新型コロナウイルスの影響でテレワークが普及したことから、自宅以外の非日常の場所でテレワークをしながら観光を楽しむワーケーションが広まりつつあります。地方自治体にとっては、その地の魅力をアピールし、人口減少の歯止めや地域経済の活性化を行う絶好の機会であるといえます。そのためには、自治体のデジタル化や補助金の整備を行うなどして、移住しやすい街作りを行うことが重要です。
本記事では、琵琶湖という観光資源を生かして官民連携でのワーケーション推進や、AIを活用した自治体サービスの提供によって地方創生を行う、滋賀県大津市を紹介します。
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滋賀県大津市の基本情報
人口 | 344,040人 |
面積 | 464.51㎢ |
公式ホームページ | https://www.city.otsu.lg.jp/ |
市役所住所 | 〒520-8575 大津市御陵町3-1 |
主な観光地 | 琵琶湖、 比叡山延暦寺、 近江神宮など |
本社を置く企業 | 東レ・プレシジョン株式会社、日本電気硝子株式会社 など |
大津市は滋賀県の西南部で琵琶湖を取り囲むように位置しています。気候は日本でよくみられる温暖湿潤気候ですが、琵琶湖の影響で、1日や年間の気温差は比較的小さくなっています。自然が豊かなだけでなく比叡山延暦寺のような歴史的に重要な建築物も数多く存在し、NHKの大河ドラマ「麒麟が来る」の舞台としても有名です。
東京からは東海道新幹線と東海道本線を乗り継いで約2時間半で訪れることができます。京都駅まで約10分、大阪駅まで新快速で約40分と大都市からのアクセスが良く、自然と都会のバランスの良さが人気を集めています。
琵琶湖ワーケーション
大津市は、滋賀県や周辺都市、地元企業と連携して琵琶湖でのワーケーションを推進するプロジェクトを開始しました。
ワーケーションとは
ワーケーションとは「ワーク」+「バケーション」の造語で、観光地などで休暇を兼ねてリモートワークを行う働き方のことです。新型コロナウイルスの感染拡大でテレワークが普及したことから注目を集めています。
その第一弾として、2020年12月に6人のモニターを募集し、びわ湖大津プリンスホテルの38階にあるバー「トップオブオオツ」でのワーケーションを実施しました。美しい琵琶湖を眺めながらリフレッシュした気持ちでテレワークを行ってもらうことでその魅力を発信し、ユーザーに喜んでもらうとともに宿泊施設の平日の稼働率を上げる狙いがあります。
(参考記事:琵琶湖大津経済新聞)
民間と共同での観光客増加施策
また大津市は、民間と連携しレンタサイクルや湖上交通などの環境整備を行うことで観光客の増加に取り組んでいます。例えば、大津市は自転車専門店の株式会社きゅうべえと提携し、シェアサイクルサービス「kotobike」の実証実験を行いました。アプリを利用したシェアサイクルサービスで、市内観光の促進や市民の新たな移動手段としての役割が期待されています。
(参考記事:「kotobike」と連携したシェアサイクル実証事業|株式会社きゅうべえ)
AIを活用した住みやすい自治体づくり
AIを活用した自治体サービスの向上は全国的に取り入れられ、AIチャットボットやペーパーレス化などが多くの自治体で導入されるようになりました。しかしその中でも大津市は独特の取り組みを先駆けて行っています。本記事ではその中から3つほど紹介します。
全国初のいじめ予想AIの開発
大津市は、日立システムズと共同し、全国で初めていじめや虐待の深刻度をAIが判定し、最悪の事態を未然に回避するシステムを開発、導入しました。以前、月に数百件のいじめ報告書を、教育委員会の職員が1つ1つ確認していたため対応が遅れてしまった反省から、システム化に乗り出しました。
過去のいじめ事例約5千件のデータを分析・学習し、利用者が時間や場所、相手との関係など約50項目の質問事項を入力すると、いじめが深刻化するリスクを数値で表示される仕組みになっています。これによって、いじめを即座に把握し、早期対応が可能になりました。
(参考資料:AIを用いたいじめ事案の予想分析について(PDF)|大津市)
AIイベント情報集約サービス
大津市は市の公式ホームページや広報誌を用いてイベント告知や情報発信を行っていましたが、市民からは「イベント情報を網羅的に掲載したものがなく、行きたいイベントを探しにくい」という声が多くあがりました。そこで市は、インターネットによる情報提供事業を手掛ける、株式会社インフォモーションと連携し、情報集約AIを活用した大津市イベント情報集約サイトを設立しました。
大津市で開催されるさまざまなイベント情報を、インターネット上のあらゆるページからAIが収集し、それを大津市イベント情報集約サイトという1つのページ上で発信しています。キーワードや日程、エリアなどを絞った検索や、人気イベントランキングなどを調べることができ、市民サービスの向上だけでなく、観光客増加も期待できます。
(参考記事:【イノベーション戦略室】「大津市イベント情報集約サイト」をぜひご利用ください|大津市公式ホームページ)
富士通との連携協定
大津市は、データやAIの活用、RPAの導入を推進することを目的とし、2018年11月に富士通との連携協定を締結しました。その取り組みの1つとして、保育所入所選考におけるAI活用の実証実験を行いました。
これまで、保育所の入所選考業務は限られた入所枠のなかで、「兄弟を一緒にしてほしい」や「兄弟別々でもいいがどちらかしか入れないのであれば辞退する」といった個別の要望を1つ1つ考慮しながら手作業で選考を行っていたため、膨大な時間を要していました。
今回の実証実験では、これまで1,000時間ほどかけていた数千人規模の児童の入所選考をわずか数秒で完了することが出来ました。これにより、待機児童の減少や各家庭の希望に沿った入所選考の実現が期待できます。
(参考記事:大津市と富士通、ICT活用およびデータ分析分野における連携協定を締結|富士通公式ホームページ)
大津市の補助金や助成金制度
移住者向け補助金・助成金
大津市定住促進リフォーム補助金
大津市は、市内への転入を希望する世帯を対象に、その居住住宅のリフォーム工事を行うのに要する経費の一部を補助しています。これによって、市内への定住を促進するとともに、市内産業の活性化と空き家等の有効活用を図っています。
補助額 | 工事費用の10%に相当する額 |
限度額 | 20万円 |
詳しい条件や申請方法は、大津市公式ホームページの大津市定住促進リフォーム補助金のご案内をご覧ください。
企業向け補助金・助成金
工場等建設助成金
大津市では、市内に投下固定資産額が5,000万円以上の工場を新築、増改築をする事業者を対象に助成金を給付する制度があります。
助成額 | 新築または増改築した工場等に賦課された固定資産税額及び都市計画税額に相当する額 ・1~2年目 全額 ・3~5年目 50% |
限度額 | 限度なし |
助成期間 | 5年間 |
詳しい条件や申請方法は、大津市公式ホームページの大津市企業立地促進助成制度をご覧ください。
インキュベーション施設発立地促進助成金 (工場・研究所型)
大津市は、工場又は研究開発機能を主とするインキュベーション施設から移転して本市の区域内に事業所を賃借する事業者に対して、助成金の給付を行っています。
助成額 | 事業所賃借床面積×700円 |
限度額 | 事業所賃借料の年額2分の1と100万円を比較していずれか少ない額 |
助成期間 | 3年間 |
詳しい条件や申請方法は、大津市公式ホームページの大津市企業立地促進助成制度をご覧ください。
インキュベーション施設発立地促進助成金 (オフィス型)
大津市は、工場や研究所以外のインキュベーション施設から市内に移転する事業者に対しても以下の内容で助成を行っています。
助成額 | 事業所賃借床面積×700円 |
限度額 | 事業所賃借料の年額2分の1と30万円を比較していずれか少ない額 |
助成期間 | 3年間 |
詳しい条件や申請方法は、大津市公式ホームページの大津市企業立地促進助成制度をご覧ください。
RESERVAでワーケーション・DXを推進
滋賀県大津市では、琵琶湖のような観光資源を生かしたワーケーションを行っていますが、これらの取り組みに必要不可欠なシステムが「予約システム」です。予約システムを導入することにより予約受付業務や会計業務を省人化、デジタル化できます。当社が提供する予約受付システムRESERVA(https://reserva.be/)は、20万を超える事業者・官公庁に導⼊されている国内最⼤級のSaaS型予約システムであり、人口20万人を超える規模の自治体のほか、人口5万人以下の小規模な市町村でも導入実績があり、最も選ばれている予約システムです。さらに、Zoomとの連携機能を搭載するなど、業務のデジタルトランスフォーメーションを図れるため、 スマートシティ化をさらに推進することができます。
予約システムRESERVAの概要はこちら
地方創生事業への導入事例(各項目概要ページにアクセスできます)
自治体で活用されている予約サイト紹介
まとめ
滋賀県大津市では、琵琶湖という観光資源を生かしたワーケーション施策を積極的に行い、市の魅力をより多くの人に発信し、実際に体験してもらう機会を増加させています。また、自治体サービスに AIを活用することで、より住みやすい自治体づくりや、業務の省人化による自治体サービスの質の向上に取り組んでいます。
特に、AIを活用したイベント情報集約サイトはワーケーションのような観光施策との相性が良く、訪問者のさらなる増加が期待できます。また、イベントの開催や観光客の受け入れる際に使用されるシステムとして「予約システム」があります。予約受付におけるシステムの自動化や省人化を達成するためにも、予約システム導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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