【2025年版】自治体DX化取り組み実態調査レポート|北海道登別市

近年、デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)、ICT、IoTといった言葉を耳にする機会が増えました。 新型コロナウイルス感染症の影響で、テレワークの推進や業務のリモート化などが急務となり、DX化を進める流れになったことが主な要因と考えられます。

加えて、SDGs(持続可能な開発目標:Sustainable Development Goals)の達成に向けてもDX化は重要な取り組みです。DX化による業務の効率化や省人化は、SDGsの達成にはほとんど必須であると考えられており、同時に日本が直面する人口減少への対応策になっています。そのため、 新型コロナウイルス後の社会に向けて、DX化を活発に進めている自治体や企業が増えています。

一方で、DX化には課題も多く、なかなか取り組みが進まない自治体も少なくないと思います。そこで本記事では、DX化へ積極的に取り組む先進的な自治体を取り上げ、独自に設けた評価項目で採点し、その取り組みのポイントをかんたんにまとめてご紹介します。

自治体DXの取り組み評価

目的と方法

これからDX化に向けて取り組む自治体や企業に向けた情報発信を目的として、DX化に積極的に取り組む自治体における「DX化の現状」「DX化に向けた課題」を整理し、実際の事例や画期的な取り組みをピックアップして解説していきます。

「DX化の現状」について、当社では、取り組みの進行度やDXの充実ぶりを可視化するために、当社予約システムに関する全国の自治体からのご相談、お問い合わせ、受注実績やノウハウを基にして、自治体におけるDXの取り組みについて31の評価項目を独自に作成しました。

自治体DX化の取り組み評価では、この評価項目を元に評価、採点を行っていきます。

評価項目

作成:RESERVA編集部

現時点での課題

・DX人材の不足
現状、日本においてDX化に携わる人材が不足しており、企業・自治体を問わずDX化を推し進める上での障壁となります。既にスキルを持っている人材を獲得、あるいは人材の育成に取り組むか、または人材を確保している企業と組んで外注するか、いずれにせよDX化に向けて確実に解決するべき問題です。

・DX化、ICT活用の専門部署がない
日本の組織の多くはIT戦略を含めたDX化、ICT活用を行う部署が用意されていません。日本の行政機関としてデジタル庁が新設された事は記憶に新しく、DX化を推し進める上の方針の策定や施策を推進する上で専門部署の設立は必要だと考えられます。

・地域ごとの財政規模、財源の違い
財政規模や財源の違いによって、DX化に向けた投資に踏み切れない自治体は多いと思います。DX化を進めることで財政の立て直しやサービス向上など付加価値が得られ、自治体としての価値を高められるのですが、実例がまだ少なく手を出しにくいのが実状のようです。

・住民本位の取り組みになっているか
DX化は単なる業務の効率化のこと、あるいはICTと混同されがちなキーワードです。DX化の最大の目的はサービスの質や生産性の向上であり、市民に寄り添いながら、本当に市民が求めていることは何か、その上で取り組むべきことは何かを精査していく必要があります。

・多言語への対応が可能になっているか
日本に在留している外国人は2023年(令和5年)6月時点で約322万人で、日本の人口の約2.6%に相当します。SDGsなどの観点から見ても、各自治体において多文化共生社会の実現は重要な目標であり、その一端を担う在留外国人への取り組みが必要であることは間違いありません。

DX・ICTの違い

ICTは「Information and Communication Technology」の略で、「情報通信技術」のことです。メールやSNS、チャットなど、情報をやり取りするためのサービスを指すほか、近年のAI、IoT化の進展により世界的にその技術領域は拡大しつつあります。
DXは「Digital Transformation」の略称であり、直訳すると「デジタル変革」です。DX化はICTやIoT(Internet of Things)をツールとして利用して日常生活やビジネスの質を高めることが目標となっています。
ICTの活用はDX化に含まれますが、DX化はICTの活用を含めた様々なアプローチで実現されるものというのがポイントです。

登別市の評価と解説

当社独自の調査項目に照らし、登別市の得点は31点中29点と全国でもトップクラスの結果になりました。登別市では「デジタルファースト」を掲げており、特にDXを推進した市役所での最先端な働き方は、他の行政機関にとっても良いロールモデルとなり得ます。そんな登別市の取り組みの中から特に注目されるポイントについて解説します。

評価結果

作成:RESERVA編集部

最先端な労働環境の市役所

画像引用元:PUBLIC CONNECT「今が変化の時!登別市役所で働く魅力とは?~DX推進、フリーアドレス、昇降デスク等々、新しい働き方を実践中!若手職員から見た働きやすさ~

登別市は、北海道南西部に位置する人口4万3千人ほどの小さな町ですが、その市役所ではDX推進フリーアドレス、公用スマホ貸与など、大変働きやすい環境が整えられています。職員一人ひとりへのノートパソコンの貸与チャットツールの導入、また、会議室には55型モニターやプロジェクターが設置されており、持参したパソコンをつなぐことで資料共有や打ち合わせもペーパーレスでスムーズに行うことができます。さらに、最新ITツールも利用できる環境が整えられており、従来の市役所のイメージとはまったく異なる快適な労働環境となっています。

参考:PUBLIC CONNECT「今が変化の時!登別市役所で働く魅力とは?~DX推進、フリーアドレス、昇降デスク等々、新しい働き方を実践中!若手職員から見た働きやすさ~

リモート窓口

画像引用元:登別市公式ホームページ「リモート窓口を開始します

登別市では、市役所本庁舎等から離れた地域に住む方々の移動負担などを軽減するため、令和6年12月12日より、登別支所や鷲別支所と市役所本庁舎、総合福祉センターしんた21との間で、国民健康保険の加入や障がい者手帳の返還、税の納付などの各種手続きに関する相談などを行うことが可能な「リモート窓口」を開設しました。これにより利用者の負担は減りつつも、音声や映像を通して担当部署と直接対話することで、実際の窓口と同じような手続きに関する相談等が可能となりました。

参考:登別市公式ホームページ「リモート窓口を開始します

テレワークの導入

登別市役所では、コロナ禍のあおりを受けて段階的にテレワークができるような仕組みを整えてきました。例えば、デスクトップPCを廃止してノートPCへ移行、庁内ネットワークの一部無線LAN化、固定電話の廃止などです。これらを整備したのち、地方公共団体情報システム機構(J─LIS)から提供された自治体テレワークシステムを使ってテレワークを導入、その結果、職員があらゆる場所から庁内にある自分のPCを操作することができるようになりました。これにより、働く場所にとらわれず、どこでも執務できる環境が整えられています。

参考:Public Labパブラボ「DXで住みよいまち、働きやすい市役所へ~小笠原春一・北海道登別市長インタビュー(3)~

評価項目

今回は、自治体の公式サイトのページや自治体の取材記事などを基に、DX化に関する自治体の取り組みの有無について独自に調査しました。ここでは、採点に利用した31項目を3つの観点について分類した上で、DXにおけるポイントやユーザーフレンドリーな自治体作りについて解説します。

方針・施策について (観点①)

DX化を進める上での方針や施策、DX化やICT活用に関する部署の有無、都道府県・民間企業との連携、プロモーションにおけるメディアの活用など、DX化に向けた組織作り、方向性などが示されているかを評価しました。

・都道府県と連携し、市区町村独自でのデジタル化指針を公表している
・民間との連携によるプロジェクト企画が行われている
・SDGsに対するデジタル施策が公表されているか
・自治体主導でDX人材の育成を宣言し行っている
・DXやICTなど明確にDX化に関する部署がある
・市のプロモーションにおいてメディアの活用に取り組んでいる

業務の効率化について (観点②)

ICTを活用した業務の効率化の中でも、特に自治体側における取り組みについて評価しました。ペーパーレス化やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の利用や予約システムの導入など業務の単純化・省人化に関するものが主に含まれます。

・施設利用などに予約システムの導入を行っている
・オンラインセミナーなどWEBツールの仕組みがある
・オンラインセミナーなどWEBツール活用の実績がある
・全面もしくは一部テレワークの導入、印鑑廃止などの取り組みがある
・3年以内でペーパーレス化(証明書関連のデジタル化)が実装された
・ワクチン接種情報について特設サイトを設けている
・ワクチン接種の運用において、オンライン申請等デジタル活用が進んでいる
・定型業務や単純業務にRPAを利用している
・役所内をフリーアドレス化している

住民向け・ユーザーフレンドリーについて (観点③)

DX化として重要な観点となる住民向けの取り組みで、行政の手続きや情報発信においてユーザーフレンドリーになっているか、あるいはICT教育、デジタルデバイドの解消など住民がよりよく暮らせる取り組みがなされているかを評価しました。

・公式ホームページの更新頻度は3日に1度以上である
・サイト速度、ユーザビリティに長けている
・YouTubeチャンネルがある
・X(旧Twitter)/Instagram/Facebookの公式アカウントがある
・SNSの更新頻度は週1以上ある
・行政に関する住民の質問にチャットボットなどを導入して対応している
・役所窓口や自治体の公共施設でキャッシュレス決済を導入している
・納税をキャッシュレス化しているか
・緊急時のメール通知機能など搭載している
・自治体が提供するアプリケーションがある
・LINEによる相談窓口、情報発信体制がある
・教育ICT(教育用タブレットの配布など)に力をいれている
・高齢者とのデジタルデバイド解消に取り組んでいる
・住民票の写しや税証明などがデジタル上のツールで申請可能である
・事業者向けの診断システム(例:補助金、助成金)を導入し事業者からの問い合わせ対策を施している
・多言語(3言語以上)に対応している

これらの評価項目は、他の自治体の調査を続けていきながら、随時追加、改善していく予定です。

登別市|調査のまとめ

登別市には、DX推進によって全国でもトップクラスの労働環境を誇る市役所があり、フリーアドレス制や押印の廃止、テレワークの導入など、さまざまな取り組みがなされていることが確認できました。また、市政をつかさどる市役所のこういった変化は、登別市全体の変化へとつながっていくものと考えられます。そのような登別市に期待される今後の取り組みは以下の通りです。

積極的なセミナーのオンライン実施
登別市では対面でセミナーが開催されることが多く、例えば市外の方や開催時間に合わせて会場に向かうことが難しい方の参加機会が減ってしまいます。そのため、オンラインと対面のハイブリッドで開催することによって、そうした方々への機会提供の幅を広げることができます。

事業者向け診断システムの設置
登別市は市内事業者に向け、多様な助成金制度を設けています。しかし、多くの支援情報の中から求めている情報を見つけ出し、自社に合うか判断するのは難しく、十分に支援を受けられない事業者が出てくる可能性があります。新型コロナウイルス感染症が収束した現在では、補助金制度の需要が向上したため、診断システムの導入が望まれています。

地方自治体におけるRESERVA予約システムの活用

登別市でも行われているDX化による利便性の向上や、ICT活用による業務の効率化、省人化。こういった課題にかんたんに取り組めるのが「SaaS型予約システムの導入」です。当社が提供する予約受付システムRESERVAは、35万の事業者・官公庁に導⼊されている国内最⼤級のSaaS型予約システムであり、人口20万人を超える規模の自治体のほか、人口5万人以下の小規模な市町村でも導入実績があり、最も選ばれている予約システムです。業務の効率化を進めて、より先進的な地方自治体の仕組みを作りましょう。

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画像引用元:RESERVA lg公式サイト

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