自治体の広報活動は、地域住民や観光客にとって重要な情報源であり、その質と速さが地域社会の活性化に大きく貢献します。近年では、「SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)」を活用した情報発信が欠かせない時代となり、特に「X(旧Twitter)」はその即時性と拡散力から、自治体広報において有効なツールとされています。本記事では、自治体の広報活動におけるXの有用性を、効果的な活用方法と実際の事例を交えて解説します。
自治体における広報活動の役割
自治体の広報活動の目的は、住民への情報提供が中心ですが、その内容は多岐にわたります。具体的には、地域のイベント情報や行政サービス、災害時の緊急連絡、公共施設の案内などです。自治体がどのような形で情報を発信し、どのようにして住民とコミュニケーションを取るかは、地域の発展に大きな影響を与えます。広報活動を通じて自治体と住民の信頼関係が深まることで、地域の問題解決や住民の生活向上にもつながり、最終的には地域全体の活性化につながります。
広報活動が効果的に機能している自治体では、住民に対して迅速でわかりやすい情報を提供しているだけでなく、地域活動への参加も促進しています。これまで、自治体広報は主にポスターやチラシ、ラジオ、テレビなどのメディアを活用してきましたが、近年のデジタル技術の進展により、インターネットやSNSを活用した情報発信の重要性がますます高まっています。
自治体の広報活動に効果的なXとは
X(旧Twitter)は、無料で利用できるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のひとつです。主に、10代・20代の若年層を中心に利用されており、X Corp. Japan(エックス コープ ジャパン)株式会社の発表によると2023年度の国内月間アクティブユーザー数は6,700万人を記録しています。
このように多くのアクティブユーザーを抱えるXにおける最大の特徴は、拡散力と即時性の高さにあります。
Xの投稿は、リポスト(再投稿)や引用リポスト、いいね、リプライなどを通じて、情報を短時間で多数の人々に拡散する力を持っています。また、ハッシュタグ機能を活用することで、特定のユーザーに向けて情報を届けられます。個人のアカウントから企業、政治家、著名人のアカウントに至るまで、様々な規模で情報の拡散が行われ、特定の話題が急速に広まることが多々あります。
Xの基本用語と機能
Xを円滑に運用するためには、Xに関連する用語や機能について理解する必要があります。
フォローとフォロワー
Xでは、特定のアカウントを選び、そのツイートを自分のタイムラインに継続的に表示させることを「フォロー」と呼びます。対して、自分のアカウントをフォローしてくれている人のことを「フォロワー」と言います。また、フォローしてくれたアカウントにフォローを返すことは、「フォローバック」と呼ばれています。
自治体アカウントを運用する際に特に注目すべきポイントが「フォロワー数」です。フォロワー数は、自治体の発信を常時閲覧してくれるユーザー数を測る指標として、重要な数値となります。
ポストとリポスト
Xでは、テキストや画像、動画を投稿することを「ポスト」、他者の投稿を自アカウントで共有することを「リポスト」と言います。
無料アカウントの場合、1つのポストの上限は140文字までとなっていますが、有料プランに登録することで最大2万5,000文字まで増やすことが可能です。また、無料アカウントにおける予約投稿は、Webサイトからしか行えない点に注意が必要です。
ハッシュタグ
特定のテーマについて投稿しているポストを集めたい場合、「ハッシュタグ」の活用が有効です。
Xでは、「#(ハッシュマーク)」の記号とキーワードを用いることで、ポスト内容やトピックを分類できます。これにより、ユーザーは、特定のハッシュタグを検索することで、同じハッシュタグが付いたほかのポストをまとめて閲覧することが可能になります。ハッシュタグの活用によって、自治体は特定のターゲットに向けて情報を発信することができます。
一方で、ハッシュタグを付ける際には、ひとつの投稿にハッシュタグを付けすぎないようにすることが大切です。Xのヘルプセンターでは、ひとつのポストに使用するハッシュタグは最大ふたつまでを推奨しています。
タイムライン
Xを開くと最初に表示される画面のことを「タイムライン」と呼びます。タイムラインには、「おすすめ」と「フォロー中」の2種類が存在しており、それぞれ、時系列もしくはアルゴリズムで調整された順序でポストが表示されます。
- おすすめ
Xのアルゴリズムに基づいてユーザーの興味に合ったポストが表示されるため、フォローしていないアカウントも表示されます。具体的には多くのユーザーに表示されている話題のポストや、自身のアカウントの行動(リポストやいいねなど)に基づいた類似ポストなどが表示されます。 - フォロー中
フォローしているアカウントのポストとリポストが、新しい順に表示されます。
いいね
いいねはSNSで広く普及している機能の一つで、主に他のユーザーのポストに対して、好意的な反応を示す際に行われるアクションです。リポストやいいねなどはエンゲージメントと呼ばれ、エンゲージメントが多いポストはアルゴリズムで高く評価されるため「おすすめ」に表示されやすくなります。
リプライ
自分のXアカウントから発信したポストに対し、ユーザーからコメントがつくことがあります。このコメントを返信、または「リプライ」と言います。
Xにおいて地域住民や観光客とコミュニケーションを取ることで、自治体や地域のイメージアップにつながるだけでなく、アルゴリズムの観点でもおすすめに表示されやすくなる効果があります。そのため、リプライにはいいねをつけたり、自治体アカウントからさらにリプライを行うなどのアクションを取ることをおすすめします。
自治体の広報活動にXを活用するメリット
多くのアクティブユーザーを持ち、情報発信に役立つ機能を備えたXを活用することで、自治体の広報活動をより一層効果的に行うことができます。ここでは、自治体の広報活動にXを活用するメリットについて解説します。
リアルタイムでの情報発信
自治体の広報活動にXを活用する最大のメリットは、情報をリアルタイムで発信できる点です。
住民が自治体の公式アカウントをフォローしている限り、自治体は最新情報を住民に届けることができます。このリアルタイム性は、自治体の広報活動において効果的に機能します。例えば、災害時や緊急事態における、Xによる迅速な避難指示や警報情報の拡散は、地域住民の素早い安全の確保につながります。
また、地域イベントへの参加の促進や観光客の誘致などにも有効です。Xでは投稿が即座に拡散されるため、住民だけでなく、周辺地域やメディアなどにも情報を迅速に伝えることができます。
高い視覚的訴求力
Xでは、文字だけでなく、画像や動画もかんたんに投稿できるため、視覚的に地域の魅力をアピールすることができます。地域イベントや観光スポットの紹介、さらには行政サービスの利用方法を示す際などに、視覚的な要素を取り入れることで、住民の関心を引くことが可能です。
Xを含めたSNSでは、目を引く画像や動画が注目されやすく、情報が拡散しやすいという特長があります。自治体はこうした視覚的要素を取り入れることで、住民や観光客、多くの一般ユーザーに地域の魅力をダイレクトに伝えることができます。
双方向のコミュニケーション
Xは、住民と自治体の間で双方向のコミュニケーションを実現するツールとして非常に有効です。投稿したポストへ返信された住民からのフィードバックを迅速に受け取ることが可能であり、その意見を基に自治体はサービスや施策の改善に活かすことができます。
住民との双方向のやり取りが増えることで、自治体と住民との間に信頼関係が築かれ、住民の地域に対する愛着やコミュニティの絆が深まります。自治体は、Xに投稿された住民の声に耳を傾けることで、地域社会により貢献できる情報発信を行うことが可能です。
自治体におけるXの活用方法
自治体が効果的にXを活用するためには、目的に応じた運用方法を理解し、戦略的に活用することが求められます。ここでは、自治体における具体的なXの活用方法について解説します。
災害時・緊急事態における情報提供
Xの即時性と拡散力を活用することで、災害時や緊急事態における自治体からの迅速な情報提供が可能となります。
例えば、地震や台風、豪雨などの自然災害時には、避難指示や避難場所の案内をXで素早く発信できます。また、災害時に発生する交通規制や行政機関の対応、救援活動の進捗状況など、リアルタイムでの情報発信が可能です。特に、Xで発信した情報は、リポスト機能によって瞬時に拡散され、住民だけでなく、周辺地域や他のメディアにも広がります。この拡散力によって、情報の受け手の範囲が広がり、より多くの住民や関係者に迅速に届くことができます。
さらに、Xはかんたんに情報を更新できるため、状況が変化するたびに新たな情報を即時に発信することが可能です。これにより、自治体は住民に対して常に最新の情報を提供することができ、混乱を最小限に抑えることができます。
地域イベントの告知と地域PR
Xは、地域イベントの告知や地域PRにも非常に効果的なツールです。自治体が開催する地域イベントや祭り、観光名所などの情報をXで発信することによって、住民や観光客に対して地域の魅力を広く伝えることができます。
例えば、地域の文化イベントや地域特産品の販売、観光地の情報などを定期的にツイートすることで、住民はもちろん、観光客にも地域の魅力をアピールすることが可能です。また、住民や参加者がXの特徴であるリポスト機能を活用して情報をシェアし、広範囲に拡散することで、より多くの人々に地域の情報を届けられます。
住民満足度の向上と信頼関係の構築
自治体がXを通じて積極的に住民とコミュニケーションを取ることは、住民の満足度向上や信頼関係の構築に寄与します。特に、住民が問題に直面した場合、迅速に対応する姿勢を見せることが、自治体の信頼性を高める要因となります。
例えば、住民からの行政への不満を表すリプライに対して、自治体が迅速かつ誠実に対応することで、住民は自分たちの意見が尊重されていると感じます。このような対応が積み重なることで、住民の信頼を得ることができ、地域社会の円滑な運営にも貢献します。
自治体におけるXの活用事例
ここでは、自治体におけるXの活用事例を紹介します。
埼玉県庁
埼玉県庁は2012年4月から公式Xアカウントを運用しており、2025年1月時点で、フォロワー数は約18万2,000人に達しています。このアカウントの投稿頻度は高く、多い日には1日5回以上投稿しています。投稿内容は、県内のトピックスをはじめ、イベントの告知や災害時等における緊急情報の発信などです。県内の情報に関するリポスト頻度も高く、フォローすることで埼玉県に関する情報を幅広く知ることができます。
⚠️大雪時、#雁坂峠 の #予防的通行止め を実施します⛄
— 埼玉県庁 (@pref_saitama) January 20, 2025
国道140号雁坂峠は大雪時に車両立ち往生の発生が懸念されます。
① #大雪警報 が発令・発令の恐れ
② 除雪作業が進まない恐れ
③ 主要道路が通行止め
を総合的に判断し、大雪時に予防的通行止めを実施します⛄https://t.co/VwwkNAPWYN pic.twitter.com/H2hRXnXWpU
上記は、大雪による通行止めに関するポストです。簡潔な文章と、画像を投稿することで、必要な情報を素早く地域住民に周知しています。また、情報を必要としているユーザーに効果的に情報伝達するために、雁坂峠や予防的通行止め、大雪警報などの関連ワードをハッシュタグとして活用しています。
京都府広報課
京都府広報課は、2011年3月から公式Xアカウントを運用しており、2025年1月時点で、フォロワー数が約10万5,000人に達しています。京都府内の災害関連情報や、観光・催しなどの最新情報を発信しています。
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— 京都府広報課 (@KyotoPrefPR) January 23, 2025
府内在住の小中学生が対象!
着付けや生け花を学べる体験教室を開催✨
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歴史を学んで着物に触れてみよう👘
好きなお花を使って自分だけの作品を作ってみよう🌺
✅日程:2/8(土)
✅場所:北野天満宮 風月殿
✅料金:無料
✅定員:各教室40名
✅申込:~2/2(日)
申込⏬https://t.co/QhQcscnmyL pic.twitter.com/lmLyPqStNv
京都府のXでは、地方創生を図ることを目的として、市民や地域団体、NPO、企業、大学等から取り組みの募集などが数多くポストされています。投稿されるポストには、絵文字や色付きのチェックマークの活用など、ユーザーが見やすくするための工夫が施されています。
もずやん@大阪府広報担当副知事
もずやん@大阪府広報担当副知事は、大阪府の公式Xアカウントです。フォロワー数は約8万1,000人で、2012年11月から運用されています。大阪府広報担当副知事の「もずやん」というキャラクターが、大阪府のお知らせや府庁の様子をつぶやくアカウントとなっており、もずやんの大阪弁の投稿内容も親しみやすいポイントになっています。
み、見ちゃった…#おはもず pic.twitter.com/yndGmSeR28
— もずやん@大阪府広報担当副知事 (@osakaprefPR) January 26, 2025
もずやんの画像が入っている投稿は毎回エンゲージが高く、フォロワーには多くのファンがいるため、上記のように朝のあいさつをするだけでも多くのコメントがついています。こうしたご当地のマスコットキャラクターを活用した投稿を行うことで、地域イベントなどの宣伝効果の向上を図っています。
自治体の広報DXにはRESERVA
自治体が広報活動を行うにあたって、おすすめなのが予約システムの導入です。予約システムの機能は、予約管理にとどまらず、決済から顧客管理、さらに集客に至るまで自動化する機能を持つシステムです。複数のツールやプラットフォームを切り替える手間は一切不要で、これにより、自治体の業務プロセスがより効率的に進められるだけでなく、利用者にとってもわかりやすく使いやすい環境が提供されます。
現在多数の予約システムがありますが、自治体が効率的にDXを促進するためには、実際に導入事例もあるRESERVAをおすすめします。RESERVAは、30万社が導入、500以上の政府機関・地方自治体も導入したという実績がある国内No.1予約システムです。予約受付をはじめ、機能は100種類を超えており、自治体の業務プロセスがより効率的に進められます。初期費用は無料で、サポート窓口の充実やヘルプの利便性が高いため、予約システムの初導入となる地方自治体にもおすすめです。
まとめ
自治体の広報活動において、X(旧Twitter)はそのリアルタイム性や拡散力を活かした強力なツールとなります。災害時の緊急情報発信や地域イベントの告知、住民との双方向のコミュニケーションなど、さまざまなシーンでの活用が可能です。Xの基本的な機能を理解し、フォロワーとのエンゲージメントを大切にすることで、自治体の広報活動をより効果的に行うことができます。特に、画像や動画を活用した視覚的な訴求や、ハッシュタグを駆使したターゲットへの情報拡散は、住民の関心を引き、地域社会の活性化につながります。
自治体の広報活動でXの活用を考えている人は、ぜひ本記事を参考にしてください。