自治体のDX推進|成功の鍵を握るDX人材獲得に向けて

自治体のDX推進|成功の鍵を握るDX人材獲得に向けて

更新

デジタルトランスフォーメーション(以下、DXとする)は、デジタル技術によって社会や組織を根本から変革し、新たな価値を創出するプロセスです。2024年現在、DXは社会のあらゆる分野で注目を集めています。特に、地方自治体においてDXは、行政サービスの質の向上と効率化、さらには地域経済の活性化を目指す重要な取り組みであると位置付けられています。しかし、DXを推進するには専門知識・技術を持つ人材が不可欠であり、その確保と育成は自治体にとって大きな課題です。

本記事では、DX人材を確保し、成功に導くために自治体が直面する課題と、必要とされる人材の特徴について紹介します。それにあたって、経済産業省が2022年に発表した「デジタルスキル標準」の内容に基づいて解説します。

DXについて

DXとは

DXは、デジタル技術の活用を通じて社会や組織の根本的な変革を目指す概念です。

2018年に経済産業省が「DX推進ガイドライン」を発表したことを契機として、この概念は広く認知されるようになりました。このガイドラインでは、DXの目的はデジタル技術とデータを活用してビジネスモデルを変革し、市場の変化に迅速に対応することで企業の競争優位性を確立することだとされています。また、社会システムと情報技術の融合によって、人々の生活の質を向上させ、新たな価値を創出することも重要視されています。

※DX推進ガイドラインは2024年現在、「デジタルガバナンス・コード」に統合されています。

自治体DXとは

自治体DXは、デジタル技術を駆使して行政サービスの質を高め、効率化を図る取り組みです。具体例としては、住民サービスのオンライン化などが挙げられます。これにより、住民は時間や場所に縛られることなくサービスを利用できるうえに、自治体は業務効率化によって限られたリソースを適切に活用可能です。さらに、デジタル技術の導入は新たな公共サービスの開発を促し、地域経済の活性化にも寄与します。

このように、自治体DXは、住民の生活の向上、行政サービスの効率化、地域経済の持続可能な発展のために極めて重要です。

DX人材の重要性

自治体DXを具体的に推進するためには、専門知識を持つ人材が必要です。これには、新しいテクノロジーの導入、データ管理、システムの統合といった技術的なスキルだけでなく、変革をリードするリーダーシップやプロジェクト管理能力も含まれます。

そのため、自治体は専門性を持った人材の確保・育成に投資することが重要です。このような人材の獲得により、自治体は迅速で効果的なデジタル変革を実現し、持続可能な発展と住民サービスの向上を図ることができます。

DX人材獲得にまつわる課題

根強いアナログ文化

自治体においてアナログ文化が根強く残っていることは、DX人材獲得の大きな障壁となっています。職員が紙媒体での業務に慣れ親しんでおり、デジタル化への抵抗感を持っているため、自治体内でDXを推進する活動が行われず、DX人材も積極的に採用されません。

自治体は、早急にDX人材を獲得し、業務プロセスのデジタル化を進める必要がありますが、そのためには職員の価値観を大きく変革する必要があります。

予算不足

DX人材はその専門性と市場価値の高さから、民間企業から高い報酬をもって求められています。自治体がこれらの人材を惹きつけ、獲得するためには、魅力的な給与やキャリアパスを提供する必要がありますが、限られた予算内でこれを実現することは難しいです。特に、過疎化が進む自治体では税収減少により財政状況が厳しいため、DX人材獲得に十分な予算を割り当てられません。

役割が明確化できていない

自治体のDX人材獲得における重大な課題の1つは、外部デジタル人材に求める役割が自治体内部でクリアになっていないことです。総務省が2022年に発表した『自治体DX推進のためのデジタル人材の確保の取組』「市区町村における外部デジタル人材の活用に係る検討状況」において、外部デジタル人材の活用を検討中である自治体が最も多く挙げていた課題が、「外部デジタル人材に求める役割やスキルを整理・明確にすることができない」であることがわかりました。

さらに、「効果的な募集方法がわからない」という課題もありました。外部デジタル人材の必要性を理解している自治体はあるものの、具体的な活用方法や役割定義に関するノウハウが不足しているため、その活用が十分に進んでいないのが現状です。

獲得すべきDX人材

このような自治体がDX人材を獲得できない状況を改善するために、経済産業省は2022年に「デジタルスキル標準」を発表しました。これは、全国の自治体や企業に向けた人材確保や育成の指針であり、DX推進に必要な人材類型を明確に定義しています。

このガイドラインにより、自治体はDX実現のために必要な人材の特性を理解し、具体的な育成プランや採用戦略を立てることが可能になりました。以下にて、ガイドラインに記載された人材類型を詳しく解説します。

ビジネスアーキテクト

ビジネスアーキテクトは、DXの推進において、新規事業の開発や既存事業の高度化、そして自治体内業務の効率化を通じて業務の変革をリードする重要な役割を担います。彼らは事業の目的設定から遂行まで、一貫してプロジェクトの推進を担当し、設定した目的の実現に責任を持ちます。この役割を果たすには、ビジネスモデルの設計、技術・ツールの選定、仮説検証の実施、導入後の効果検証の実施など、幅広いスキルと高い実践力が求められます。

また、ビジネスアーキテクトは、関係者の協働関係を構築する能力も不可欠です。彼らは、チームの組成、タスクの適切な割り振り、合意形成の促進など、関係者のコーディネートにおいて中心的な役割を果たし、目的実現に向けて全体を導きます。

デザイナー

デザイナーは、自治体と住民、両者のニーズを総合的に把握し、製品やサービスの方針や開発プロセスを定める責任を持ちます。この役割を果たすためには、単に美しい外観を形作るだけでなく、住民の視点から事業を遂行する能力が必須です。

デザイナーは、特に個別のデータやデジタル技術を活用した取り組みにおいて重要になります。彼らは、住民との接点をデザインし、倫理的観点を踏まえた製品・サービス提供のポイントを考慮しながら、ユーザビリティやアクセシビリティを確保します。また、製品・サービスの構想から実装、仮説検証、導入後の効果検証まで、あらゆる場面でデザイナーの専門知識と視点が求められます。

データサイエンティスト

データサイエンティストは、自治体業務において、データの収集から分析、運用までを一手に担います。その際、単にデータを扱うだけでなく、事業戦略の策定からデータ基盤の設計、運用、さらには現場でのデータ活用方法の教育に至るまで、幅広い業務を担います。

DX推進におけるデータ活用は、他のDX人材との連携が必須です。そのため、データサイエンティストは、ビジネスアーキテクト、デザイナー、ソフトウェアエンジニア、サイバーセキュリティなど、他の専門家と協働しながら、データを基にした戦略的な意思決定を行います。彼らは、データ分析の専門知識に加え、ビジネス、技術、セキュリティなど多方面にわたる知識とスキルを要求されます。

サイバーセキュリティ

サイバーセキュリティを担当するDX人材は、自治体のデジタル環境内で発生するリスクに対する防衛線を構築します。セキュリティ対策はDXの基盤であり、彼らが製品やサービスの安全性を保証することで、自治体のデジタル戦略を支える重要な役割を果たします。

彼らの役割は、サイバー攻撃に対する防御に加えて、社会インフラの停止や内部不正、プライバシー侵害などのリスクへの対処も含まれます。他のDX人材と連携し、DXに伴うデジタル環境のリスクから組織を守ることが重要です。そのためには、セキュリティマネジメント、インシデント対応、プライバシー保護などのスキルが求められます。

ソフトウェアエンジニア

ソフトウェアエンジニアは、デジタル技術を駆使し、新たなサービスや製品の設計、実装、そして運用を行う人材です。彼らは、創造的なプロセスから製品の提供まで、DXの各段階で重要な役割を果たします。

彼らは、高度なIT技術とデジタルスキルを利用して組織の競争力を向上させることが期待されています。また、他のチームメンバーとの協力を通じて、期待を超えるソリューションを提供することが求められます。さらに、不確定な市場や技術の変化に迅速に対応し、新たな価値を生み出す能力も重要です。

自治体職員が身に着けるべき姿勢

「デジタルスキル標準」は、DX推進に必要な人材類型だけではなく、既存の自治体職員に向けた指針も含んでいます。これに基づいた行動を行うことで、職員は外部のDX人材をスムーズに受け入れ、活用できるようになります。

また、DX投資に十分な予算が割り当てられない自治体においても、この指針に基づいて行動することで、コストをかけずに内部からDXを推進することができます。以下にてガイドラインに記載された、職員が身につけるべき姿勢を紹介します。

マインド・スタンス

自治体職員がDXを推進する上で、それにふさわしいマインド・スタンスを身に着けることは非常に重要です。これは具体的に、変化への適応、事実に基づく判断、常識にとらわれない発想、反復的なアプローチ、コラボレーション、柔軟な意思決定、そして顧客・ユーザーへの共感が挙げられます。

1.変化への適応

変化への適応は、職員が変化する環境や技術の進歩に対し、柔軟かつ積極的に対応する能力を意味します。具体的には、既存の価値観や方法に固執することなく、新たな学びを受け入れ、自己の知識とスキルを絶えず更新することが挙げられます。

2.事実に基づく判断

事実に基づく判断の能力は、感情や個人的な経験に頼るのではなく、データや客観的な情報を基にして意思決定を行うことです。これにより、バイアスが減少し、より効果的で正確な決定が可能になります。

3.常識にとらわれない発想

常識にとらわれない発想は、創造的かつ革新的なアイデアを生み出すことを促進します。これは、新しい技術やアプローチが常に求められるDXでは特に重要になります。

4.反復的なアプローチ

反復的なアプローチは、小さなステップでの試行錯誤を繰り返し、失敗を恐れずに学び、改善を進めるプロセスです。これにより、リスクが最小限に抑えられ、イノベーションが促進します。

5.コラボレーション

コラボレーションは、異なる背景や専門知識を持つ人々と効果的に協力することで、より包括的で多面的な解決策を生み出す能力を指します。これには、他者の視点を尊重し、共に目標に向かって努力する姿勢が必要です。

6.柔軟な意思決定

柔軟な意思決定は、予測不能な状況や複雑な問題に直面した際に、迅速かつ効果的に対応する能力です。これには、状況を正確に評価し、必要に応じて計画を調整する姿勢が求められます。

7.住民・ユーザーへの共感

住民・ユーザーへの共感は、彼らのニーズや課題を深く理解し、それに基づいて行動する能力です。これは、サービスや製品が実際にユーザーに価値を提供し、満足をもたらすために不可欠です。

2W1H

DXに必要なマインドスタンスを身につけた上で、自治体職員はDXの背景、DXで活用されるデータ・技術、またその活用方法を学ばなければなりません。「デジタルスキル標準」では、それぞれを「Why」「What」「How」の項目で解説しています。

1.Why

自治体職員がDXを推進するにあたり、その根底にある「Why」、つまりなぜDXが必要なのかを深く理解することが重要です。絶えず変化する世界において、社会課題を解決するためにはデータやデジタル技術の活用が欠かせません。自治体職員として、日々目の前の業務に追われる中でも、世界的な変化の波に目を向け、それが地域社会にどのように影響を与えるかを把握することが求められます。

また、職員は顧客価値の変化にも注意しなければなりません。デジタル技術の発展により、住民のニーズは多様化し、パーソナライズされたサービスへの期待は高まっています。この変化を理解し、住民一人ひとりの声に耳を傾けることが、本当に価値あるサービスを提供するための鍵となります。

さらに、データとデジタル技術の進展は、従来の業種や国境を越えた新しい取り組みを可能にしています。この変化を捉え、適切な対策や戦略を立てることで、自治体は持続的な活力を保ち、住民に大きな価値を提供することができます。

2.What

自治体職員がDX推進における「What」、つまり何を扱うべきかを理解するためには、データの多様な種類に目を向けなければなりません。「データ」という言葉は、数値、文字、画像、音声など多岐にわたる情報を包含します。これらがいかに蓄積され、分析され、私たちの社会で役立てられているのかを理解することは、DXを進める上で基礎となります。

また、データを読み解き、適切に説明する能力も必須です。これには、データの分析手法や結果の読み取り方の理解、さらには分析結果を目的や受け手に応じて適切に伝える技術が含まれます。

AIやクラウド技術の理解も大切です。AIの生まれた背景、仕組み、そして活用の可能性を把握すること、またクラウド技術の基本やサービス形態の違いを理解することは、DXを推進するために不可欠です。

3.How

自治体職員がDXを成功させるための「How」、つまりデジタル技術の活用方法を理解するためには、データとデジタル技術の活用事例に触れ、これらがどのように日々の業務を変革できるかを想像することが必要です。

また、データやデジタル技術を安全に利用するためには、セキュリティに関する深い理解が不可欠です。情報を守るための仕組みを学び、個々の対策をとることで、不安なく技術を活用することができます。

自治体DXにはRESERVA

画像引用元:RESERVA公式サイト

自治体がDXを推進するにあたって、おすすめなのが予約システムの導入です。予約システムの機能は、予約管理にとどまらず、決済から顧客管理、さらに集客に至るまで自動化する機能を持つシステムです。複数のツールやプラットフォームを切り替える手間は一切不要で、これにより、自治体の業務プロセスがより効率的に進められるだけでなく、利用者にとっても一元的で使いやすい環境が提供されます。

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まとめ

DX人材は、自治体がDXを推進して持続可能な社会を形成するうえで不可欠です。この記事では、DX人材獲得にまつわる課題、獲得すべきDX人材、自治体職員がDXに向けて身につけるべき姿勢について紹介しました。また、予約システムを導入することで、DXを効率的に推進できることも示しました。DXを推進するにあたって課題を抱えている自治体の職員は、ぜひ本記事を参考にしてください。

RESERVA.lgでは、今後も自治体DXに関する学び、挑戦を取り上げていきます。

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