新型コロナウイルスの流行により、「時間・場所」を問わない柔軟な働き方改革が進みました。人口過密による感染リスクの拡大やテレワークの浸透の影響により、近年では、地方への関心が高まっています。2020年5月から6月にかけて内閣府が実施した「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」によると、年代別では20代、地域別では東京都23区在住の人たちの間で、地方移住を検討する人は増加傾向にあります。田舎での豊かな自然環境、仕事と育児を両立できる整ったサポートサービスに魅力を感じる人は増えており、地方での転職活動や起業活動も盛んになっています。
地方移住希望者の増加にともない、現在自治体は、民間企業や行政と一体となり、アフターコロナを見据えた様々な地方創生に取り組んでいます。今回は国内の事例を紹介し、今後地方創生ビジネスにおいてどのような仕組みづくりが必要なのか、について解説していきます。
グランピング事業
高滝湖グランピングリゾート
2021年4月20日にオープンした千葉県市原市養老にある「高滝湖グランピングリゾート」は、2013年に廃校となった高滝小学校をリノベーションした宿泊施設です。市原市では少子化が進み、2013年には高滝小学校を含む、4つの小学校が閉校となったことで、利活用事業者を募集しました。
校庭の場所には芝生が敷かれ、3種類のテントが用意されています。ドーム型テントの中にはエアコンや冷蔵庫などが完備され、夜にはテント内から星空を眺めることができます。高滝小学校の家庭科室はフロントへ、職員室は貸切風呂へと生まれ変わり、懐かしさを感じる学校の面影を感じながら、手ぶらでBBQやキャンプを楽しむことができます。
コロナ禍での3密回避として、ホテルや民泊などの宿泊施設ではさまざまな感染対策が強化されていますが、グランピングは個々のテントで屋外での活動、公共交通機関を使わずマイカーでの移動がメインとなり、感染リスクを抑えることができると考えられ、地方各所から注目されています。
リゾートワーケーション
ナスコンバレー構想
ワーケーションとは「ワーク(仕事)」と「バケーション(休暇)」を組み合わせた造語で、観光地やリゾート地でリモートワークを活用し、仕事をしながら休みをとる過ごし方を指します。「ナスコンバレー構想」では大自然に囲まれた環境と都心から交通の便が良い立地を活かし、新しい働き方に関心を持つ企業に対して、TOWAピュアコテージ in NASU HIGHLAND RESORTでのワーケーション機会を提供しています。近くには、那須ハイランドパークや那須の森の空中アスレチックNOZARUといったアクティビティやカフェも用意されており、心身のリフレッシュにも適しています。
ワーケーションの導入は、企業・従業員・受け入れ自治体・宿泊施設にとってそれぞれメリットがあります。
ワーケーション導入のメリット
企業:チームビルディング、リモートワークの促進、採用活動の強化、健康経営の促進、従業員満足度の向上
従業員:リフレッシュ効果、オン/オフ時間を見直す機会の創出
自治体:交流人口の増大、移住への導線づくり、観光事業者の活性化、住民との交流促進
宿泊施設:平日需要の創出による地元観光事業、地域間の事業連携強化
「ナスコンバレー構想」では新たな人と人の交流によって、那須から画期的なビジネス機会が創出されることを目指しています。すでにIT企業を中心に、チームビルディング研修や新人研修の場所として利用されており、今後さらなる自治体との連携強化で、那須から新たな働き方を広まっていくことが期待されます。
町おこしイベント
戦国城跡巡り事業-可児市の乱-
岐阜県可児市では2016年から、NPO法人ゼロワンと株式会社IKUSAと協働して、「戦国城跡巡り事業-可児市の乱-」を実施しています。自治体の一方的な地方創生ではなく、住民と一体となった参加型の町おこしイベントを試み、数多く残る戦国時代の城跡遺産を活かした「チャンバラ合戦-戦 IKUSA-」には、これまで約1万人が参加してきました。
「チャンバラ合戦-戦 IKUSA-」は、NPO法人ゼロワンが開発した老若男女問わず遊べる懐かしくて新しいアクティビティです。安全性を考慮したスポンジ刀を使い、大人も童心に帰って楽しめます。子どもには可児市の歴史に興味を持つきっかけを与え、未来の地域活性化人材の獲得に繋がることが期待されます。近年では県外からの参加も増えており、「チャンバラ合戦-戦 IKUSA-」の輪は全国でも広がっています。
移住支援金・起業支援金
政府は都市部での人口集中を見直し、地方創生を促進するため、2019年から移住支援金・起業支援金の交付により、地方で新たなビジネスを始める人を経済的にサポートする仕組みづくりが始まっています。様々な条件付きで地方へ移住して社会的事業を起業した場合、最大で300万円の支援金をもらうことができます。
現在、移住支援金・起業支援金の対象者となるのは以下の条件を満たす人です。
移住支援金の対象
①移住元:東京23区の在住者または東京圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)から東京23区へ通勤している
②移住先:東京圏以外の道府県または東京圏の条件不利地域への移住者(移住支援事業実施都道府県・市町村に限る)
③就業等:地域の中小企業等への就業やテレワークにより移住前の業務を継続、地域で社会的起業などを実施
※移住先の市町村ごとの独自要件あり
起業支援金の対象
①起業先・事業内容:東京圏以外の道府県又は東京圏内の条件不利地域において社会的事業の起業を行うこと
②起業時期:公募開始日以降、補助事業期間完了日までに、個人開業届又は法人の設立を行うこと
③居住地:起業地の都道府県内に居住していること、または居住する予定であること
※移住先の市町村ごとの独自要件あり
国だけではなく、各自治体でも移住・起業を促進しサポートする支援金制度は確立しており、将来地方での少子高齢化と都市部への人口流出を防ぐ有効な仕組みだと考えられます。
新規事業におけるRESERVA予約システムの活用
今回紹介したグランピング、ワーケーションサービス、町おこしイベント事業といった近年注目されている新規事業の立ち上げにおいて、必要不可欠となるのが予約システムです。当社が提供する予約受付システムRESERVA(https://reserva.be/)は、17万の事業者・官公庁に導⼊されている国内最⼤級のSaaS型予約システムであり、人口20万人を超える規模の自治体のほか、人口5万人以下の小規模な市町村でも導入実績があります。
地方創生事業への導入事例(各項目概要ページにアクセスできます)
まとめ
新型コロナウイルスの収束が見えない状況下で、観光業を基幹産業とする自治体を中心として各地方都市では大きな経済的な打撃を受けました。今後はアフターコロナを見据えて、自治体単独で取り組むのではなく、民間企業や住民を巻き込み、さらには新たなテクノロジーも活用して、独自のビジネスを地域内で生み出すことが大切です。地方創生の先行モデル都市を参考にし、時代に沿った取り組みを始めてみてはいかがでしょうか。