日本では、人口の減少が大きな社会問題の1つです。地方では特に少子化と人口の流出が課題となっているため、多くの自治体では子育て世代の支援やU・I・Jターンの支援など、人口増加を目指して様々な取り組みが行われています。
そんな中、千葉県流山市は2021年の調査で人口増加数全国1位、人口増加率でも3位となる自治体で、人口は20万人を突破しました。今回はそんな全国でもトップクラスの人口獲得を実現した流山市の取り組みをご紹介します。
千葉県流山市の基本情報
人口 | 200,895人(令和3年4月1日現在) |
面積 | 35.32㎢ |
公式ホームページ | https://www.city.nagareyama.chiba.jp/index.html |
市役所住所 | 〒270-0192 流山市平和台1‐1‐1 |
主な観光地 | 一茶双樹記念館、 流山本町まちなかミュージアム、 オランダ遺産利根運河など |
本社を置く企業 | CAC、 三英など |
千葉県流山市は千葉県の北西部、埼玉県との県境に位置する市です。かつては江戸川や利根運河を利用した水運で栄えた土地で、2005年のつくばエクスプレス開通によってベッドタウンとしての性質が強くなり、市外から転入者が増えるきっかけになりました。その利便性と自然豊かな土地を武器に、「都心から一番近い森のまち」というイメージ戦略を立て、人口減少が進む中で15年で約3万5千人の人口増を実現しました。
流山市の取り組み
森のまちの実現
「流山グリーンチェーン戦略」はつくばエクスプレス沿線整備に関連する、個々の開発事業における「緑の価値」づくりの取組みを支援し、その取組みを連鎖させることで、まち全体に緑を配置し、環境価値を創造するという取り組みです。
温度上昇の抑制効果や通風の確保など7つの指標に対して、認定基準を建物ごとに設定し、クリアすることで「グリーンチェーン認定」を受けられます。認定を受けると、剪定枝の処分費を無料にする、生け垣を設置する際の補助金の限度額を引き上げ、認定物件を購入する際の住宅ローンの金利を割引するなどの補助を受けることができます。
共働きの子育て世帯支援
流山市が人口獲得に向けて力を入れていることの1つに子育て世代への支援があります。特に共働きの子育て世帯をターゲットとして、共働き世帯を支援する取り組みを展開しています。
その取り組みの一つが認可保育園の増加です。平成22年から平成31年までに保育園の数は17から77まで、児童数で1789名から6051名まで増加しました。また、駅前送迎保育ステーションを設置することで、保護者が児童を駅で送り迎えできるようなしくみを作りました。小学生に対しては学童クラブからの帰宅方法として路線バスを活用して、保護者と駅で待ち合わせるシステムを試行中です。他にも、共働き世帯の児童に対して、夏休みに学校を一部開放し「夏休み子ども教室」を開催するなどの取り組みがなされています。
上記のような支援によって、市外で働きながら子育てできるしくみを数多く用意しているほか、サテライトオフィスを積極的に誘致し、テレワークの推進などを進めて子どものそばで働きたい保護者への支援も行っています。
地域密着型のイベント
流山市では、「森のマルシェ」として四季に合わせたイベントが開催されています。「森のナイトカフェ」を始めとしたこれらのイベントは市のマーケティング課が主導し、地域の魅力を市の内外へと発信する目的で開催されています。
この他にも、子育てを支援するイベントや音楽イベントなど、大小さまざまなイベントを展開し、魅力的なまちづくりを市と住民が協力して行っています。
マーケティング課の設置
流山市は全国に先駆けて役所内にマーケティング課を設置した自治体です。マーケティング戦略による市政運営は、イベント開催以外にも広告などさまざまな働きを実現しました。ターゲットを絞り、地域の特色を全面的に押し出したこの戦略を進め、結果的に人口増を実現できました。
流山市公式サイト:流山ブランディングプラン
流山市総合計画
流山市総合計画は総合的かつ計画的な市政経営を進めるための市の最上位計画で、「基本構想」「基本計画」「実施計画」の3つで構成されています。現在の総合計画は令和2年4月から始まったもので、1回目に平成12年から平成31年まで施行されたものが終了したため、新たに策定されました。
流山市公式サイト:流山市総合計画
基本構想
基本構想では、これからの市のイメージとその実現に向けたまちづくりの基本理念・基本政策と、それを支える市政経営の基本方針が示されています。
流山市は目指すまちのイメージを「都心から一番近い森のまち」としています。このイメージの実現に向けたまちづくりの基本理念を「市民の知恵と力が活きるまちづくり」「市民が誇りと歓びを持てるまちづくり」「市民・都市・コミュニティが健康なまちづくり」の3つを掲げ、この理念に基づいて以下のような6つのまちづくりの基本政策を掲げています。
- 安心・安全で快適に暮らせるまち
- 生きがいを持って健康・長寿に暮らせるまち
- 良質な住環境のなかで暮らせるまち
- 賑わいと魅力のあるまち
- 誰もが自分らしく暮らせるまち
- 子どもをみんなで育むまち
また、これらの政策の推進に向けた市政経営について4つの基本方針を掲げて、環境変化・構造変化に強く、実行力のある市政の体制づくりに取り組んでいます。
基本計画
基本計画は6つの基本政策に対して、10年間の施策と展開の方向をそれぞれ整理して示したものです。
例えば、良質な住環境のなかで暮らせるまちの施策には、みどり・生物多様性があります。目的を「市民に潤いと安らぎを与えるみどりの保全・創出に取り組む」とし、展開の方向を「みどりの保全」「みどりの創出」「生物多様性の保全・回復」としています。
また、具体的な状態指標として現状の数値が設定され、さらに向上するための取り組みや課題を設定しています。例えば、人口1人当たりの都市公園面積や市民に対するアンケート結果の数値の向上という目標に対して、課題設定など細かく策定されています。
実施計画
実施計画は基本計画で示した施策をより具体化するために、3年間の展望を設定した上で毎年見直しを行っています。令和3年度版の実施計画は2019年12月に国が策定した第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」と、市民の健康水準を高めるための「健康都市プログラム」、自然災害に備えるための「国土強靭化地域計画」の3つを包含する形で策定されています。
まち・ひと・しごと創生総合戦略とは
「まち・ひと・しごと創生総合戦略」は政府主導の2014年から始まった地方創生に関する計画です。人口急減・超高齢化という日本が直面する課題に対して、各地域の特色を活かした「まち・ひと・しごと」の創生によって自律的・持続的な社会を実現することを目的としています。
「まち・ひと・しごと創生総合戦略」は5年おきに策定・公表されており、現在は2020年に改訂された第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」(2020改訂版)が最新です。これを基に、各自治体でも地方版「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定して地方創生の取り組みを進めています。
地方創生におけるRESERVA予約システムの活用
流山市ではさまざまなイベントやサテライトオフィスの設置などが行われています。イベントやオフィスの予約をかんたんにできるのが「予約システム」です。当社が提供する予約受付システムRESERVA(https://reserva.be/)は、20万の事業者・官公庁に導⼊されている国内最⼤級のSaaS型予約システムであり、人口20万人を超える規模の自治体のほか、人口5万人以下の小規模な市町村でも導入実績があり、最も選ばれている予約システムです。業務の効率化を進めて、よりよい地方創生の仕組みを作りましょう。
地方創生事業への導入事例(各項目概要ページにアクセスできます)
自治体で活用されている予約サイト紹介
まとめ
流山市はマーケティング課の設置や計画の策定をいち早く進め、結果として現在の人口増加を実現しました。その立地と環境を活かしてターゲットを絞り行われた町のブランディングは、人口を増やすまちづくりから「住み続ける」まちづくりへとシフトしていきます。「市政は経営」であるという理念を持つ市長のもと、この先も「住み続ける価値」の創造に取り組んでいくでしょう。流山市の今後の取り組みから目が離せません。
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