【スマートシティ政策事例】長崎県佐世保市「DX戦略」を解説

【スマートシティ政策事例】長崎県佐世保市「DX戦略」を解説

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長崎県の県北部の中心都市として、九州地方の中核都市としても栄える「佐世保市」。そんな佐世保市では、情報化の取り組みやICT(情報通信技術)の利活用によるまちづくりを推進しています。

とりわけ単なるデジタル活用にとどまらず、業務や組織までも大胆に変革する「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」を、情報政策における最上位の戦略に掲げ、行政ではその実現に向けた動きが活発化しています。本記事では、佐世保市DX戦略の概要から具体的な取り組みについて解説します。

佐世保市の概要

佐世保市は、長崎ハウステンボスなどの観光地や西海国立公園「九十九島」に代表される自然豊かな街として有名です。長崎県内では、長崎市に続いて人口を抱え、九州全域でも9番目に人口が多く、産業の中核を担っています。また、かつては旧海軍の軍港として栄えた歴史を持ち、現在でも米軍基地を有するなど、国際色が高いことが特徴です。

住所(市役所)〒857-8585 長崎県佐世保市八幡町1番10号
面積426.5 km²
人口233,227人(令和6年1月1日)
市内のランドマークハウステンボス長崎バイオパーク九十九島など

佐世保市が抱える課題

日本の総人口は2008年をピークに減少し続けており、少子高齢化が進むことで、働き手である生産年齢人口と支えられる高齢者のアンバランスが将来的に加速することが想定されています。とりわけ佐世保市では、全国の中核都市と比較しても人口減少率が著しく進んでおり、人口構造の変化に合わせた行政サービスの見直しが課題となっています。

また、佐世保市は有人島である黒島、高島、前島、鼕泊(とうどまり)島をはじめ、居住地域が複数に分かれており、人口減少率も地域差が生じています。一方、外国人住民数は年々増加しており、2016年から2020年の5年間に掛けて20%以上も増えています。国籍も多岐にわたることから、多様性への対応も必要となっています。

このように、佐世保市では少子高齢化と外国人住民の増加により、社会構造が大きく変化しています。加えて昨今は、新型コロナウイルス感染症の影響や、ITサービスの成長に伴う産業構造の変化が起きています。そうした中で行政は、今までのやり方を抜本的に見直すことが求めれています。

佐世保市DX戦略とは

近年、社会環境は急速に変化しています。将来的にさらなる変化が予想される中、行政は変化への対策が求められています。

そうした中で佐世保市では、デジタル化の推進をベースとしながらも、今までの行政サービスや行政の在り方そのものを抜本的に見直す「変革の視点」が必要不可欠であると述べています。それを踏まえ、ICTを原動力としたまちづくり推進をベースとした社会変革の取り組みとして、「佐世保市DX戦略」を策定しました。

佐世保市DX戦略の方向性

佐世保市は、市内を取り巻く環境や行政に求められるあり方の変化を踏まえ「つながる ひろがる 未来のSASEBO」をスローガンに、DXを通じて実現したいビジョンを設定しました。

  1. あらゆる市民に、より近くで寄り添うデジタル市役所
  2. VUCA時代にスピーディかつ柔軟に対応できる行政組織
  3. にぎわい・活力に溢れた、スマートで魅力ある地域
  4. 様々なプレイヤーがつながり、共に考え・創るまち

この原動力となるのがICTの利活用です。単にICTやデータ活用といったデジタル化にとどまるのではなく、IT技術の活用により、業務や組織の在り方を大胆に変革すること(DX)に重きを置いています。

佐世保市DX戦略の全体像

佐世保市DX戦略では、「制度・仕組み」「組織・人員体制」「風土・マインド」といった3つの土台をもとに、まちづくりと行政経営を支援していきます。その中で、国や県、民間事業者、市民と連携をしながら、デジタルを活用したサービス向上や高度な支援体制の実現に取り組むこととしています。

多くの課題が存在する中、効率的にDXプロジェクトを進めるために、佐世保市ではプロジェクトを4つに分類し、優先順位を決めて取り組んでいます。

分類定義
DX重点課題令和9年度に向けて、市として戦略上注力し、重点的に取り組む分野において取り組む課題。
DX推進課題複数の部局で検討可能な共通のテーマやテクノロジーに基づき、各部局レベルで取り組む課題。
DX研究課題現時点での着手は難しいが、外部環境や技術動向の変化に伴い、速やかに取組むために、状況を注視する課題
クイックチャレンジ庁内のデジタル技術の活用や運用の見直しなど、すぐに着手でき、業務の改善につなげることができる課題。

佐世保市DX戦略のポイント

ここでは、佐世保市のDX戦略のポイントを解説していきます。各ポイントの詳細を知りたい方は、佐世保市DX戦略の公開資料をご覧ください。
参考:佐世保市DX戦略(令和4年2月佐世保市DX推進室)

観光

テーマ

デジタルマーケティングの強化・スマートツーリズムの実現による体験観光の価値向上

■取り組み内容

  • 人流データ等の把握と活用、ニーズ分析による観光戦略の策定
  • デジタルプロモーションとデジタルマップ等、楽しめる観光体験の提供
  • 周遊観光、滞在型観光につながるデータを活用した観光ルートの提示

農林水産

■テーマ

デジタル活用による持続可能で魅力ある一次産業の実現

■取り組み内容

  • オンライン上でのサポートやオンラインコミュニティでの交流促進、新規参入者の支援
  • 生産性向上、所得向上につながるIoT等デジタル技術の活用、スマート化
  • デジタル技術の活用による生産リスクの最小化

都市整備

■テーマ

高度なデータを活用した住みやすいまちの実現

■取り組み内容

  • 人流データ等の把握、可視化、民間との双方向によるデータ活用
  • 3Dマップによる都市の見える化、データに基づく政策展開と公民連携の実践
  • ワンストップでより付加価値の高い情報の提供

土木

■テーマ

デジタル技術を活用した高度かつ効率的な土木インフラ施設の管理による安心・安全な社会基盤の構築

■取り組み内容

  • ドローン、IoT、ICTを活用したスピーディかつ効果的なインフラ管理
  • AIによるデータ分析、管理・予測の高度化
  • モニタリングデータのリアルタイム発信

子ども・子育て

■テーマ

地域を含めた切れ目のない子育て支援

■取り組み内容

  • 手続のオンライン化やプッシュ型の情報発信
  • オンラインネットワークによる関係機関との連携、地域一体での子育て支援の実現

教育

■テーマ

一人ひとりの児童に合わせたよりよい教育の提供にむけた環境構築

■取り組み内容

  • 1人1台端末をはじめとする児童生徒一人ひとりに合わせた最適な学習環境の提供
  • 校務の効率化によって、児童生徒と向き合う時間を生み出すためのデジタル活用
  • 保護者等とのコミュニケーションの円滑化、連携強化

保健福祉

■テーマ

デジタルを活用した福祉の高度化による包括的な支援体制の実現

■取り組み内容

  • 手続や相談のオンライン化と庁内の情報連携強化
  • デジタル技術を活用した業務の効率化と市民ニーズへの対応強化、包括的支援の実現

防災

■テーマ

適正・的確なデータを活用した危機管理マネジメントの構築

■取り組み内容

  • 災害対応に必要なデータの取得・分析による迅速な危機管理対応
  • 市民一人ひとりに合わせたタイムリーかつ伝わる防災情報の発信

窓口

■テーマ

行かなくてもよい&待たない窓口

■取り組み内容

  • 対面性を必要としない全ての手続のオンライン化
  • 来庁時にも申請内容をデジタルで入力し、書かない、待たない窓口を実現
  • オンライン相談の拡大と相談窓口のオンライン予約

業務効率化

■テーマ

デジタル技術のフル活用による職員の仕事の高質化

■取り組み内容

  • 市民の意見を広く収集し、効果的に施策に反映するためのデジタル活用
  • AIやロボット等の活用による事務作業の徹底した削減、省力化
  • 庁内の様々なデータを活用した業務の高度化

多様化

■テーマ

多様なニーズに対応し、必要な人が必要なサービスを受けられる市役所

■取り組み内容

  • 窓口や納付書のキャッシュレス対応
  • 年齢や障がい、言語を問わないデジタル活用の支援
  • 広報紙のデジタル化や動画やSNS等を含めた最適で、わかりやすい情報発信

職場環境

■テーマ

職員の能力を最大限発揮できる魅力的な職場環境

■取り組み内容

  • 時間や場所にとらわれないスマートワーク環境の構築
  • 国が策定する標準仕様に準拠したシステムへの移行

スマートシティにより近づく、予約管理システム「RESERVA」

画像引用元:RESERVA公式サイト

ICT技術を活用したDX化を実現するためには、地域住民のITリテラシーやデジタル活用の意識を高めることも重要です。企業や店舗、行政機関などは、利用者と接点を持つ際にデジタルツールの利用機会を増やし、デジタル活用を浸透させることが大切です。

デジタルツールの普及に向けて役立つのがSaaS型サービスです。SaaS型は高機能でありながら、リーズナブルに利用できることが特徴です。例えば、オンライン予約システム「RESERVA(レゼルバ)」は、あらゆる業界・業種でも導入されているSaaS型サービスです。

RESERVAを導入することで、集客・予約・決済・来店といった一連のビジネスフローを自動化し、従来の予約管理方法から脱却するなど店舗ビジネスのDXを実現します。

近年では、自治体や官公庁、大学などの導入実績も増えており、官民連携を果たした実例も多いのが特徴です。導入実績の詳細は、予約システムRESERVA(レゼルバ)ホームページをご覧ください。

まとめ

今回は、DXを情報政策における最重要戦略に掲げる、長崎県佐世保市の「佐世保市DX戦略」を解説しました。人口減少や外国人増加に伴う課題は、今後多くの自治体が直面することでしょう。そうしたときに、佐世保市の取り組みは参考になることも多いのではないでしょうか。

今後も、RESERVA Digitalではスマートシティ施策に関する国内事例を取り上げていきます。他の地方自治体のレポートについては、こちらよりご覧ください。

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