首相官邸が公開している「日本のスマートシティ~SDGsなど世界が抱える課題を日本のSociety5.0で解決~」によると、日本の都市基盤整備は、エコシティ(環境共生都市)、公共交通指向型開発(TOD)、防災・減災が強みであるとされています。これらの特色を柱に、日本では多くの企業や市民が参加できる透明性の高いスマートシティ構築を目指しています。
エコシティ(環境共生都市)とは、低炭素社会、資源循環、環境負荷の低減等の面において、ハードとソフトの両面で環境に配慮した都市を指します。エネルギーを効率的に利用することを考え、環境への配慮につながる取り組みを進めます。
公共交通指向型開発(TOD)は、自動車に依存しない都市を目指し、公共交通が中心となって進められてきました。駅から歩ける距離にオフィスや商業施設、ホテル等を配置し、鉄道沿線には住宅地を配置することで、交通渋滞を回避しつつ、都市機能を高度化することがねらいです。
さらに、地震や台風などによる災害が発生しやすい日本では、災害から身と財産を守るための防災・減災に積極的に取り組んでいます。社会インフラを強化し、災害を予測・予防する技術やシステム、災害の被害をできるだけ少なくする技術開発をまちづくりに活かしています。
本記事では、日本のスマートシティ構築に関わる上記の特色を活かした取り組みを行っている企業の事例を取り上げ、理想的な日本のスマートシティ像について考察します。
エコシティに向けて強みを活かす
新電元工業のEV急速充電
新電元工業では、最大出力90kWの電気自動車(EV)急速充電のラインナップが豊富です。2022年7月には、充電ネットワークの国際標準通信プロトコル「OCPP」に対応する機種が新たに追加されました。
このモデルは、公共充電認証サービスや、事業者が独自に充電決済システムを構築できる仕組みを搭載しています。そのため、事業者は利用客に限定した充電料金設定や、商用EVを活用する物流拠点の充電設備管理など、将来のEV普及に向けて多様なサービスを展開することが可能です。
休憩を兼ねて急速充電器を利用するユーザーに対しては、軽食を提供する売店やコイン洗車など、充電利用に絡めたサービス併設に期待が寄せられています。急速充電器と併設サービスを連携させることによって、より付加価値の高い充電スポットを実現することが可能になり、事業の採算向上にもつながります。
Honda(ホンダ)の自動運転
Hondaは2018年より、無人の自動運転車両を用いた「自動運転モビリティサービス」の実現を目指しています。現在はテスト車両による技術実証が国内外で進行中です。
政府は自動運転のレベルを5つに分類、定義しています。レベル1~2では、運転操作の主体はドライバーにあり、システムは運転支援に留まりますが、レベル3では高速道路渋滞時など特定の走行環境条件を満たす限定された領域において、システムが周辺の交通状況を監視するとともにドライバーに代わって運転操作を行うことが可能となります。現在、Hondaは世界で初めてレベル3自動運転システム「Honda SENSING Elite(ホンダ・センシング・エリート)」を搭載した車を発表しています。
公共交通指向型開発(TOD)に取り組む
阪急電鉄によるTOD
阪急電鉄は、1910年の開業時から、駅を結節点とした公共交通志向型開発(TOD)に取り組んでいます。例えば、大阪府梅田市のターミナルに阪急デパートを開業し、郊外住宅地に居住し都心部で電車で通勤する住民をターゲットにしたターミナルデパート建設に力を入れています。
ターミナルデパートは、駅に集まってくる鉄道利用者の集客力と購買力を利用した都市計画です。阪急電鉄では、鉄道という公共交通を中心においたまちづくりを推進することで、環境に配慮した持続可能な社会づくりにも貢献しています。
東急グループによるTOD
東急電鉄では、東急グループと協働して、多摩エリアや田園都市線沿線の開発・運営を行っています。
コロナ禍により在宅勤務が主流化し、テレワーカーが増加した現在、多摩エリアの開発は都心集中を緩和するとともに、郊外居住に新たな価値を生み出すことができます。その結果、鉄道の混雑緩和、駅空間の多目的活用、商業をはじめとしたさまざまな都市機能の導入、学校誘致などにつながります。
最近では「渋谷駅周辺開発プロジェクト」が進められており、「働く」「遊ぶ」「暮らす」が融合した持続性のある渋谷を目指し、エリアの魅力を高めています。このようなTODによって、鉄道は通勤通学に特化する役割から、より多目的な利用と交流の拠点を担う役割へと変わってきています。
防災・減災のまちづくりに貢献する
AIと空間情報技術を活用したソリューション
AIを活用した防災・危機管理サービスを提供する株式会社Spectee(スペクティ)は、国際航業株式会社とパートナー契約を締結し、人工知能(AI)と空間情報技術を活用した新しい防災・減災ソリューションの創出に共同で取り組んでいます。
2011年に発生した東日本大震災を受け、被災地の現状を正しく伝えたいとの思いから、SNSによる現地の「本音(つぶやき)」をリアルタイムに解析し、「今」起きていることをより正確に世界へ届けることができるサービスの開発を始めました。
2020年には「Spectee Pro」をリリースし、SNSだけでなく河川や道路カメラ映像、気象情報、人工衛星画像データ、自動車プローブデータなど、さまざまな情報を解析し、地図と連動して表示することで被害状況やリスク予測などをわかりやすく表示できるようになっています。現在では、報道機関、社会のインフラを担う企業、物流企業の遅延リスク管理など、企業のリスクマネジメントを担うソリューションとしても活用されています。
災害リスク情報サービス「DR-Info」(ディーアールインフォ)
株式会社PASCO(パスコ)が提供する「DR-Info」は、平常時・異常気象時・大規模災害発生時の3つの場面において、情報収集・情報共有に活用できる災害リスク情報サービスです。雨量などの気象情報や、通行実績が分かるデータ、通行規制情報などをリアルタイムで提供します。
「DR-Info」は、台風や豪雨など異常気象時の情報提供を中心に、平常時は最新の通行規制情報を入手できることから、通行止めの道路や迂回路を把握し、ドライバーや営業車両に指示することができます。大規模災害に備えるサービスだけでなく、道路交通のリスク把握なども行えるため、事前対策としても有効です。
タスクを見極め、スムーズに時間削減するなら、予約管理システム「RESERVA」
今回取り上げた企業では、「エコシティ」「公共交通志向型開発」「防災・減災」という観点からそれぞれの強みを意識したプロジェクトを推進し、日本独自のスマートシティ構築を目指しています。
企業の特色を発揮したプロジェクトを遂行するため、タスクの優先順位を見極めるためにまず挙げられるのが、SaaSシステムの導入です。例えば、SaaS型予約管理システムして国内最大級の登録事業者数26万社を誇る「RESERVA」の場合、セミナー開催やオンラインウェビナー、オンラインレッスンなど、予約が発生するすべての業態において効率よく予約作業を進めることができます。さらに電子鍵システムのスマートロックと連携することで、施設内の鍵の受け渡しが不要となり、業務改善につながります。
また近年は、人口20万人を超える規模の自治体のほか、人口5万人以下の小規模な市町村でも導入実績があり、 官民連携の良き実例としても挙げられています。システム導入はコストや管理費が高いというイメージを持たれることが多いですが、RESERVAなら安価で、誰でもかんたんに利用できるシステムとして好評を得ています。
詳細は、予約システムRESERVA(レゼルバ)ホームページをご覧ください。
まとめ
日本では、防災や減災、エコシティ、公共交通指向型開発の都市が柱となり、デジタル技術を活用した新サービスの創出や生活の質向上を図るスマートシティを目指しています。企業によって蓄積されたノウハウや経験をもとに、多くの市民や企業が参加できる、オープンなプロジェクトが進めば、日本のスマートシティのオリジナリティがより発揮されるでしょう。
次記事では、日本型スマートシティを実現するべく、企業の強みに特化して事業に取り組んでいる事例を詳しくご紹介します。