当社が運営する予約システムRESERVAでは、2020年4月以降、予約システムのご利用状況を分析し、各業界の動向を分析しています。今回は地方自治体の動向について当社の稼働実績をもとにレポートします。
地方自治体の皆さまにとって、有益な情報提供となれば幸いです。はじめに今後の地方自治体の将来を左右する重要ワードの整理をします。
日本に迫りくる「2030年問題」
まずは、2030年代に日本社会はどのように変化しているのかを見ていきます。2030年、日本は様々な問題を抱えるとされ、超高齢化社会への突入、労働力の減少、社会保障関連費のひっ迫、これら総称して「2030年問題」といわれています。ここでは、地方自治体と関連付く2つの問題についてご紹介します。
止まらない労働力人口の減少
日本の総人口は2008年から減少に転じ、当時の1億2808万人から2023年時は1億2424万人と、約15年で384万人も減りました。
今後も人口の減少は続くとみられており、2025年には1億2,066万人、2030年には1億1662万人、2048年には1億人を割る見込みです。
加えて、2025年には第一次ベビーブームの1947年~1949年に生まれた団塊の世代の約800万人が、75歳以上の後期高齢者になります。65歳以上の数も合わせると高齢者は3,657万人になり、人口の約30%を占めるようになります。
2030年になるとその数はさらに増加し、高齢者数は人口の約32%にあたる3,715万人と、3人に1人が高齢者という時代に突入します。
パーソル総合研究所の推計によると、このまま少子高齢化が続けば、2030年には644万人の人手不足になります。官民が連携して女性の就職支援、シニアの人材活用、外国人就労に向けた改正などに取り組んでいますが、それでも半数ほどの解消にしかならないといわれています。
都市部の人口集中と地方の過疎化
第二次世界大戦以降、東京圏、名古屋圏、大阪圏の三大都市圏、とりわけ東京圏の人口は増加を続けています。大学の進学や就職がしやすい、生活の利便性がいいといった理由から、他県から転入するケースが多くあります。
総務省発表の資料を見ると、三大都市圏の人口が総人口に占める割合は50%を超えています。東京圏のみに絞っても30%近くと、人口の偏りは顕著にあらわれています。
一方で三大都市圏以外の地域は50%を下回り、2030年以降も過疎化は進む見込みです。北海道、東北、中国・四国地方の山間部などを中心に、人口の減少率は高い傾向にあります。
このまま地方の人口が減少すると、公共交通機関は発展せず、ライフラインの管理は困難になっていきます。さらに農業や漁業の働き手を失えば日本の食料自給率は低下し、将来的にはすべて海外に頼らざるを得ない状況を生み出してしまいます。
デジタル変革(DX)の実装が加速
少子高齢化、労働人口の減少が確実視されている2030年に向けて、各自治体は労働力の確保、業務のスリム化など、それに対応した改革が必要になってきます。現在注目を浴びている改革の1つに、デジタル変革(DX)が挙げられます。ここでは、今後10年で各自治体が取り組むべき3つのDX化についてご紹介します。
ICT/IoT化
ICTとは「Information and Communication Technology」の略で、情報通信技術を意味します。IoTとは「Internet of Things」の略で、モノとインターネットが繋がる技術を指します。
2018年に総務省情報流通行政局が各地方自治体、計1618団体に対して行った調査発表によると、ICT/IoTの利用状況は、多いものでオープンデータ利活用が398団体、プログラミング教育で282団体でした。
しかし、これまでに ICT/IoT を利用した事例があると回答したのは1618団体中1035団体で、残りは導入実績がない状態です。また、ICT/IoTを活用するにいあたり、800団体以上が、関心はあるが特段の取り組みを行っていないとも回答しています。課題・障害となっているのは、財政状況や担当する人員不足との回答が大半を占めており、今後、国からの財政支援などが充実すれば、ICT/IoTの実装は進むかもしれません。
そのような状況下でも、 ICT/IoT の導入実績は少しずつ増えているのは確実であり、2030年には多くの分野で活用されている見込みです。
AI/RPA化
AIとは「Artificial Intelligence」の略で、人工知能を意味します。RPAとは「Robotic Process Automation」の略で、ロボットによる業務自動化を指します。
2023年に総務省自治行政局行政経営支援室が発表した資料によると、AIはすべての都道府県で導入済みです。RPAの導入は都道府県全体で約94%、指定都市で約40%です。
AIは、議事録作成など音声のテキスト化やチャットボットによる行政サービスなどで利用されています。RPAは、入力や調査など、各種事務処理業務に使われています。 近年はこういった事例が増えたこともあり、今後導入を予定していると回答した自治体は多く、数年以内には全体の100%で利用されていると予測できます。
一方で、都道府県、指定都市を除くその他の市区町村で課題となっているのが、ICT/IoT化と同様、予算の確保です。また、どのような分野で活用できるか、導入効果が分からないといった意見も多く、今後はいかに活用事例を増やし、AI/RPAの認知度を高めていくかが大切になってきます。
AI/RPA技術は発展が進み、各地方自治体でも一般的にみられるような時代に入っているのは間違いありません。デジタルネイティブとされるZ世代が2030年代を支えていくことを考えると、今からZ世代に見合う技術を取り入れていかなければなりません。
SaaS型サービスの導入
ICT/IoT、AI/RPA、どちらも導入できれば大変便利な環境を作り出すことが可能です。しかし、例えばAIの場合、開発だけでも50万~200万円が必要となり、どれも実装・運営には費用がかさんでしまうのも事実です。そのため、大掛かりに環境を変えずとも、まずはSaaS型サービスを導入するところから検討し、少しずつ業務を改善していく方法も注目を集めています。
SaaSとは「Software as a Service」の略で、インターネット通じてソフトウェア機能を提供するサービス形態のことを指します。例えば、会計ソフト、ビジネスチャット、名刺管理などがそれにあたります。当社が開発する予約システム「RESERVA」もSaaS型サービスの1つです。
SaaS型サービスはコスパが良いことがメリットに挙げられています。例えばRESERVA予約システムの場合、無料プランを用意しています。メニューカテゴリーの設定やアンケート機能など各種機能を利用できるゴールドプランでも、月額1万1,000円です。
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SaaS型サービスは、誰でもかんたんに導入でき、システム運用の負担を軽減できます。業務改善に大きな予算がかけられない、一部の業務のみ改善したいという自治体には、そういったサービスの導入から開始し、少しずつデジタル化を進めていくのがおすすめです。
まとめ
2030年に迎える労働力の減少・少子高齢化、都心集中・地方過疎化の問題に向けて、各自治体はDX化を進めていく必要があります。ICT/IoTやAI/RPAの導入は広がり、またその導入が難しい地方自治体でもSaaS型サービスの導入で、2030年にはより効率化が進んだ社会が構築されているでしょう。
日本では2021年9月からデジタル庁の設置が予定されており、国を挙げてIT化、DX化は積極的に行われていきます。今後はより良い街づくり、行政機関サービスが充実し、「2030年問題」を少しでも解決できる社会に近づくかもしれません。