昨今の新型コロナウイルスや働き方改革の影響を受けて、全国的にDX化やICT推進の機運が高まっています。その結果、様々な理由からDX化やICT活用に取り組むことでスマートシティの実現を目指す自治体が全国各地でも増えてきました。
その中の1つ、「兵庫県加古川市」はスマートシティの取り組みで全国的に注目を集めています。加古川市の取り組みの大きな特徴は、スマートシティはあくまでも「目的ではなく目的達成のための手段」ということです。その取り組みの中に、地方自治体のDX化におけるポイントがありました。
今回はそんな加古川市のスマートシティの取り組みについてご紹介します。
スマートシティとは
内閣府によると、スマートシティは「ICT 等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)の高度化により、都市や地域の抱える諸課題の解決を行い、新たな価値を創出し続ける、持続可能な都市や地域」と定義されています。
RESERVA Digitalではスマートシティによる地方創生、スマートシティに取り組む自治体を紹介しています。
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兵庫県加古川市の基本情報
人口 | 259,354人 |
面積 | 138.48㎢ |
公式ホームページ | https://www.city.kakogawa.lg.jp/index.html |
市役所住所 | 〒675-8501 兵庫県加古川市加古川町北在家2000 |
主な観光地 | 住吉神社、 加古川温泉 みとろ荘、 加古川海洋文化センターなど |
本社を置く企業 | マルアイ、 神戸物産、 多木化学など |
高等教育機関 | 兵庫大学、兵庫大学短期大学部 |
加古川市は、兵庫県南部の播磨灘に面した、市の中央部を加古川が貫流する自然豊かな地域です。海岸線には国内有数の鉄鋼工場がある他、内陸部には靴下や建具など特色のある産業があります。
観光地としては多数の神社仏閣がある他、高砂市との市境にある高御位山など豊かな自然を生かした体験型の観光開発を推進するなど、文化と自然の両方でPRをしています。また、叩いて薄くしたビーフカツに洋風のソースをかけた「かつめし」というご当地メニューが有名です。
加古川市スマートシティ構想
「加古川市スマートシティ構想」は「誰もが豊かさを享受できる スマートシティ加古川 ~「幸せを実感できるまち加古川」の実現に向けて~」という理念を掲げ、ICTを活用した市の課題解決とともに、市民の誰もがその豊かさを享受することで生活の質を高め、市民満足度を向上することを目的として策定されました。
スマートシティの推進に向けて、「加古川市スマートシティ構想」では以下のように、3つの基本目標が定められています。
基本目標1【市民】市民のQOLや利便性を向上するサービス
- いつでもどこでもできるストレスフリーな行政手続の実現
- 誰にでもやさしい窓口環境の実現
- 欲しい情報がすぐ手に入る効果的な情報発信
- 安心して子育てをできるまちづくり
- 高齢者にやさしいまちづくり
- GIGAスクールの推進(デジタル教育)
- 行政情報の見える化
基本目標2【まち】都市機能の強化や都市課題の解決
- 快適に移動できるまち
- 安全・安心のまちづくり
- 災害に強いまちづくり
- にぎわいのあるまちづくり
- インフラの整備及びメンテナンス
基本目標3【行政】デジタル行政の推進
- 情報のデータ化によるスムーズな窓口対応
- 最新技術による徹底した業務効率化
- どんな時も業務継続を可能とする体制づくり
- 多様なデータの利活用による新たな行政サービスの実現
- スマートシティアーキテクトの育成
スマートシティの取り組み
加古川市では上記の基本目標達成に向けて、様々な領域にわたってスマートシティに向けた取り組みが進められています。取り組みの特徴として課題解決のためのDX、ICTということが徹底されている点が挙げられます。今回はその取り組みの一部をご紹介します。
市公式アプリ「かこがわアプリ」
加古川市はスマートフォン向けの市公式情報アプリとして「かこがわアプリ」を配信しています。かこがわアプリは加古川市の天気やお知らせ、行政情報ダッシュボード、その他の市公式アプリやサイトのリンクなどを備え、加古川市に関する情報を集約しています。緊急時などに市からの重要なお知らせを通知する機能も持ち、市民の生活の利便化に取り組んでいます。
また、「かこがわアプリ」は自治体向けアプリとして他自治体でも利活用されることを目的とし、アプリをオープンデータとして公開しています。アプリ以外についても、加古川市で行われたDX化、ICT活用の取り組みを他自治体が参考にできるようにデータの公開を進めています。
加古川市公式サイト:市公式アプリ「かこがわアプリ」の配信について
加古川市公式サイト:かこがわアプリのオープン化について
都市の安全・安心を実現するスマートシティプロジェクト
加古川市はスマートシティの取り組みに先駆けて、安全・安心のまちづくり推進を目的として「見守りカメラ」や「見守りサービス検知器」の設置に取り組みました。市内各地に設置されたカメラや検知器と、BLEタグを活用して子供や高齢者などを見守る支援を行っています。
「かこがわアプリ」に見守り機能が搭載されており、保護者は帰宅する子どもの居場所を確認することができるため、防犯効果も高く市民が安全・安心に暮らせる仕組みになっています。
加古川市公式サイト:見守りサービスについて
BLEタグとは
BLEとはBluetooth Low Energyの略で、少ない電力で通信を行える省エネに特化したBluetoothの規格のことです。BLEタグは加古川市のような見守り用の他、忘れ物防止タグなどにも利用されています。
市民参加型合意形成プラットフォーム「Decidim(デシディム)」
Decidimはオンラインで多様な市民の意見を集め議論を集約し、政策に結びつける、「市民参加のためのデジタルプラットフォーム」です。コロナ禍で密の回避や接触機会を減らしながら市民の意見を集める目的で導入を決めました。実際に令和3年に作成された「加古川市スマートシティ構想」には実際にDecidimからアイデアや意見を収集し、反映されています。
海外ではバルセロナやヘルシンキを始めとした自治体で利用されているDecidimですが、日本で導入を決めたのは加古川市が初めてです。2021年11月にはNECとの連携協定を結び、Decidimの利用価値をより高めて活用を推進しています。
加古川市 市民参加型合意形成プラットフォーム
加古川市とNEC、地域共創に関する包括連携協定を締結
ICTを活用した保育士の働き方改革の実現と快適な保育環境の提供
加古川市では、「加古川市まち・ひと・しごと創生総合戦略」に基づいて、「子育て世代に選ばれるまち」の実現に向けて「保育士の働き方改革」という観点から、ICT活用による保育園での業務効率化に向けた取り組みを進めています。
例えば、書類のペーパーレス化、書類作成の簡素化や、ICTツールによる保育のサポートによって業務の効率化を進めたり、様々なツールやデータの分析によって作業時間の短縮、電気料金の削減を進めるなど幅広い領域にわたって保育現場の改善に向けて取り組んでいます。
加古川市におけるスマートシティプロジェクトを通じた少⼦化克服と⼈材育成・継承への対応
加古川市における補助金・助成金制度
ぐうっと!かこがわ奨学金返還支援補助金
加古川市では、中小企業等と大手企業の賃金格差の是正と、若者勤労者の市内定着及び転入の促進を目的として、加古川市内に居住し中小企業等へ就職された方が返還する奨学金の一部を補助しています。
令和4年3月1日現在の勤務場所 | 補助金額 | 上限額 |
市内 | 補助対象期間中に返還した 奨学金の10分の10 |
補助対象期間×2万円 (年間最大24万円) |
市外 | 補助対象期間中に返還した 奨学金の2分の1 |
補助対象期間×1万円 (年間最大12万円) |
対象となる詳しい要件は実際のページでご確認ください。
結婚新生活支援補助金
加古川市内で新生活をスタートする新婚世帯を対象に、新居の購入費や家賃、引越費用に補助金を交付します。
結婚を機に新婚世帯が市内で住宅を購入、賃借するための費用および引越費用
(令和3年1月1日から令和4年3月31日までに生じた住居費および引越費用の合計額)に対して、最大30万円の補助金が支給されます。
補助の対象や詳しい要件は実際のページでご確認ください。
令和3年度加古川市移住支援金
加古川市内への移住・定住の促進及び中小企業等における人手不足の解消に向け、兵庫県と協働して東京圏から加古川市に移住した方に対し、移住支援金を交付しています。
東京23区内に在住ないし通勤があったことが主な要件で、単身の移住では60万円、世帯での移住では100万円が補助されます。
詳しい要件は実際のページでご確認ください。
地方創生におけるRESERVA予約システムの活用
加古川市で行われているスマートシティ推進の取り組みにはSaaS型のサービスなど様々な外部の技術も活用されています。DX化やICT活用による利便性の向上や業務の効率化、省人化をかんたんにできるのが「予約システム」です。当社が提供する予約受付システムRESERVA(https://reserva.be/)は、26万の事業者・官公庁に導⼊されている国内最⼤級のSaaS型予約システムであり、人口20万人を超える規模の自治体のほか、人口5万人以下の小規模な市町村でも導入実績があり、最も選ばれている予約システムです。業務の効率化を進めて、よりよい地方創生の仕組みを作りましょう。
地方創生事業への導入事例(各項目概要ページにアクセスできます)
自治体で活用されている予約サイト紹介
まとめ
加古川市は日本でも屈指のスマートシティを推進する自治体です。しかし、加古川市の目標はスマートシティではなく、あくまでも「市民のため」より便利で安全な地域づくりに取り組んでいます。
まず課題があり、それを解決するのにベストな方法がDXやICT活用だった、という加古川市の取り組みはまだまだ様々な分野に展開していくことでしょう。さらに加古川市は積極的にデータ公開に取り組んでいるため、多くの自治体の参考になるはずです。
地域の課題は何か、そして課題を解決する技術は何か。これらを結び付けるアイデアはゼロから生み出すのはとても難しいことです。ですが、加古川市の事例を踏まえ、発展させることで日本全体のDX化が推進されることでしょう。
課題解決のためにスマートシティを推進して地域の課題解決に挑む加古川市の取り組みに今後も注目です。