当社が提供するRESERVA予約システムは、全国の自治体担当者や事業所の負担軽減を目指し、新型コロナウイルス感染症に関連した様々な事業に対応しています。2022年5月現在、320の市町村・企業・医療機関などで稼働中です。
厚生労働省によると、2022年5月28日時点で国内(国立感染症研究所、検疫所、地方衛生研究所・保健所など)におけるPCR検査の実施人数は、日本全国で5,009万1,146人に上りました。都道府県別・PCR検査実施人数の累計は、大阪府が704万8,087人と最多であり、東京都は682万8,984人、埼玉県が282万3,782人と続いています。
日本全国でPCR検査の積極的な受検が進められるなか、内閣官房新型コロナウイルス等感染症対策推進室は2021年12月10日、経済社会活動を行う際の検査を無料とする「PCR等検査無料化事業」を公表しました。都道府県単位での実施であることから、各都道府県のそれぞれの対応に差が出ています。そこで本記事では、PCR等検査無料化事業の概要と、コロナ感染者の多い北海道、東京都、愛知県、大阪府、福岡県の5都道府県を取り上げ、実施状況について調査しました。
PCR等検査無料化事業とは
事業概要
内閣官房新型コロナウイルス等感染症対策推進室は、コロナ克服・新時代開拓のための経済対策(2021年11月19日閣議決定)において、経済社会活動を行う際の検査を予約不要・無料とし、感染拡大傾向時には都道府県の判断により検査を無料とできるよう、支援を行うことを決定しました。
PCR等検査無料化事業は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、検査を実施する事業者に対し補助を行うことで検査費用を無料化する取り組みです。日常生活や社会活動における感染リスクを引き下げ、感染対策と感染者の早期発見を目的としています。社会経済活動を行う際や感染の不安がある無症状者におけるPCR・抗原定性等検査が無料となります。
事業の種類
PCR等検査無料化事業には、旅行やイベントに伴なって行う「ワクチン検査パッケージ」と、感染に不安を感じる無症状者を対象とする「一般検査事業」の2つがあります。
ワクチン検査パッケージ制度
ワクチン検査パッケージ制度は、感染対策と日常生活の回復の両立に向けて、将来の緊急事態宣言やまん延防止等重点措置等の下においても、感染リスクを低減させることにより、飲食や人の移動などの行動制限を緩和させることを目指した制度です。
【対象者】
・飲食、イベント、旅行、帰省などの経済社会活動を行うに当たり、検査が必要な人
・原則、3回目ワクチン接種が未了の人*¹
・無症状者であり、濃厚接触者の可能性がない人
【期間】
2022年6月30日まで
【検査方法】
抗原定性検査*²
*¹ 3回目接種完了者でも、対象者全員検査を求められている人、高齢者や基礎疾患を有する人との接触を伴う活動を行う人は対象
*² 10歳未満の子ども、高齢者や基礎疾患を有する人との接触を伴う活動を行う人はPCR検査も可能
一般検査事業
一般検査事業は、感染拡大の傾向がみられる場合に新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、 感染不安を感じる無症状者を対象にPCR等検査を無料化する制度です。
【対象者】
・感染している可能性に不安を抱える人
・無症状者であり、濃厚接触者の可能性がない人
【期間】
都道府県によって異なる
【検査方法】
PCR検査、抗原定性検査
PCR等検査無料化事業におけるワクチン検査パッケージと一般検査事業の無料対象期間は、随時変更になる可能性があります。詳しくは、お住いの都道府県のホームページをご確認ください。
検査の種類
PCR等検査無料化事業で実施される検査方法には、「PCR検査」と、「抗原定性検査」の2つがあります。検査事業所によって実施している検査方法が異なるため、あらかじめ確認する必要があります。
PCR検査 | 抗原定性検査 | |
検査方法 | 唾液を自己採取 | 鼻腔ぬぐい液を自己採取 |
結果通知までの時間 | 数時間+検査機関への搬送時間 | 約30分 |
検査結果の有効期限 | 採取日+3日 | 検査日+1日 |
結果通知方式 | メールやWebシステムなどで 検査結果通知書を交付 | その場もしくはメールやWebシステムなどで 検査結果通知書を交付 |
実施事業者
PCR等検査無料化事業の無料検査を行うことができる事業者(実施事業者)の種類は次の通りです。
- 医療機関
- 薬局、ドラッグストア
- 衛生検査所など
- ワクチン検査パッケージ制度登録事業者
(ワクチン・検査パッケージ制度要綱に定める登録を受けた事業者のこと)
5都道府県における実施状況
PCR等検査無料化事業では、「感染拡大の傾向が見られる場合には、都道府県知事の判断により、自己の意思に基づく未接種者、ワクチン接種者を含め、幅広く感染不安などの理由による検査を無料化」(新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金「検査促進枠」の創設についてより引用)と定めていることから、都道府県ごとに対応が異なっています。47都道府県のうち、特にコロナ感染者の多い北海道、東京都、愛知県、大阪府、福岡県を取り上げ、その実施状況について考察します。
北海道
検査事業所数 | 人口 | |
札幌市 | 236 | 197万3,495人 |
旭川市 | 50 | 32万6,081人 |
函館市 | 40 | 24万6,395人 |
北海道全体 | 714 | 538万1,733人 |
ほとんどの県が一般検査事業の実施期間を2022年5月31日までと定めているなかで、北海道では2022年6月30日までと定めています。北海道全体の検査事業所数は714カ所で、もっとも多いのは札幌市の236カ所です。次に多い旭川市は50カ所であることから、札幌市の検査事業所数の多さが伺えます。
北海道内の81店舗で検査を実施している「アイン薬局」では、ドライブスルー方式を採用し、駐車場での検査を行っています。北海道のドラッグストアは土地の広さを生かした路面店が多いことから、検査事業者側も安心なドライブスルー方式での実施が可能です。
北海道のPCR等検査無料化事業サイトはこちら
東京都
検査事業所数 | 人口 | |
港区 | 61 | 25万9,376人 |
新宿区 | 53 | 34万5,683人 |
世田谷区 | 47 | 93万8,552人 |
渋谷区 | 42 | 24万1,891人 |
23区 | 713 | 968万548人 |
東京都下 | 220 | 431万4,921人 |
東京都全体 | 933 | 1,399万5,469人 |
東京都では一般検査事業の実施期間を当面の間と定めています。東京都全体の検査事業所数は933カ所で、23区は713カ所、東京都下は220カ所あります。23区内でもっとも多いのは港区の61カ所、続いて新宿区の53カ所、世田谷区の47カ所、渋谷区の42カ所という結果でした。東京都でもっとも人口が多い世田谷区に比べて、港区は人口自体が少ないものの検査事業所数では上回っていることが確認できます。東京都23区においては、検査事業者数は人口の多さに比例せず、オフィスビルや商業施設の立地による人通りの多さに影響していることがわかりました。
一方、隣接する千葉県では、一般検査事業の期間を「当面の間」としていましたが、新型コロナウイルスの感染状況が落ち着いていることを受けて、5月末で中止することを発表しました。(2022年5月25日時点)
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愛知県
検査事業所数 | 人口 | |
名古屋市 | 198 | 231万7,985人 |
岡崎市 | 30 | 38万3,243人 |
春日井市 | 27 | 30万6,565人 |
愛知県全体 | 530 | 748万9,040人 |
愛知県では一般検査事業の実施期間を感染拡大の傾向が見られる場合に、愛知県知事が必要と認める期間と定めています。愛知県全体の検査事業所数は530カ所で、もっとも多いのは名古屋市の198カ所、続いて岡崎市の30カ所、春日井市の27カ所という結果でした。北海道札幌市と同様、県庁所在地であり人口が最も多い名古屋市が、多くの検査事業所を擁しています。
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大阪府
検査事業所数 | 人口 | |
大阪市 | 231 | 274万4,847人 |
堺市 | 57 | 81万7,441人 |
茨木市 | 40 | 28万8,172人 |
大阪府全体 | 601 | 877万8,035人 |
大阪府では一般検査事業の実施期間を当面の間と定めています。大阪府全体の検査事業所数は601カ所で、もっとも多いのは大阪市の231カ所、続いて堺市の57カ所、茨木市の40カ所という結果でした。大阪府の人口は、大阪市、堺市の次に東大阪市が多く、茨木市は8番目であるのに対して検査事業所数が3番目に多いのは、交通条件がよく、企業や大学などが多く立地していることが要因だと考えられます。
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福岡県
検査事業所数 | 人口 | |
福岡市 | 199 | 161万2,488人 |
北九州市 | 99 | 93万8,603人 |
久留米市 | 39 | 30万3,317人 |
福岡県全体 | 532 | 513万4,227人 |
福岡県では一般検査事業の実施期間を感染拡大傾向が見られる場合に、知事が必要と認める期間とし、2022年5月時点では福岡コロナ警報解除までと定めています。福岡県全体の検査事業所数は532カ所で、もっとも多いのは福岡市の199カ所、続いて北九州市の99カ所、久留米市の39カ所という結果でした。福岡県の市町村別の人口と検査事業所数は比例していることがわかりました。
福岡県のPCR等検査無料化事業サイトはこちら
考察
ここまでの調査をもとに、PCR等検査無料化事業における各都道府県での共通点と相違点について考察します。
【共通点】
- 検査事業所は県庁所在地に多く、繁華街の有無や、企業、大学の立地に影響している
- 検査事業者のほとんどは薬局、ドラッグストアである
【相違点】
- 一般検査事業の実施期間は都道府県ごとに異なる(人口が多い都市は期間を設けておらず、少ないところは概ね5月31日まで)
- 5都道府県の検査事業所は、人口の少ない都市と比較すると、PCR検査を専門とする衛生検査所が多い
今回調査した、北海道、東京都、愛知県、大阪府、福岡県の5都道府県は比較的、衛生事業所が多いことがわかりました。人口の多さに伴い、実施人数も多いことから、医療機関やドラッグストアだけでなくPCR検査専門の事業所が必要不可欠です。
まとめ
本記事では、経済社会活動を行う際の検査を無料とする「PCR等検査無料化事業」について調査しました。2022年3月には、まん延防止等重点措置の発令が解除され、徐々にイベントや県をまたぐ移動などの社会活動が再開されつつあります。さらに今後は、出国や入国に対する制限緩和が期待され、国をまたぐ移動も活発になると予想されるため、感染対策により一層力を入れる必要があります。
本記事で調査した5都道府県のうち、東京都、愛知県、大阪府、福岡県については、一般検査事業の実施期間を「当面の間」とし、47都道府県の中でも、柔軟な対応で臨機応変であることがわかりました。PCR等検査無料化事業終了後、感染対策に対する新たな取り組みが期待されます。
2022年5月現在、PCR等検査無料化事業終了後のPCR検査は自費検査へと移行予定です。PCR等検査無料化事業に関しては、日々情報が更新されているため、詳細は各自治体ホームページなどをご覧ください。
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