2027年のリニア中央新幹線開業を控え、世間の注目・関心を集める愛知県名古屋市。中心となる名古屋駅周辺・栄地区エリアでは、ビジネスパーソンや外国人旅行者(インバウンド)の増加が見込まれることから、開発需要や都市機能の強化が進んでいます。
そうした中で、とりわけ注目を集めているのが、「SRT構想」です。名古屋市は官民一体となり、SRT構想を主軸とした新たな路面公共交通システムに乗り出しています。本記事では、SRT構想とはなにか?現在どこまで進んでいるのか?について詳しく解説します。
SRT構想とは
SRT構想とは 「新たな路面公共交通システム」の実行計画のことです。そもそもSRTとは「Smart Roadway Transit」の略で、洗練されたデザインなどのスマート(Smart)さを備え、路面(Roadway)を走ることで街の回遊性や賑わいを生み出す、今までにない新しい移動手段(Transit)であることから名づけられました。
SRT導入検討の背景
SRT構想が検討され始めたのは、平成23年(2011年)に策定された「なごや新交通戦略推進プラン」がきっかけです。名古屋市では、リニア中央新幹線開業や外国人観光客(インバウンド増加)、少子高齢化の影響により、都市間競争が激化していました。そうした中で、名古屋の広い道路空間を活用して、新たな交流社会を創出する「みちまちづくり」を提唱されました。
みちまちづくりを具体化するための実行計画として、「道路空間の主役転換」「自動車の都心部への集中緩和」「移動手段の多様化」といった3つのテーマを掲げました。その中で、3つ目の「移動手段の多様化」における主要施策として、新たな路面公共交通システムの導入が検討され、具体的な実行へと進んでいます。
SRT導入の経緯
ここでは、SRT(新たな路面公共交通システム)導入の経緯を時系列で解説します。
平成23年(2011年)9月 | 「なごや新交通戦略推進プラン」策定 。 名古屋の広い道路空間を通じて、新たな交流社会を創出する「みちまちづくり」の提唱 |
平成26年(2014年)9月 | 「なごや交通まちづくりプラン」策定。 「移動手段の多様化」の主要施策として、都心部での新たな路面公共交通システムの導入検討を開始 |
平成29年(2017年)3月 | 「新たな路面公共交通システムの導入に係る基本的な考え方」策定。 LRT/BRTの優れた点をあわせ持つ、最先端で魅力的なタイヤベースシステムの導入検討を開始 |
平成31年(2019年)1月 | 「新たな路面公共交通システムの実現を目指して(SRT構想)」策定。 概念として「Smart Roadway Transit」を提唱し、実現を目指すシステムの姿を示した構想を示す |
令和2年(2020年)10月 | 社会実験の実施。 連節バスと燃料電バスが名古屋市内を公式走行 |
令和4年(2022年)9月 | 社会実験の実施(2回目)。 連接バスの試験走行(一般般試乗体験あり) |
2022年9月には、2両編成のバスを使って、一般市民を初めて乗車して行われました。ただし、現時点ではSRTがいつから本格導入されるか明確になっていません。名古屋市としては2027年のリニア中央新幹線の開業を目指しているため、今後も社会実験を行いながら段階的に導入を進めていくものと予想されます。
SRTの概要
SRT(新たな路面公共交通システム)とは、具体的にどういった取り組みなのでしょうか。また、新しい路面公共交通システムというと、LRTやBRTなどもあります。SRTはそれらと何が異なるのか、ここではSRTの特徴やLRT・BRTとの違いを解説します。
SRTの特徴
SRTは、「わかりやすさ」「使いやすさ」「楽しさ」を兼ね備えた最先端で魅力的なタイヤベースシステムの取り入れています。
名古屋市内は、名古屋城を望む名城地区や、名古屋駅地区、サブカルチャー文化の根付く大須地区など、魅力のある街が点在しています。SRTは、それらをシームレスにつなぎ、料金収受や乗降りなどのストレスがなくスムーズな移動を提供します。
その実現に向けて、車両だけではなく、走行空間、乗降・待合空間、運行サービスが相互に連携し、一体的に機能することが特徴です。
LRT・BRTとの違い
路面公共交通システムといえば、よく馴染みのあるものに「LRT」「BRT」があります。どちらも、都市内の基幹的な公共交通システムであることは共通していますが、両者の特性は大きく異なります。
LRTは「Light Rail Transit(ライト・レール・トランジット)」のことで、日本語では「軽量軌道交通」とも呼ばれます。LRTは、低床式車両(LRV)を用いた路面電車の進化系です。従来のバスや電車と比べて、乗り降りの容易性・定時制・速達性・快適性が高いというメリットがあります。
一方、BRTは「Bus Rapid Transit(バス・ラピッド・トランジット)」のことで、日本語で「バス高速輸送システム」などと訳されます。従来の路線バスでは、一般車両と同じ道路を走行するため、定時性・速達性を確保できないというデメリットがあります。BRTは、専用レーンや乗降用プラットホームの設置、バス優先信号の導入などによって、電車同様の輸送力を実現します。
このように、LRTとBRTにはそれぞれ違いがありますが、SRTはそれぞれの優れた点を併せ持っている点が特徴です。
SRTシステムの詳細
車両
SRTの車両は、先進的な近未来デザインが取り入れられています。もちろん見た目だけではなく、フラットでゆとりのある車内空間によって、車いすの方やベビーカーを使用する方など、誰もが快適に過ごせる環境になっています。
さらに正着制御技術によって、停車時における車両と待合空間との隙間をなくし、段差を気にせず誰もがスムーズに乗降できるようになります。また、開放感のある大きな窓を採用しており、車窓から名古屋市内の景色を楽しめるのも魅力です。
走行空間
走行区間で特に課題となるのが、他の路線バスやタクシー、自転車など、様々な道路利用者に対する配慮の必要性です。
SRTでは、走行レーンを着色しルートの存在感を高めることや、歩道側の専用レーン化など、公共交通の走行を優先させる仕組みによって、交通渋滞などによる運航の遅延を低減します。
乗降・待合空間
SRTの乗降場所・待合空間は、街の回遊拠点としての機能を備え、無料Wi-Fi機能やデジタル案内版なども設置するとされています。それによって、他の公共交通との乗り換えを容易にし、街の回遊性や賑わいを創出します。
またデザイン性の高い上屋や待合ベンチを整備し、日差しが強い日や悪天候の日でも快適な待合空間を確保するほか、車両と乗降・待合空間との隙間をなくすことで、車いすやベビーカーでもシームレスに乗降できる環境を提供します。
運行サービス
SRTは、通勤客や観光客など、多様な利用形態に対応する基幹的な路線として、およそ10分以内の定間隔で運行される予定です。また、スムーズな料金支払いを実現するために、ICカードリーダーの設置やモバイル決済を導入するとされています。
車内事故防止や混雑緩和のために、ICカードリーダーを複数の扉に設置するなど、移動距離が減るような工夫も導入予定です。
スマートシティにより近づく、予約管理システム「RESERVA」
スマートシティの実現には市民の意識を高めることも重要です。各企業、店舗、個人でも始められるスマートシティへの実現に向けて、近年注目を集めるのが「SaaSシステム」の導入です。例えば、オンライン予約システム「RESERVA(レゼルバ)」は、どのような業界・業種でも導入しやすく、オンライン予約サイトを手軽に構築できます。
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近年では、自治体や官公庁、大学などの導入実績も増えており、官民連携を果たした実例も多いのが特徴です。導入実績の詳細は、予約システムRESERVA(レゼルバ)ホームページをご覧ください。
まとめ
今回は、企業と自治体の連携によって実現を目指すスマートシティの事例について、愛知県名古屋市の「SRT構想」を取り上げました。地域コミュニティに着目し、多くの機関を巻き込んで一体となってスマートシティ化を進める動きは今後も注目され、日本のモデルのひとつとなっていくことでしょう。
今後も、RESERVA Digitalではスマートシティ施策に関する国内事例を取り上げていきます。他の地方自治体のレポートについては、こちらよりご覧ください。