日本の自治体は、新型コロナウイルス感染症をはじめとする社会情勢の変化に対応すべく、平穏で安心な民生サービスの提供に努めています。そのような中、デジタル化を加速させる手段として、「テレワーク」の導入が受け入れられています。テレワークは、通常業務の効率化に貢献し、不要な移動や時間の削減を防ぐだけではなく、災害時の業務継続、地域活性化にも大きな影響を与えます。
本記事では、テレワーク導入による自治体DXの目指す方向性、そのメリットと抱える課題、そして実際にテレワークを推進した自治体の事例を通じて、その具体的な成果や取り組みについて紹介します。
自治体におけるテレワーク導入の現状
全国の導入率
総務省の調査「地方公共団体におけるテレワークの取組状況調査結果」によると、地方公共団体におけるテレワークの導入状況は、令和5(2023)年 10 月1日現在で1,102 団体(61.6%)で導入済みとなっており、都道府県及び指定都市では全団体で導入されている一方、市区町村においては、1,035 団体(60.1%)と、前年(1,083 団体(62.9%))から減少しており、約4割の団体においては未導入となっています。
テレワーク導入は、新型コロナウイルス感染症の拡大を契機に柔軟な働き方の重要性が再認識され、導入が加速したことが主要因とされています。しかし、導入率には地域差が大きく、都市部と地方自治体での格差が目立つのが現状です。
導入が進んでいる/遅れている地域とその要因
テレワークの導入が進んでいる自治体では、ITインフラの整備や具体的な運用ルールの策定が成功の鍵となっています。例えば、働き方改革の一環としてテレワークを推進し、クラウド型システムやオンライン会議ツールを活用して業務効率を高め、住民サービスの質を落とさずに成果を上げている自治体があります。
一方、導入が遅れている自治体では、技術的な課題や文化的な要因が共通して見られます。ITインフラの整備にかかるコストや、セキュリティ対策の不足が障壁となることが多いでしょう。また、対面業務を重視する文化や、テレワークに対する職員の理解不足も導入の遅れを招く要因です。さらに、ネットワーク環境の地域間格差が解消されていない点も課題として挙げられます。
テレワーク導入のメリット
働き方改革の推進
テレワークは働き方改革を後押しし、職員のワークライフバランスを向上させます。例えば、育児や介護をしながら働く職員にとって、テレワークは柔軟な働き方を実現する手段となります。通常、育児や介護中の職員は時間的制約が多く、出勤が難しいケースがありますが、自宅から業務を遂行できる環境が整えば、その負担は大きく軽減されるでしょう。さらに、長時間労働の是正にもつながり、健康的で持続可能な働き方が推進されます。また、女性職員のキャリア継続にも大きな効果を上げています。
業務効率化と生産性の向上
テレワークの導入によって、デジタルツールを活用した効率的な業務遂行が可能です。例えば、クラウドシステムやオンライン会議ツールを用いることで、情報共有や意思決定のスピードが飛躍的に向上します。このように、従来は物理的な移動や書類提出に時間がかかっていた業務が、デジタル化された業務フローを活用すれば、時間とコストの削減につながります。
テレワークは、災害や緊急事態が発生した際の業務継続体制の強化にも有用です。日本は地震や台風など自然災害が多い国であり、自治体職員が現地で業務を行えなくなるリスクが常に存在します。しかし、テレワーク環境が整っていれば、職員は自宅や遠隔地からでも業務を継続でき、災害時であっても、住民へのサービス提供が途切れることなく維持されます。
地域活性化への寄与
テレワークの導入は、地域経済の活性化にもつながります。例えば、都市部に一極集中していた雇用が地方にも分散することで、地元での雇用創出や移住促進が期待されます。また、地方自治体がテレワーク環境を整備すれば、リモートワークを希望する企業や個人が地域に移住しやすくなります。
テレワークを活用した移住支援策の導入は、都市部からの移住者が地域の人口減少対策に貢献しています。これにより、地域経済の活性化と共に、自治体の持続可能な発展が期待されています。
テレワーク導入における課題
ITインフラの整備
テレワーク導入には、安定したITインフラの整備が不可欠です。特に、セキュリティ対策やシステム導入にかかるコストが自治体にとって大きな課題となります。ネットワーク環境の地域間格差も問題視されており、山間部や過疎地域では通信環境の未整備が導入の障壁となっています。
職員の意識改革と運用ルール
テレワークの導入を成功させるには、職員の意識改革も欠かせず、従来の対面重視の文化から脱却し、リモートでも業務が適切に遂行できるという意識を浸透させる必要があるでしょう。また、業務評価や勤怠管理の仕組みを整え、テレワークでも公平な評価ができる体制を構築することが重要です。
住民対応との両立
自治体にとって住民サービスの維持は最重要課題であり、テレワーク導入後も住民対応の質を低下させない工夫が必要です。例えば、窓口業務を完全にリモート化することは難しいものの、一部業務のオンライン化やハイブリッド体制を整えることで、効率化と利便性を両立させることが可能です。一方で、デジタルに不慣れな高齢者やITリテラシーの低い住民に対しては、従来通りの窓口対応が必要です。そのため、テレワークの導入にあたっては、住民の多様なニーズに応えるためのハイブリッド型の業務体制が求められます。
また、職員がリモートワークをしながら窓口業務をサポートする方法として、AIチャットボットやFAQシステムの導入も有効です。これにより、簡易な問い合わせ対応を自動化し、窓口業務を補完することができます。こうしたテレワークと窓口業務のハイブリッド化は、住民サービスの質を保ちながら業務効率を高める解決策となります。自治体ごとの課題や住民の特性に合わせた取り組みを進めることで、持続可能な行政サービスの提供が可能となるでしょう。
リモートワークの具体的な事例
東京都世田谷区|インターネット接続β’モデルへの移行
東京都世田谷区では、これまでネットワークの接続方法としてαモデルの情報化基盤を利用していましたが、業務効率やユーザビリティの低下に課題を抱いていました。そこで庁舎の建て替え・移転を機に、職員の生産性向上を図れる次期情報化基盤の整備と運用管理を改革することとし、β’モデルへの移行、Microsoft Teamsの導入により職員の生産性向上を実現し、今後の多様な働き方を可能にする環境を整えました。
東京都狛江市|サテライトオフィスの利用
新型コロナウイルスへの対策として、狛江市役所では、在宅勤務をはじめとしたテレワークが導入され、日中、市役所の執務室にも空いているスペースが目立つようになっていました。
また、新型コロナウイルスの流行以前から、これからの社会に対応できる市役所職員の育成や働き方改革も進められようとしており、これまでの執務室のような画一的な執務環境ではなかなか生まれづらかった柔軟な発想やスピード感、「未来構想力」で新たな価値を生み出せる職員の育成を図りながら、部署を超えた職員間のコミュニケーションが生まれるような職場環境が必要になっていました。そこで、このような職場環境の実現をめざして、市役所内でも、まずは内部管理系の業務が多い4階フロアのリノベーションをすることにしました。
滋賀県近江八幡市|パイロットオフィス
滋賀県近江八幡市では、2023年7月より、働き方改革の一環として一部の部署に対し大規模なオフィス改革を実施しました。
これまでは、不要文書の削減、脇机の撤去、協議用机の複数設置、固定席の廃止など「すぐに出来ること」に取り組んでいましたが、その効果等を可視化、またさらに広げていくためにオフィス改革に至りました。新しいオフィスには「窓口対応席」「集中席」「ファミレス席」「ハイカウンター席」「ビッグテーブル席」を用意しており、決められた席に座るのではなく、自分で座る席を選びます。これにより、コミュニケーションの活性化や生産性の向上が期待できます。新しいオフィスレイアウトは若手職員によるワークショップを重ね、「これからはこう働きたい」が具現化できるものとなっています。
自治体DXにはRESERVA
テレワークによる自治体DX化を推進するために、予約システムの導入をおすすめします。 窓口相談や施設利用の予約管理だけでなく、オンライン決済や顧客管理、集客などの自動化が可能です。複数のツールやプラットフォームを切り替える手間は一切不要のため、自治体の業務プロセスがより効率的に進められるだけでなく、利用者にとっても一元的で使いやすい環境が提供されます。
現在、多数の予約システムがありますが、なかでも実際に自治体への導入事例のあるRESERVA(レゼルバ)を推奨します。RESERVAは全国30万社という導入数を誇る、国内シェア率No. 1の予約システムです。政府機関・自治体では500以上のプロジェクトで活用されており、人口20万人を超える規模の自治体のほか、人口5万人以下の小規模な市町村でも導入実績があります。初期費用は無料でかんたんに設定できるため、予約システムの初導入となる自治体にもおすすめです。
まとめ
本記事では、自治体におけるテレワーク導入の現状、メリット、課題、そして導入事例について詳しく述べてきました。テレワークは、単に働き方を変えるだけではなく、業務効率の向上や災害時の柔軟な対応、さらには地域経済の活性化にも寄与する重要な施策です。柔軟な働き方を実現することで、自治体職員がより一層力を発揮できる環境が整うでしょう。自治体の未来を見据え、テレワークの積極的な導入と運用に向けた前向きな検討を進めることが期待されます。
また、予約システムを導入することで、自治体DXを効果的に推進できることも示しました。DXを推進するにあたって課題を抱えている自治体の職員は、ぜひ本記事を参考にしてください。