日本において以前から問題視されている大都市への人口流出や地方都市の過疎化・高齢化に対し、全国の地方自治体はさまざまな策を講じてきました。そんな中、近年新たなアイデアとして注目されているのがDX化による地方創生です。デジタル技術によって社会や生活の形をよい方向に変えていくことで、地域をより魅力的にするという自治体DXは、長年日本が抱えている社会問題の解決の糸口かもしれません。
今回は、持続可能な都市としての発展を目指してDX化を積極的に進めている、長野県上田市の取り組みを紹介します。
長野県上田市の基本情報
人口 | 15万1158人 |
面積 | 552.04㎢ |
公式サイト | 上田市 |
市役所住所 | 〒386-8601 長野県上田市大手一丁目11番16号 |
観光地 | 上田城跡公園、菅平高原スキー場、別所温泉など |
ご当地グルメ・お土産 | 美味だれ焼き鳥、信州そば、あんかけ焼きそば |
上田市は、長野県の東信地方に位置しており、長野県では3番目の規模の都市です。2016年のNHK大河ドラマ「真田丸」で描かれた真田一族のゆかりの地として知られていたり、冬には菅平高原スキー場が賑わったりと、1年を通して楽しめる四季折々の自然や歴史的スポットが魅力の観光地です。
同時に、移住者や子育てへの支援が手厚く待機児童ゼロであることや、日照時間の長さ、東京から新幹線で90分というアクセスのよさなども特徴で、生活に必要なものが過不足なく揃う、暮らしやすいまちです。
また上田市は、2022年に提案した『「ひと笑顔あふれ 輝く未来につながる健幸都市」上田の創造』でSDGs未来都市に選定されたり、同年にDX推進課が新設されたりと、自治体DX化に積極的に取り組んでいる都市でもあります。
上田市スマートシティ化推進計画
上田市は、「市民、地域、行政がデジタル化でより密接につながり、共に創る未来都市UEDA」をテーマにし、2021年(令和3年)度から5年間、スマートシティ化推進計画を実行しています。計画の中で実際に行われている取り組みの例を紹介します。
スマート農業
上田市は、農業組合などと合同で、新規就農希望者を対象に地域農業の発展に必要な持続可能な農業デジタル人材を育成する取り組みを行っています。具体的には、新規就農者に対するスマートグラスを使った遠隔営農相談や、AIを利用した農産物選果スキルの習得サポートです。
遠隔営農相談では、農業指導機関が新規就農者の農場の様子を映像で、リアルタイムで確認し、生育状況などに基づきアドバイスを行います。AIを使った選果スキルの習得サポートでは、選果識別システムを導入し、AIが選果作業をサポートすることで熟練就農者の感覚を効率的に身につけられます。
どちらの取り組みも地域農産物の品質維持や農業従事者の育成につながります。
TicketQRの導入
スマートシティ化推進のために行われているほかの事業として、公共交通機関の運賃キャッシュレス化があげられます。
県内に本社を置く企業の協力のもと開発された「TicketQR」は、専用アプリのQRコードをかざすだけで公共交通機関の決済が可能になっています。さらに、GPSによりバスや電車の運行状況をリアルタイムで確認することもできます。運賃支払いのキャッシュレス化により、利用者の利便性の向上や交通事業者の業務効率化が進んでいます。
また、このTicketQRは、地元の商店街などと協力して横展開していくことも視野に入れており、地域の商業活性化への貢献も期待されています。
デジタルコミュニティ通貨「もん」
さらに、上田市では令和3年からデジタルコミュニティ通貨の実証実験が開始されました。これは、地域の「人と人」や「人とお店」のつながりを生み出す地域通貨「まちのコイン」を用いて地域経済の発展や新しい生活様式におけるコミュニティの構築、スマートシティ化の推進を目指す実証実験です。
上田市の「まちのコイン」は真田家の家紋である六文銭にちなみ「もん」と呼ばれ、専用のアプリをインストールして上田市内の登録されている店や観光スポットを訪れたり、ボランティア活動をすることでコインがたまります。このコミュニティ通貨は、地域住民同士の新たなつながりを生むだけでなく、地域環境や経済にも良い影響を与えると考えられています。
上田市まち・ひと・しごと創生総合戦略
DX化以外にも、上田市は地方創生事業として「上田市まち・ひと・しごと創生総合戦略」を展開しています。
これは、「就業機会の拡大と多様性を創出する」、「人口の自然減に歯止めをかける」、「人口の社会増を伸ばす」、「安心して暮らし続けられる地域をつくる」という4つの目標を基本方針としており、達成のために具体的な4種類の戦略にわけられています。
上田で働きたい戦略
「上田で働きたい戦略」では、上田市における就業機会の拡大と多様性の創出という目標を達成するために、地域雇用の中心であるものづくり産業の振興や農林業の6次産業化を進めています。具体的には、果物加工場やワイナリーの設立の支援や、後継者不足を解決するための人材育成が行われています。
また、新たな地域活性化の担い手である、若者や女性の起業や多様な働き方への支援も行っており、コワーキングスペースの整備や空き店舗への出店支援に取り組んでいます。
結婚・子育てしたい戦略
人口の自然減に対応すべく実施されている「結婚・子育てしたい戦略」では、結婚、出産、子育てすべてにおいて手厚い支援をおこない、首都圏に後れを取らない特色ある教育や子供が豊かに育つ街づくりにも力を入れています。
結婚支援事業や交流イベントを行っている公共団体と市が連携して新たな企画を提案したり、中学3年生までの子供の医療費サポートや高校生を対象とした給付型奨学金での支援が行われています。さらに、子どもたちの自由な感性や創造力を育むための芸術家とのふれあい事業やICT環境の整備、コミュニティスクールの運営にも取り組んでいます。
訪れたい・住みたいうえだ戦略
上田での暮らし・観光の魅力を積極的に発信することで交流人口を増やし、定住につなげていくのが「訪れたい・住みたいうえだ戦略」です。
国内外からの観光客と観光消費額の拡大を図るために、スポーツ合宿の聖地である菅平高原を中心としたスポーツツーリズムの推進や、アニメや映画の聖地としてのフィルムツーリズムの展開が積極的に行われています。また、ホームページやパンフレットの多言語化、郷土料理や特産品を用いた新たな名物の開発にも力を入れています。
さらに、移住希望者への支援として移住体験者の連絡会を設置し、先輩の移住者や地元住民・団体による相談・サポート体制を構築したり、市内見学・体験ツアーやお試し居住事業も実施しています。
ひと・地域の輝き戦略
「ひと・地域の輝き戦略」は、少子高齢化が進む社会において市民の健康と暮らしの安全を守り、すべての年代の人にとって住みよい街づくりを続けていくための戦略です。
安心の医療サービスを提供するために医療従事者の確保と救急医療体制の整備を行うと同時に、健康な身体を維持するための運動プログラムやウォーキング事業の推進にも取り組んでいます。また、地域全体に公共交通機関を整備し、運賃の負担が少ないバスを運行することで通勤や通学、日常生活における利便性のさらなる向上を目指しています。
上田市の補助金・助成金制度
空き店舗新規出店支援事業補助金
上田市では、商業地域において商店街振興組合などの誘致を受け、空き店舗に新たな出店を計画している事業者に補助金を給付しています。
補助金の交付条件
対象者 | 商業地域において商店街振興組合等が行う誘致活動に応じて出店する事業者 |
対象経費 | 空き店舗をテナント用に供するための改修及び改築に要する経費並びに附帯施設の設置に要する経費 |
補助対象外 | 1.備品類(カーテン、ショーケース、机、椅子、食器棚、下駄箱、金庫、傘立て、つい立て、冷暖房設備、テレビ、ビデオ) 2.設計費 |
補助限度額 | 150万円 |
補助率 | 補助対象経費の3分の1以内 |
その他 | 申請時及び補助実施後3か年間、商工会議所の経営診断(指導)あり。 |
参考サイト:上田市
ブランディング支援事業補助金
上田市のオリジナルブランドを生み出し地域産業を発展させるため、上田のブランディングを図る中小企業などの取り組みに補助金を給付しています。
補助金の交付条件
対象者 | 市内に住所を有する個人、法人、団体のうち、次のいずれかに該当する方となります。 ・中小企業基本法第2条第1項に規定する中小企業者 ・農業の経営を行っている農事組合法人 ・NPO法人 ・上記3項目のいずれかの個人又は法人を含む任意の団体 ・同業種の組合 ・規約等で代表者の定めのある任意団体 |
対象事業 | 信州上田ブランドのブランディングが図られる取組で、次のいずれかに該当する事業が補助の対象となります。 地域資源型 6次産業・農商工連携型 コト消費サービス開発・改良型 異業種連携型 |
対象経費 | 開発改良費 販路開拓費 知的財産権等取得費 |
補助率 | 補助対象経費の3分の2以内 |
参考サイト:上田市
RESERVAでDXの推進
長野県上田市も積極的に実践している自治体のDX化において、簡単に始められる取り組みのひとつが予約システムの導入です。予約システムを導入することで、行政サービスにおける予約受付などの業務や、市民の情報管理をスムーズかつ安全に行えるようになります。
当社の提供している予約システムRESERVA(https://reserva.be/)は、26万を超える事業者・官公庁に導入されている国内最大級のSaaS型予約システムです。大規模な自治体から小規模の市町村でも導入実績があり、操作性の良さや洗練されたデザインが高い評価を受けているため、スマートシティ化の推進に効果的です。
【地方での新規事業立ち上げへの導入事例】
・RESERVA活用事例|フォレストパークおいらの森【宿泊施設・キャンプ場】
・RESERVA活用事例|サウナンヤルケン【施設・キャンプ場】
【自治体で活用されている予約サイト紹介】
・ワーケーションの予約システム
・コワーキングスペースの予約システム
・宿泊施設の予約
・観光ガイド・ツアーの予約
・公共施設の予約システム
まとめ
今回は、長野県上田市での地方創生に向けた取り組みを紹介しました。SDGs未来都市にも選定されている上田市では、DX化を中心とした多岐にわたる戦略でより魅力的な街づくりを実践しています。
各自治体でのDX化は、今後さらに活発になることが予想されています。より便利で住み良い街にするための第1歩として、予約システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。