医療DXは自治体でどう機能するか?各地域の取り組みから見る進歩

医療DXは自治体でどう機能するか?各地域の取り組みから見る進歩

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ペーパーレス化やオンライン予約、ビッグデータの活用など、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)は現在の医療業界が抱える課題を解決すると期待されています。一方で、「オンラインの活用はまだ地域に浸透していない」「高齢者が多い地域で、患者から受け入れられるかわからない」と、地方ならではの不安を抱える医療機関も少なくないでしょう。しかし、近年では地方自治体での医療DX化が進み、成功事例も多数寄せられてきています。

今回の記事では、医療DXの概要と今後の動向、自治体での成功事例について解説します。

※本記事は現役の医療従事者が監修しております。

医療DXとは

まず医療DXとは、病院・クリニック、薬局、訪問看護ステーションなどの医療業界におけるDXのことです。具体的には、

  • ペーパーレス化:カルテや問診表などの紙データをデジタル化する
  • オンライン予約/問診:診察の受付や問診表の記載をデジタル化する
  • オンライン診療:直接医療機関に足を運ばず、パソコンやスマートフォンなどの端末から診療を受ける
  • ビッグデータの活用:医療機関が保有する医療情報をビッグデータで活用・分析する

などの手段があります。

医療DXのメリット

医療DXは従来の医療機関の体制とは異なる部分が多くなりますが、適切に活用することで次のようなメリットをもたらします。

通常業務の負担軽減、効率化

従来多用されてきたカルテや問診表などの紙データは、管理者にとって負担が大きいことは否めませんでした。そこでペーパーレス化の推進により、文書管理にかかる時間的コストを大幅に軽減できます。

また医療現場は、診療報酬明細書の作成や医療物品の在庫管理、経理など、医療行為以外にも多くの業務が必要です。そのなかで従来のようなデータに頼らない業務を続けていると、いずれは医療行為の質も下げかねないでしょう。ビッグデータやデジタルツールに切り替えることで、医療業務の負担が削減されます。

医療の質の向上

業務の負担が軽減されると、その分のリソースを医療に注げるようになります。その結果、医療の質の向上や患者の満足度につながり、ひいては医療経営の改善も期待できるでしょう。

またオンライン診療は、非対面や遠くからの受診を可能とするだけでなく、院内感染を防ぐのにも役立ちます。さらには医師が不足しやすい地域に住む患者でも、専門的かつレベルの高い医療が受けられます。

自治体における医療DXの流れ

医療DXは医療機関や医療従事者だけでなく、医療や患者の満足度の向上にも役立つと、イメージができたでしょうか。そのような背景から、国では医療DXに向けた取り組みが段々と進められています。

実際に2022年、自由民主党政務調査会は「医療DX令和ビジョン2030」にて、

  • 全国医療情報プラットフォームの創設
  • 電子カルテ情報の標準化
  • 診療報酬改定DX

の3つの施策を進めると提言しました。いよいよ医療DXが全国的に普及し、医療現場を大きく変えることが予想されます。

参考サイト:自由民主党政務調査会「医療DX令和ビジョン2030
参考サイト:medicom「5分でわかる『医療DX令和ビジョン2030』

自治体による医療DXへの反応

医療業界と患者の両方にメリットをもたらし、また国も力を上げている医療DXには、決してデメリットがないわけではありません。特に以下のようなデメリットに対し、自治体から躊躇や懸念の声があがっています。

デメリット①セキュリティの難しさ

データのデジタル化により、個人情報や重要な情報が漏洩する、ハッキングに遭うなどのリスクなど、紙データとは異なる問題が生じます。ITリテラシーやデジタルへの対応が得意な人材が不足すると、なおさらそのリスクは高まるでしょう。

デメリット②ITリテラシー・デジタル格差

ペーパーレス化やビッグデータ化などの変化には相応のITリテラシーやデジタル技術が不可欠です。現時点で対応可能な人材が不足している場合には、新たに人材の確保や教育が必要となり、導入までに新たなコストがかかるとも考えられます。

また高齢者をはじめデジタル技術が苦手な患者は、オンライン予約やオンライン診療などに戸惑う可能性もあります。普及によって医療業界に多くのメリットが期待できると同時に、導入から運用までには若干の問題が生じるでしょう。

自治体における医療DX導入事例

メリットと同時にデメリットも注目される医療DXは、地方での普及が遅いようにも捉えられていますが、実際には各地域で着実に進められています。2020年の新型コロナウイルス感染症によって院内感染が問題視され、オンライン診療への需要が強まったことも、背景の一部となりました。

ここから自治体の医療DXについて、具体例を挙げていきます。

医療、介護などの統合データの分析事業を推進(京都市)

京都市では2021年より、医療や介護などの統合データの活用・分析事業の推進がなされています。翌年からは民間企業や京都大学からの協力を受け、肺がんや生活習慣病の共同研究が始められました。

このようにして進められた事業や研究は、疾患や症状についての理解度をさらに深め、予防や治療、介護の実態に近づくために役立っています。医療レセプトや健康診断結果、介護レセプトなどのデータ分析も行われ、幅広い年齢層に向けた医療DXにつながっています。

参考サイト:京都市情報館「医療、介護等の統合データ分析事業について
参考サイト:デジタル行政「京都市、医療・介護等の統合データを活用した分析事業を推進

モバイルクリニック事業(長野県伊那市)

画像引用元:伊那市「モバイルクリニック

高齢化による交通弱者の増加と医師不足が顕著であった長野県伊那市では、診察のための専用車「INAヘルスモビリティ」を始めました。血圧毛や心電図モニターが搭載された専用車で患者の自宅を訪問し車に同乗する看護師のサポートのもと、診察室で待機する医師とビデオ通話で診察を行います。民間企業でも例を見ない試みとして、広く注目されました。

患者からも、「移動や待ち時間の大変さがなくなった」「長距離の通院と長い待ち時間、それで数分の診察で終わる、ストレスが出なくなった」と喜ばれています。

参考サイト:伊那市「モバイルクリニック
参考サイト:デジタル行政「まちを走る診療車、医療を変える-長野県伊那市

新型コロナウイルスに関する心のケア・無料オンライン相談(埼玉県)

画像引用元: 埼玉県幸手市「妊産婦心のケア~無料オンライン相談~

埼玉県産婦人科医会では2020年5月から2021年9月末まで、新型コロナウイルスに罹患または可能性のある妊産婦に対し、助産師や医師による無料オンライン相談を実施しました。妊産婦が新型コロナウイルスをとりわけ不安に感じると考え、母と子のメンタルヘルスケアを専門とする医療従事者が対応したのが大きな特徴です。本来の実施期間を大幅に延長したほどの満足度を残しています。

参考サイト:埼玉県幸手市「妊産婦心のケア~無料オンライン相談~
参考サイト:Medstar「医療DXを活用した自治体の動き

オンライン診療実証実験(広島県安芸太田町)

画像引用元: ひろしまサンドボックス「僻地医療を守る~安芸太田病院のDX改革

広島県安芸太田町は、町の中核病院と集会所で連携を取り、オンライン診療『D to P with N(Doctor to Patients with Nurses)』で実証実験を行いました。看護師や医療事務員の付き添いで病院にいる医師とビデオ通話を行う仕組みとなります。健康保険証の確認や医師・患者同士の会話など、滞りなく進むことが明らかになりました。

参考サイト:ひろしまサンドボックス公式サイト
参考サイト:ひろしまサンドボックス「僻地医療を守る~安芸太田病院のDX改革

Smart119の実施(山梨県)

山梨県主催の「TRY!YAMANASHI!実証実験サポート事業」のライフサイエンス部門は、千葉大学発医療スタートアップ企業の株式会社Smart119が手掛ける救急医療サービス「Smart119」の導入を認定しました。

Smart119では、AIやICTを使い、住民や消防命令センター、救急隊などとデータを共有できます。現場での救出が効率化されるだけでなく、過去のデータからAIで改善点を明確にできるため、今後の救急医療への貢献度が期待されます。

参考サイト:やまなし未来創造インフォメーションサイト「TRY!YAMANASHI!実証実験サポート事業
参考サイト:デジタル行政「山梨県、救急医療情報サービス『Smart119』の実証実験を開始

自治体DXにはRESERVA

画像引用元:RESERVA公式サイト

自治体がDXを推進するにあたって、おすすめなのが予約システムの導入です。予約システムの機能は、予約管理にとどまらず、決済から顧客管理、さらに集客に至るまで自動化する機能を持つシステムです。複数のツールやプラットフォームを切り替える手間は一切不要で、これにより、自治体の業務プロセスがより効率的に進められるだけでなく、利用者にとっても一元的で使いやすい環境が提供されます。

現在多数の予約システムがありますが、自治体が効率的にDXを促進するためには、実際に導入事例もあるRESERVAを推奨します。RESERVAは、26万社が導入、500以上の政府機関・地方自治体も導入したという実績がある国内No.1予約システムです。予約受付をはじめ、機能は100種類を超えており、自治体の業務プロセスがより効率的に進められます。初期費用は無料で、サポート窓口の充実やヘルプの利便性が高いため、予約システムの初導入となる地方自治体にもおすすめです。

まとめ

上記の通り、医療DXは今後の医療業界には欠かせない存在となり、いずれは全国レベルで普及するでしょう。過疎地や高齢者の多い地域では浸透が難しいようにも思われますが、地方や人口の少ない自治体でも取り組みが進んでいることを踏まえると、試行錯誤を繰り返しながらも良い未来が見えてきています。医療従事者と業界の負担軽減、ならびに医療の質の向上のためにも、今後に期待が高まります。

RESERVA.lgでは、今後も自治体DXに関する取り組み事例を取り上げていきます。

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