷かさや」
参考サイト:「先進の機械とGPSによる精密農業で輸入野菜を相手に、究極のコストダウン」
参考サイト:「スマート農業実証プロジェクト 令和2年度スタート課題の概要」
参考サイト:「持続可能な農業を笠岡の地で」
RESERVAで自治体DXを推進
岡山県笠岡市でも精力的に進められているDX化の第一歩としておすすめなのが予約システムの導入です。予約システムを導入すると、電話対応やExcelでの予約管理が解消され、業務の効率化と省人化が実現します。無料で利用可能なシステムもあり行政サービスに取り入れやすく市民も効果を感じやすいため、役場のデジタル化のファーストステップに最適です。
当社が提供する予約受付システムRESERVA(https://reserva.be/)は、20万社以上の事業者や官公庁に導入されている国内最大級のSaaS型予約システムです。人口20万人を超える大規模な自治体から人口5万人以下の小規模な市町村での導入実績もあるため、自治体の規模を問わず、利用可能です。
【地元の魅力を活かした施設運営への導入事例】
・RESERVA活用事例|ビワマストローリングガイド京丸【クルージング・遊漁船】
・RESERVA活用事例|サウナンヤルケン【施設・キャンプ場】
【自治体で活用されている予約サイト紹介】
・ワーケーションの予約システム
・コワーキングスペースの予約システム
・宿泊施設の予約
・観光ガイド・ツアーの予約
・公共施設の予約システム
まとめ
今回は、岡山県笠岡市の地方創生事例を紹介しました。笠岡市は小規模な自治体でありながら、デジタル技術を用いたユニークな方法で市外へ魅力を発信していました。
各自治体ではDX化に向けた動きはさらに活発化し、さまざまな業務のデジタル化が検討されるでしょう。時間の有効活用・市民の利便性向上のために、予約システムの導入など分かりやすいところからDX化に着手するのがおすすめです。