地域の防犯対策DX|自治体の課題を解決するデジタル技術

近年、日本ではSNSやネット詐欺など新たな脅威が増加し、少子高齢化の進行にともない地域社会のつながりが弱まるなど、多くの課題が浮上しています。従来の防犯活動はパトロールや住民ボランティアに支えられてきましたが、自治体や警察の人手不足が深刻化し、24時間・全地域をカバーするのは容易ではありません。

そこで注目されているのが、AIやIoTといったデジタル技術を積極的に導入し、従来の防犯活動を効率化・高度化する「防犯DX」です。地域の防犯カメラの映像を解析して犯罪発生リスクを予測したり、住民のスマートフォン通報を地図上で一元管理したりといった取り組みが、全国各地の自治体で進みつつあります。

本記事では、防犯DXの具体的な手法やメリット、そして導入をスムーズに進めるポイントなどを詳しく解説します。

防犯DXとは

日本における治安の現状

日本は世界的にみても治安がよい国とされていますが、地域によっては空き巣やひったくり、あるいは子どもや高齢者を狙った犯罪など、さまざまな問題が依然として存在しています。また、SNSやインターネット上での犯罪や、組織的な手口をともなう詐欺など、新たな脅威が浮上していることも事実です。

さらに、少子高齢化が進む中、高齢者の一人暮らし世帯が増え、地域社会のつながりが弱まることで、犯罪の発覚や通報が遅れるケースが懸念されています。こうした状況下において、自治体や警察には限られた人員しかいないため、すべてのエリアを24時間監視するのは極めて困難です。

このように、社会構造の変化と犯罪の多様化が同時進行している現代においては、自治体は今まで以上に迅速かつ的確な防犯対策が求められます。

防犯DXによる解決

自治体の防犯対策をより効果的にする施策として、近年注目されているのが防犯DXです。

防犯DXとは、地域の安全を守るための取り組みにデジタル技術を積極的に導入し、従来の防犯活動を効率化・高度化する試みのことを指します。現在、多くの自治体では、防犯DXとして犯罪発生リスクの高いエリアをデータ解析で事前予測する手法や、リアルタイム映像を警察や自治体職員が共有するシステムの導入が検討されています。

また、モバイル通信技術を活用して住民からの通報や要望を受け取り、地図上に一元化して管理するソリューションも注目されており、自治体のコミュニケーションを円滑化する効果も期待できます。こうした新しい技術の導入によって、これまで人の目やパトロールに頼っていた部分を合理化し、限られた人員でより広範囲をカバーすることが可能になります。

防犯DXのメリット

人手不足の解消

防犯DXの最も大きなメリットが、人手不足の解消です。

現在、多くの自治体が直面している共通の課題が人手不足です。特に防犯パトロールや見守り活動は、ボランティアに依存している地域も多く、担い手の高齢化や人材確保の難しさが深刻化しています。そこで、AI監視カメラやセンサーを設置することで、24時間体制で異常を検知する仕組みを整備すれば、限られた人数でも広範囲にわたる監視が可能になります。

また、スマートフォンを使った通報アプリの整備などにより、住民自身がかんたんに情報提供を行えるようにすると、職員だけではカバーしきれないエリアの把握にも役立ちます。さらにデータ解析を取り入れ、犯罪が起こりやすい時間帯や場所を特定し、効率的なパトロールルートを設定することも、人手不足の解消に寄与します。

地域コミュニティの活性化

防犯DXは、単に犯罪を防ぐだけでなく、地域コミュニティのつながりを強めるきっかけにもなり得ます。

従来のパトロールや見守り活動も重要ですが、DX化された防犯システムの運用には、住民や自治体、警察、企業など多様なステークホルダーの連携が不可欠です。たとえば、防犯アプリを導入して住民同士が不審情報を共有したり、SNSと連動して地域の安全に関する情報交換を活発化させたりする取り組みは、結果的に住民間のコミュニケーションを活性化させる効果もあります。

さらに、こうした防犯活動をきっかけに顔見知りの輪が広がれば、災害時や子育て世代のサポートなど、防犯以外の分野でも協力関係が築きやすくなります。

防犯対策の4つの原則

犯罪が発生しにくい環境をつくるために、警察庁は基本的な原則を示しています。具体的には「対象物の強化」「接近の制御」「監視性の確保」「領域性の確保」の4つがあります。

①対象物の強化

「対象物の強化」とは、建物や設備など犯罪の標的となり得るものを物理的・機能的に補強し、不正侵入や破壊を難しくする考え方を指します。

具体的には、ドアや窓の鍵を防犯性能の高いものに取り替えたり、衝撃センサーやガラス破壊検知システムを導入するといった手段が該当します。さらにDXの活用としては、施錠や解錠の状況を遠隔監視できるスマートロックの導入や、建物周囲の振動を検知するIoTセンサーなどが挙げられます。

これらの仕組みによって、不審者が侵入を試みた際のリアルタイム通知や自動録画が可能となり、被害を拡大させる前に対処できる点が大きなメリットです。ハード面を強化するだけでなく、ソフト面として住民や職員に「防犯に配慮された施設・設備である」という意識を周知しておくことで、より高い犯罪抑止効果が期待できます。

②接近の制御

「接近の制御」は、不審者や不審車両が犯罪対象物へ容易に近づけないよう、物理的・空間的な障壁を設ける考え方です。

フェンスや門扉、植栽レイアウトなどを工夫し、外部からの侵入ルートを制限することで、犯罪の機会を減らせます。DXでは、顔認証ゲートや車両ナンバー認識カメラなどを組み合わせることで、事前登録された住民や関係者のみが敷地内へ入れるよう管理する仕組みが考えられます。また、AI解析によって一般的ではない、屋根や塀を乗り越えるなどの侵入経路も検知できるようになれば、異常接近の早期発見が期待できます。

こうした「接近の制御」を徹底することで、犯行を思いとどまらせる心理的効果を高め、地域全体の安全性を底上げすることにつながります。

③監視性の確保

「監視性の確保」とは、人の目やカメラの視野に犯罪リスクの高い場所が常に入りやすいよう設計し、犯罪が起きにくい環境を作り出す考え方です。

従来は街灯の増設や視界を遮る障害物の撤去などが中心でしたが、DXの進展によりAIカメラやスマート街灯など、多様な手段が利用可能になっています。夜間でも赤外線カメラが稼働すれば、通行量の少ない路地や公園での不審行動をリアルタイムに捉えられます。

さらに、映像データの分析結果を自治体や警察がクラウド上で共有することで、異常を早期に発見・通報できる連携体制を強化することが可能です。監視性が高い環境を整えることは、犯罪を抑止しやすくするだけでなく、住民の安心感を醸成し、コミュニティの活性化にも寄与します。

④領域性の確保

「領域性の確保」は、特定の領域を地域の人々が責任を持って管理している場所であることを明示し、住民や利用者が主体的に秩序を保とうとする環境を作り出す考え方です。

たとえば、マンションや商店街などで共有スペースを整頓し、防犯カメラや街灯に加えて、サインやマークを設置することで住民が積極的に見守っている場所であることをアピールできます。DXの要素としては、防犯アプリやSNSを通じて、住民同士が不審情報を共有し合う仕組みを整えるといった方法が挙げられます。

こうした情報共有のプラットフォームを利用すれば、犯人から見れば侵入しにくい上に、すぐに気付かれやすい場所として映り、犯行のハードルを大きく上げることが可能です。領域性を高める施策は、防犯にとどまらずコミュニティ意識の醸成にもつながり、地域全体の絆を強くする効果が期待できます。

防犯活動のDX化をスムーズに進めるポイント

推進体制の構築と計画策定

防犯DXを推進するには、自治体内部の関係部署や警察、地域住民、場合によっては企業を巻き込んだ推進体制を構築することが重要です。

たとえば、市区町村の総務部門だけでなく、防災や福祉、教育といった各部署とも協力し、防犯関連のデータを共有できる体制をつくることで、より包括的な取り組みが可能になります。また、防犯DXの導入方針やスケジュール、予算計画を明確に定めるために、初期段階から関係者との話し合いを重ねることが求められます。計画段階で住民の意見を取り入れると同時に、導入の目的やメリットを積極的に周知することで、後々のトラブルや誤解を減らせます。

段階的な実施と効果検証

防犯DXにはさまざまな技術要素があり、一度にすべてを導入しようとするとコストや運用上のリスクが高くなりがちです。そこで対抗策として有効なのが、小規模なエリアやパイロットプロジェクトから着手し、実証実験を通じて効果や課題を把握するアプローチです。

たとえば、まずは地域の拠点となる商店街や公園周辺にカメラやセンサーを設置し、得られるデータを基に運用面の問題点を洗い出すといった手法が存在します。そのうえで、得られた成果と住民の反応を見ながら、段階的に対象エリアを広げる方法がリスクを最小化するうえで効果的です。

DX人材の採用・育成

DXを継続的に推進するには、デジタル技術に精通した職員や外部パートナーが不可欠です。

AIやIoTといった専門領域はもちろん、ビッグデータ分析やプロジェクトマネジメントなど、総合的なスキルを持つ人材を確保することが望まれます。しかし、自治体内部のみでこうした人材を育成するのは容易ではないため、外部の専門企業との連携や共同研究、さらには研修プログラムの導入など、多面的なアプローチが重要になります。また、住民とのコミュニケーションやマネジメント能力に長けた職員との協働により、技術者だけではカバーしきれない住民対応や広報活動の面でも相乗効果が期待できます。将来的には、自治体職員自らがデジタル技術を活用し、問題解決の道筋を立案できるような人材を育てることが、防犯のみならず行政全般のデジタル化を加速させるカギとなります。

自治体における防犯DXの事例

AI監視カメラの導入|大阪府吹田市

大阪府吹田市でパナソニックグループが展開するスマートシティ事業、Suita サスティナブル・スマートタウンは、パナソニックコネクトが運用する画像センシングを中心としたAIを活用するタウンセキュリティシステムを導入しています。

このシステムは、公共エリア内のセキュリティカメラで撮影した映像に対して画像解析を行うというものです。「滞留」「転倒」「白杖」「車椅子」といった4種類の検知要件を満たす事象を検知した場合、タウンマネジメント機関(TMO)のセキュリティシステムへ、警備行動の要否確認の通知を行う仕組みです。TMOの職員が該当するカメラ映像と通知内容を確認し、警備の必要があると判断した場合はALSOKへ警備行動を要請、緊急性をともなう場合は110番や119番に連絡します。

スマート街路灯の設置|東京都

東京都は、2019年8月に策定した「TOKYO Data Highway 基本戦略」において西新宿エリアを重点整備エリアと位置付け、スマート街路灯を設置しています。この、スマート街路灯はAIを活用したカメラ画像解析技術により通行人数、年代、性別などを分析することが可能です。カメラで撮影した映像は保存することなくAI解析後に即時廃棄するプライバシーに配慮した仕組みとなっています。スマートポールの設置や運用の知見、解析データを蓄積することで、将来的には都内全域に展開される予定となっています。

GPSセンサーによる登下校ルートの可視化|富山県富山市

富山市では2018年度から、「こどもを見守る地域連携事業」として、小学生にGPSセンサーを配布し、取得した情報を富山市センサーネットワークで収集しています。これにより、児童の登下校ルートを可視化することで、小学校やPTA、自治振興会などで共有して地域の安心・安全を高めています。2023年時点で、市内全小学校(66校)への導入が完了しており、地域全体で児童の登下校をより安全に見守る体制が整備されています。

ビーコン受信器の整備|兵庫県伊丹市

兵庫県伊丹市では、犯罪の抑止や事件・事故の早期解決を目的に、道路や公園に「安全・安心見守りカメラ」を1200台設置しています。また、子どもや認知症高齢者などの見守りのために、ビーコン受信器を整備し、位置情報を保護者に通知する「まちなかミマモルメ」のサービスを実施しています。これらのカメラとビーコンを組み合わせた「安全・安心見守りネットワーク事業」は、安全で安心して暮らせるまちづくりの推進に寄与しています。

市民の個人情報を確実に保護する予約システム「RESERVA」

画像引用元:RESERVA lg公式サイト

現在多数の予約システムがありますが、自治体に適した予約システムとして、セキュリティ対策が充実しているRESERVAを推奨します。RESERVAは、30万社500以上の政府機関・地方自治体も導入したという実績がある国内No.1の予約システムです。予約受付をはじめ、機能は100種類を超えており、さまざまな事業の形態に対応しています。セキュリティ対策としては、ISO/IEC 27001ISO/IEC 27017を取得しており、SSLに対応しています。初期費用は無料で、操作性もシンプルなため、予約システムを初めて導入する自治体にもおすすめです。

まとめ

少子高齢化や都市構造の変化、そしてSNSやネット詐欺をはじめとする新たな脅威など、日本社会を取り巻く防犯の課題は刻々と変化しています。そうした状況で注目される防犯DXは、人手不足を補いつつ、AIカメラやIoTなどの先端技術を活用して地域全体の安全性を高める実効性の高いアプローチといえます。

導入にあたっては、自治体・警察・住民・企業など多様な主体による連携体制の構築や、段階的な実証と効果検証を行いながら少しずつ拡大していく手法が有効です。また、DXを担う人材の育成・確保も重要なポイントであり、将来的にはほかの行政分野や地域活性化にも波及効果が期待できます。さらに、予約システムRESERVAは、市民の個人情報を確実に保護しつつ、自治体の業務効率化に貢献します。

自治体の防犯対策でお悩みの人は、ぜひ本記事を参考にしてください。

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