現代社会において、自治体のデジタルトランスフォーメーション(DX)は、住民サービスの向上と効率化を実現する重要な取り組みとなっています。その中でも、自治体ホームページのユーザーエクスペリエンス(UX)改善は、住民と行政を結ぶ重要な役割を果たしています。
本記事では、住民目線でデザインする重要性に焦点を当て、具体的な改善ポイントや課題を詳しく解説します。また、実際にUX改善されている自治体のホームページ事例を交えながら、具体的な成果や取り組みについて紹介します。
自治体DXとは
自治体DXとは、行政業務や住民サービスをデジタル技術で効率化し、住民に利便性の高い仕組みを提供する取り組みです。この概念は総務省が推進する「自治体DX推進計画」に基づき、全国で広がりを見せています。
例えば、横浜市ではオンライン申請システムを導入し、住民が窓口に訪れることなく申請手続きを行えるようにしたことで、住民と職員双方の負担が軽減され、業務効率が大幅に向上しました。自治体ホームページは、こうしたDXの一環として情報提供と住民サービスの中心的役割を担っており、そのUX改善は避けて通れない課題です。
参考:総務省「自治体DXの推進」
参考:横浜市電子申請・届出システム
住民目線でのデザインの重要性
自治体ホームページの利用者は、高齢者や外国人、障がい者を含む多様な背景を持つ住民です。そのため、すべての人が快適に利用できる設計が求められます。住民目線でのデザインを導入することで、次のような効果が得られます。
・行政サービスの利用促進:必要な情報が分かりやすく提供されていることで、住民が積極的にサービスを利用するようになります。
・住民満足度の向上:見やすく使いやすいデザインは、行政に対する信頼感を高めます。
・多様性への対応:障害の有無や言語の違いにかかわらず、すべての住民が等しくアクセス可能になることで、地域全体の包括性が向上します。
自治体ホームページのUX改善ポイント
情報のわかりやすさ
自治体ホームページの利用者は、特定の情報を探しに来る場合がほとんどです。情報のわかりやすさを高めるためには、コンテンツを目的別に整理し、住民が直感的に必要な情報にアクセスできるようにすることが重要です。大阪府ではトップページに「生活・環境」「子育て・教育」「防災・危機管理」などの主要カテゴリを配置し、住民が目的の情報に迅速にアクセスできるようにしました。また、視覚的な工夫も有効です。アイコンや色分けを用いることで、文字を読むのが難しい方でも情報を直感的に理解しやすくなります。
参考:大阪府
アクセシビリティの向上
アクセシビリティの向上については、すべての住民が等しく情報にアクセスできる環境を提供することが求められます。例えば、千葉県は視覚障害者向けに音声読み上げ機能を導入し、情報へのアクセシビリティを向上させました。また、色覚多様性を考慮したデザインにより、色覚障害者も含めた住民がストレスなく情報を認識できるようにしています。
参考:千葉県
モバイル対応の最適化
モバイル対応も重要です。スマートフォン利用者が増える中、モバイル端末での利便性を向上させるためには、柔軟なデザインを採用し、画面サイズに応じてレイアウトが自動調整されるようにすることが必要です。川崎市ではタップ操作を重視したボタン設計により、モバイル利用者の使いやすさを向上させています。このように、さまざまなデバイスでの利用を考慮した設計が重要です。
参考:川崎市
多言語対応
多言語対応については、外国人住民の増加にともない、その重要性がますます高まっています。最新のAI翻訳技術を活用することで、多言語対応を迅速かつ低コストで実現できます。また、英語、中国語、韓国語など主要な言語で情報を提供することで、外国人住民の利便性が向上します。例えば、東京都では外国人観光客向けに多言語対応の観光案内ページを設置し、アクセス数が大幅に増加した事例があります。
参考:東京都
UX改善の課題と解決策
UX改善を進める上で直面する課題には、住民ニーズの把握、職員のスキル不足、導入コストの高さなどがあります。それぞれの課題に対して、現実的な解決策を講じる必要があります。
住民ニーズの把握
まず、住民ニーズを正確に把握することが重要です。住民が求める機能や情報を明らかにするためには、アンケートやヒアリング、アクセスデータの分析が有効です。
具体的手法
・アンケート調査と分析:定期的に住民アンケートを実施し、その結果を反映させたホームページの改修が求められます。アンケートの設計段階で、「どのような情報が最も必要か」「改善してほしい点は何か」といった具体的な質問を組み込むことが成功のカギです。
・住民参加型ワークショップ:地域住民と自治体職員が一緒になってアイデアを出し合う場を設けることで、住民目線の改善点を直接吸い上げることができます。これにより、住民との信頼関係構築にもつながります。
デジタルツールを活用して、住民のオンライン行動データを分析するのも効果的です。これにより、ホームページ上でよく検索されるキーワードや、離脱率が高いページを特定でき、改善の優先順位を明確にすることができます。
職員のスキルアップ
次に、職員のスキル不足は自治体の多くで課題となっています。これに対しては、職員向けの研修プログラムや外部パートナーとの協力が効果的です。
解決策
・専門的な研修プログラム:民間企業と連携した職員向けの研修によって、デジタルスキルの向上を実現します。加えて、最新のUXデザインに関する知識を提供することで、職員が自信を持って改善に取り組める環境を作ることが大切です。
・オンライン学習リソースの活用:職員が自主的に学べるeラーニングプラットフォームを導入し、デジタルスキルやデザイン思考を身につける機会を提供します。短期間で学べるモジュールを導入することで、忙しい自治体職員でも効率的に学ぶことが可能です。
・コミュニティ形成:他自治体の職員や専門家と交流する場を設けることで、知識を共有し合い、実践的なアイデアを取り入れることができます。
こうした取り組みを通じて、職員がUXデザインにおける課題意識を持ち、積極的に改善を進めることが期待されます。
導入コストと運用の効率化
自治体におけるコストの制約は、UX改善プロジェクトを進める上で大きな課題です。しかし、テクノロジーの進化を活用することで、低コストでも効果的な取り組みを実現できます。
具体的アプローチ
・クラウドサービスの活用:自治体が独自のシステムを構築するのではなく、クラウドサービスを利用することで、初期投資を抑えつつ、スケーラブルなシステムを構築することが可能です。
・オープンソースの導入:オープンソースCMSを活用して低コストでホームページを刷新し、住民の利便性を大幅に向上させることが求められます。このアプローチは、ライセンス料が不要であるため、予算の限られた自治体にも適しています。
・共同調達と自治体間連携:複数の自治体が連携してソリューションを共同調達することで、コストを分散しつつ、高品質なサービスを実現できます。さらに、他自治体の成功事例を積極的に参考にすることで、無駄な試行錯誤を省くことが可能です。
導入コスト削減に加え、運用効率を向上させるためのシステム統合や自動化ツールの活用も、長期的な費用対効果を高める重要な要素です。
UX改善の参考になる自治体のホームページ事例
東京都渋谷区
東京都渋谷区は、住民サービスの向上を目指し、ホームページのUX/UIを全面的に刷新しました。スマートフォン利用者の増加に対応し、トップページに直感的なピクトグラムを配置するなど、ユーザーが求める情報に迅速にアクセスできる設計を採用しています。
また、下層ページからの直接流入が多いことを考慮し、関連情報への導線を強化し、ユーザーの利便性を向上させました。さらに、手続き方法の多様性による混乱を防ぐため、各手続きページに申請方法を一目で理解できるアイコンやオンライン手続きへのリンクを設置しました。これらの取り組みにより、住民は自宅から24時間いつでも手続きが可能となり、窓口での待機時間や書類作成の手間が削減されています。
参考:渋谷区
参考:博報堂アイ・スタジオ「渋谷区と作る新しいデジタル行政の形①~利用者ファーストを突き詰めたオウンドメディアのUX/UI設計~」
兵庫県神戸市
神戸市は、市民サービス向上のため、公式ウェブサイトとFAQサイトのUX/UIを全面的に見直しました。これにより、市民が必要な情報に迅速かつ容易にアクセスできるようになり、ウェブサイトの利用者満足度が向上しました。さらに、情報の探しやすさが改善されたことで、総合コールセンターへの問い合わせ件数が削減され、業務効率化とコスト削減にも寄与しています。
参考:Urban Innovation Japan「脱・市役所WEBサイト!市のWEB・FAQサイトを見直し、リニューアルに向けて優れたUX/UIを実証検討したい!」
北海道帯広市
帯広市では、市民サービスの向上を目指し、公式ウェブサイトのデザインや構造を全面的に見直しました。ファーストビューでは、画面全体を活用した迫力ある写真が印象的で、訪問者の目を引きます。また、トップページではInstagramと連携し、「#撮ろう帯広」のハッシュタグを付けた投稿が表示される仕組みを導入し、市民や訪問者が帯広の魅力を共有・再発見できる場を提供しています。
さらに、サイトの構造を「市民向け」「観光客向け」「移住・ふるさと納税希望者向け」に分けることで、目的に応じた情報にスムーズにアクセス可能なデザインを実現しました。これにより、利用者の満足度向上と情報探しの効率化を両立し、ユーザーフレンドリーなウェブサイトとなっています。
参考:帯広市
自治体DXには予約システムRESERVA
自治体DX化を推進するために、予約システムの導入をおすすめします。窓口相談や施設利用の予約管理だけでなく、オンライン決済や顧客管理、集客などの自動化が可能です。複数のツールやプラットフォームを切り替える手間は一切不要のため、自治体の業務プロセスがより効率的に進められるだけでなく、利用者にとっても一元的で使いやすい環境が提供されます。
現在、多数の予約システムがありますが、なかでも実際に自治体への導入事例のあるRESERVA(レゼルバ)を推奨します。RESERVAは全国30万社という導入数を誇る、国内シェア率No.1の予約システムです。政府機関・自治体では500以上のプロジェクトで活用されており、人口20万人を超える規模の自治体のほか、人口5万人以下の小規模な市町村でも導入実績があります。シンプルなデザイン性で、予約受付をする自治体も、予約する住民にも使いやすいシステムとなっています。初期費用は無料でかんたんに設定できるため、予約システムの初導入となる自治体にもおすすめです。
まとめ
自治体ホームページのUX改善は、住民サービス向上に直結する重要な取り組みです。情報のわかりやすさ、アクセシビリティ、モバイル対応、多言語対応といった具体的な施策を実施することで、住民の満足度と行政サービスの利用率を高めることができます。同時に、住民ニーズの把握や職員スキルの向上といった課題を解決することで、持続可能な改善を実現できます。
また、予約システムを導入することで、自治体DXを効率的に推進できることも示しました。DXを推進するにあたって課題を抱えている自治体の職員は、ぜひ本記事を参考にしてください。
RESERVA lgでは、今後も自治体DXに関する学びを取り上げていきます。