近年、さまざまな分野においてDX(Digital Transformation:デジタルトランスフォーメーション)化が推進され、課題の解決が図られています。市役所におけるDXの第一歩は、ペーパーレス化です。ペーパーレス化が進んでいない状態では、DXを推進するための次のステップへと進めません。
本記事では、ペーパーレス化の現状とメリット、進める際のポイントを明らかにして、市役所での成功事例について解説します。
政府が推進する自治体DX
自治体DXとは
DXとは、デジタル技術を活用してサービスやビジネスそのものに変革を起こすプロセスを指します。
自治体DXは、自治体規模でDXによる変革を目指す取り組みです。例としては、市役所での住民票の発行や公共サービスの申請といった手続きのオンライン化などが挙げられます。
DXの目標は、単なる業務効率化に限りません。自治体DXでは、住民など利用者の視点に立ち、いかに自治体として利便性を高めるか、満足度を高められるかを重要視されています。 総務省は自治体DXの目標を、「自らが担う行政サービスについて、デジタル技術やデータを活用して、住民の利便性を向上させるとともに、デジタル技術やAI等の活用により業務効率化を図り、人的資源を行政サービスの更なる向上に繋げていく」と定めています。
市役所DXが推進される背景
自治体DXのひとつとして、市役所のDXが積極的に推進される背景には、地方自治体が将来的に直面すると考えられる問題が起因しています。
地方自治体は現在、高齢化や労働人口の減少、税収の低減による財政難への対応に追われています。しかし、総務省が発表した「地方公共団体の総職員数の推移」によると、1994年に328万2,000人であった地方公共団体の総職員数は、2022年には280万4,000人と、28年間で47万8,000人も減少しました。対応するべき業務が累積している状況下で、職員数が減少しているため、地方自治体にかかる負担の増大が予想されます。
こうした状況の改善策として開始された取り組みが、市役所のDX推進です。デジタル技術を市役所運営に取り入れることで、負担を軽減できます。
市役所DXの第一歩であるペーパーレス化
ペーパーレス化は市役所におけるDX推進の第一歩となる取り組みです。ペーパーレス化が進んでいない状態では、 DXを推進することが困難となります。
東京都が公開した「DX推進に向けた5つのレス徹底方針」では、東京都庁のデジタルトランスフォーメーションの推進に向け、5つのレスの取組を徹底すべきだと示しています。
上記の図から読み取れるように、ペーパーレスは他の4つのレスすべてと相関性があり、DX推進の根幹をなしています。そのため、市役所のDXを推進するには、まずペーパーレスから取り組むことが重要です。
ペーパーレス化の現状
総務省の「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画【第2.3版】」において、2024年における自治体DXの取り組み内容に関するアンケート結果が発表されています。
都道府県におけるDXの取り組みの現状は以下の通りです。
ペーパーレス化の推進をしている都道府県は、アンケートに回答した42都道府県の92.9%にあたる39都道府県に及びました。また、市区町村におけるDXの取り組みの現状は以下の通りです。
ペーパーレス化の推進を行っている自治体は、511市区町村の75.7%にあたる387市区町村でした。以上の結果から市区町村のペーパーレス化が、都道府県に比べて遅れていることが分かります。前述の通り、市役所のDXを推進させるにはまずペーパーレス化から実施することが重要なため、早急な取り組みが求められます。
ペーパーレス化によるメリット
自治体がペーパーレス化を進めることで、さまざまなメリットが見込まれます。
業務効率化
ペーパーレス化を導入することで、紙の資料は電子文書となるため、手書きの作業や資料を探す際に要していた手間は削減できます。また、電子形式の文書は、紙の文書と比較して修正が容易であり、瞬時に共有することが可能です。そのため、自治体内のコミュニケーションを改善し、プロジェクトの進行を加速させます。
コスト削減
市役所がペーパーレス化に取り組むメリットのひとつに、コスト削減が挙げられます。書類や資料を紙で管理している場合、以下のように多くのコストが発生します。
・印刷代
・印刷機器のメンテナンス費用
・文書の郵送
・運搬費用
・文書廃棄費用(シュレッダー、廃棄業者の費用など)
紙の文書を電子化することによって、各項目のコストを軽減できます。また、文書保管のためのスペースも縮小できるため、場合によっては事務所の賃料も抑えられます。
情報漏えい・紛失のリスク軽減
ペーパーレス化は、市役所内での情報漏えいや書類などの紛失のリスクを軽減できます。クラウド管理に切り替えることで権限設定やアクセス制限を掛けることができ、セキュリティの強化につなげられます。 一方で物理的な紙を使用している場合、紛失する可能性があります。加えて、紙の文章であると閲覧権限をかけられないため誰かに見られる危険性があり、機密情報の持ち出しによる情報漏洩のリスクも無視できません。
ペーパーレス化を進める際のポイント
ペーパーレス化を進める際には、以下のポイントに気を付けることが大切です。
ペーパーレス化についての理解
ペーパーレス化を成功させるためには、市役所職員のペーパーレス化に対する深い理解が不可欠です。ペーパーレス化のメリットのみならず、DXの重要性や環境負荷削減への貢献など、多角的な理解が求められます。市役所職員は、関係者間での勉強会の開催や、国が提供している資料を活用することで、ペーパーレス化への理解を促進できます。
部分的なペーパーレス化の開始
初めから全面的にペーパーレス化を進めるのではなく、まずは部署ごとや業務の一部から取り組むことが大切です。いきなり市役所内のすべての書類をペーパーレス化しようとすると、職員の負担が大きく、混乱を招いてしまう恐れがあります。成功例や課題を把握しながら徐々に範囲を広げていくことで、組織全体でのペーパーレス化をスムーズに進められます。
自身の市役所に合ったITツール・システムの導入
ペーパーレス化を進める上で最も重要なのが、取り組みに適したITツールやシステムを選ぶことです。各市役所の規模や業務内容、予算などに応じた、最適なソリューションの選定が求められます。一般公開されているシステムの活用や、専門企業にカスタマイズを依頼する場合もあり、選定過程での慎重な検討が成功の鍵となります。
ペーパーレス化に有用なシステムツールの種類
ペーパーレス化に有用なシステムツールは数多く存在します。具体的に以下のように分けられます。
【基本業務を効率化するシステム】
・ビジネスチャット
・ナレッジ共有ツール
・オンラインストレージ
・Web会議ツール
・勤怠管理システム
【人的ミスの防止に効果的なシステム】
・文書管理システム
・電子契約システム
・請求書受領システム
【煩雑な作業を効率化するシステム】
・ワークフローシステム
・経費精算システム
・労務管理システム
・予約システム
自治体におけるペーパーレス化の成功事例
青森県 弘前市
弘前市役所では、2016年よりペーパーレス会議が導入されています。ペーパーレス会議とは、文書や資料をデジタル化し、タブレットやパソコンなどで共有して実施する会議です。
導入後の成果として、1万4,000枚の紙資料、 紙代などの14万2,000円の経費が削減されました。その上、プリントアウトや資料集約に要していた時間も3時間短縮されています。また、効果的に色彩が使われ図表などが配置された明解な資料が作られるようになり、会議の生産性向上にもつなげられています。
参考記事:株式会社MetaMoji「幹部会議のペーパーレス化を実現して紙の使用量とコストを大幅に削減、情報共有やプレゼンにも活用」
長野県 長野市
長野市では、各種業務のシステム化やデータベース化を以前から取り組んでいましたが、当初期待していたほどのペーパーレス化は実現できていませんでした。そこで、準備に多大な手間とコストがかかる会議資料に目をつけて取り組んだ施策が、ペーパーレス会議システムの導入です。政策会議と部長会議を実証実験として、システムの導入を段階的に行った結果、約14万枚の紙と約300万円の印刷費用の削減に成功しました。
また、ペーパーレス化を実施前は、1回あたり約2時間かかっていた会議の準備時間も、導入後には平均して20分以内に短縮でき、約6分の1の時間にとなりました。
市役所のDXにはRESERVA
市役所がDXを推進するにあたって、おすすめなのが予約システムの導入です。予約システムの機能は、予約管理にとどまらず、決済から顧客管理、さらに集客に至るまで自動化する機能を持つシステムです。複数のツールやプラットフォームを切り替える手間は一切不要で、これにより、市役所の業務プロセスがより効率的に進められるだけでなく、利用者にとっても一元的で使いやすい環境が提供されます。
現在多数の予約システムがありますが、市役所が効率的にDXを促進するためには、実際に導入事例もあるRESERVAを推奨します。RESERVAは、30万社が導入、500以上の政府機関・地方自治体も導入したという実績がある国内No.1予約システムです。予約受付をはじめ、機能は100種類を超えており、市役所の業務プロセスがより効率的に進められます。初期費用は無料で、サポート窓口の充実やヘルプの利便性が高いため、予約システムの初導入となる市役所にもおすすめです。
まとめ
今回は、ペーパーレス化の現状とメリット、進める際のポイントを明らかにして、市役所での成功事例について解説しました。ペーパーレス化を進めない限り、市役所のさらなるDX推進にはつながりません。導入する際のポイントを把握し、成功事例を参考にすることで、市役所の効果的なペーパーレス化を実現できます。
RESERVA.lgでは、今後も自治体のDXに関する学び、挑戦を取り上げていきます。