地方自治体が展開するレンタルスペース|官民共創で増加する背景とは?

地方自治体が展開するレンタルスペース|官民共創で増加する背景とは?

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コロナ禍でテレワークが進んだ現在、人口の流動により地域のニーズが変化し、市民が多様な目的でレンタルスペースを利用するようになっています。矢野経済研究所の調査「貸会議室市場に関する調査」によると、貸会議室の市場規模は年々増加し、レンタルスペースの需要が高まっていることがうかがえます。また、株式会社スペースマーケット「スペースシェアからみる世の中トレンド2022」によると、行動制限が緩和されてからは、「推し会」や「サッカー観戦」のためのスペース利用が増えているようです。

地方創生の観点からも、近年、地域資源を活用して新しい産業を創出するために自治体が主体となってコワーキングスペースやクリエイティブスペースなどを整備、運営する動きが見られます。この取り組みは空き家の有効活用にもつながり、地域の経済効果が見込めます。

このように、自治体が提供するレンタルスペースは、市民の社会活動や文化活動を支援するために重要な役割を果たしながら地域活性化を支援することができ、地域の魅力を高めることが期待されています。本記事では、自治体が運営するレンタルスペースの事例を紹介します。

参考ページ:矢野経済研究所「2019 空間活用ビジネスの事例研究と動向調査
参考ページ:株式会社スペースマーケット「スペースシェアからみる世の中トレンド2022

自治体主導のレンタルスペースとは

自治体が展開するレンタルスペースとは、市民や団体が利用できるように自治体が予約や貸し出しを行う多目的空間のことです。会議室や研修室、各種講座のための和室や洋室、ステージやリハーサル室、体育館やグラウンド、図書館の閲覧室などが挙げられます。

自治体がレンタルスペースを管理、運営することで、施設の維持や安全管理がしっかりと行われます。施設の状態を定期的にチェックし、必要な修繕や改修を行っているため、利用者は安心して使うことができます。

増加している背景と利点

自治体が展開するレンタルスペースが増加している背景には以下の4つが考えられます。

  1. 地方創生
    地方創生とは、地域の魅力を引き出し、地域経済の発展や人口の定着を図るための施策を指します。レンタルスペースの提供は、地域のイベントや文化活動、産業の振興に役立ち、地域の活性化につながります。
  2. コミュニティ形成
    人々がひとつの場所に集まると、地域住民がお互いにつながり、課題を共有し、地域の発展につながるような社会関係を形成することができます。レンタルスペースは、地域住民が集まりやすい場所として、コミュニティ形成を促進する役割を果たします。
  3. フレキシブルな働き方
    自治体が提供するコワーキングスペースやレンタルスペースは、時間や場所に縛られない柔軟な働き方をする人々にとって、自宅以外の場所で仕事ができる場所として需要が高まっています。
  4. シェアリングエコノミー
    シェアリングエコノミーとは、個人が所有する資産を他の人と共有し、資源の有効活用や経済活動の促進を図る新しい経済形態です。レンタルスペースの所有者である自治体の資産を市民が共有することができ、シェアリングエコノミーの一環として捉えられています。

このような施設運営が実現すると、以下のようなメリットがあります。

  • 公平性が担保され、誰もが利用することができる。
  • 費用が比較的安価で公正な利用が可能。
  • 市民参加型の施策が増加。
  • 多様な人々を呼び込み、地域経済の活性化を図る。

以上のように、自治体がレンタルスペースの運営を担うことで、地域住民にとって利便性が高まり、施設の維持管理や安全管理がしっかりと行われるというメリットがあります。

自治体によるレンタルスペース予約を行っている事例

1.東京都品川区「西大井創業支援センター」

西大井創業支援センターは、「PORT(ポート)2401」として2022年2月に一部リニューアルオープンした品川区立の創業支援施設です。

「ここから始まる 起業の航路」をテーマに、社会起業・働きながらの起業・学生起業などをハード・ソフト両面からサポートします。また、不定期で月額会員の募集を行っており、会員はインキュベーションマネージャーとの継続的な1on1ミーティングや個人ロッカーの提供、会員限定のオンラインコミュニティや各種セミナーに参加することができます。

参考記事:品川区「西大井創業支援センター
参考記事:PR TIMES「品川区立西大井創業支援センターが2022年2月、リニューアルオープン

2.千葉県旭市「多世代交流施設おひさまテラス」

「おひさまテラス」は、2022年4月に千葉県旭市の商業施設「イオンタウン旭」内にオープンした多世代交流施設です。

少子高齢化に直面する旭市では、国が推進する「生涯活躍のまち構想」にもとづいて2016年2月に「旭市生涯活躍のまち構想」を重点戦略として位置づけ、実現に取り組んでいます。このような市の構想を受けて、イオンタウン株式会社は、旭中央病院から道の駅のエリアを一体的に捉え、高齢者だけでなく子どもたちや若い世代まで、誰もが健康な生活を楽しみながら活躍できるまちを目指す計画「みらいあさひ」を提案し、交流機能をもつ施設「おひさまテラス」をつくるプロジェクトが始動しました。

現在では、読書、料理、ものづくりを楽しんだり、思い切り遊んだり、ダンスや音楽や仕事に打ち込んだりすることができる様々なスペースが生まれ、「ひとりひとりの居場所となり、ひとりひとりが輝ける場所」をコンセプトに設計されています。

参考記事:千葉県旭市「おひさまテラス
参考記事:ReBITA「旭市多世代交流施設「おひさまテラス」から考える、地域拠点を成功事例とするためのチーム体制とは

3.北海道空知郡中富良野町「まちなかオフィス」

北海道中富良野町の「まちなかオフィス」は、JR中富良野駅から徒歩2分、国道沿いに位置するテレワーク施設です。駐⾞場やリモート会議スペースも完備し、外出移動途中やワーケーションでの利用、デスクワークやリモート会議などに便利です。

建設にあたっては、政府が進める地方創生の取り組みのひとつ「テレワーク施設整備交付金」を活用して事業を進めました。オフィスは高品質な木造建築素材のスマートモデューロを用いています。工事中はコロナ禍のこともあり、建設業者と町の担当者がWEBカメラを用いてリモートでの建物見学を実施しながら構想を練って施工されました。

参考記事:北海道空知郡中富良野町「まちなかオフィス
参考記事:株式会社アーキビジョン21「スマートモデューロ 導入活用事例:中富良野町様まちなかオフィス

4.福島県双葉郡大熊町「link(リンク)る大熊」

福島県双葉市の「交流施設・linkる大熊」は、大熊町交流ゾーンの中心に位置する地域交流の発信場所となるスペースです。全室に無料WiFiを完備しており、図書スペース、キッズスペース、運動、料理場など、充実した各種施設がそろっています。施設内には起業や飲食店の開業を目指す人のために「チャレンジショップ」が設けられ、2022年10月には期間限定でコーヒースタンドがオープンしました。

また、宿泊温浴施設「ほっと大熊」は、町内で震災後初の宿泊施設となり、家族での一時帰宅や墓参りなどに訪れた際の大人数の宿泊に対応しています。

参考記事:福島県双葉市大熊町「交流施設・linkる大熊
参考記事:福島県双葉市大熊町「町交流ゾーンがグランドオープン!
参考記事:いわき経済新聞「大熊町に期間限定コーヒースタンド 交流施設のチャレンジショップ第1号として

5.福井県敦賀市「オルパーク」

「オルパーク」は、福井県敦賀駅直結のレンタルスペース、待合機能も兼ねた交流施設と駅前広場です。「オルパーク」は、これまで愛着とともに記憶されてきた木造駅舎のイメージを継承してほしいという市民の想いに応えたデザインとなっており、「2つのウイングと中央の玄関」という駅舎特徴的な構成を「2つの箱」のデザインでよみがえらせ、2014年にリニューアルしました。

「2つの箱」のデザインにすることで、今後増加が見込まれる駅の乗降客にとってスムーズな移動を促します。また比較的安定した室内環境を作りやすく、維持管理費の低減が可能です。

参考記事:福井県敦賀市「オルパーク
参考記事:土木学会景観・デザイン委員会「2022年奨励賞 敦賀駅交流施設「オルパーク」/駅前広場

6.徳島県徳島市「まちづくり協働プラザ」

徳島市の「まちづくり協働プラザ」は、NPO活動の支援、行政との協働事業を推進するための拠点として、市民との協働社会の実現に寄与するために設立された施設です。市民活動に参加する仕掛けを「つくる」、世代を超えて地域と行政を「つなぐ」、会議室や機材の貸し出しを通して市民活動を「ささえる」を軸に、徳島市に活動の場をもつNPO団体にさまざまなサポートを行っています。

また、徳島市内の活動を紹介するブログ、広報誌、メールマガジンで情報発信することにより、地域一体となってコミュニティの活動を広げようとしていることがうかがえます。

参考記事:徳島県徳島市「まちづくり協働プラザ

7.鳥取県境港市「みなとテラス」

画像引用元:みなとテラス公式サイ

鳥取県境港市の「みなとテラス」は、「市民交流センター」「市民図書館」「防災」の3つの機能を兼ね備えた複合施設です。

公募によって決定した「みなとテラス」という名称には、あらゆる人に開かれた“テラス”のような場所と、地域の力をさらに高めて未来を“照らす”という想いが込められています。乳児からシニア世代、障がいのある方、外国人、境港市で暮らす人も境港市を訪れる人も、誰もがいつでも気軽に利用することができる交流と防災の拠点を目指しています。

参考記事:鳥取県境港市「みなとテラス
参考記事:境港市役所「境港市民交流センターの愛称が「みなとテラス」に決まりました

8.愛知県一宮市「一宮市市民活動支援センター」

愛知県一宮市の市民活動支援センターは、貸し会議室や作業室を設け、ボランティアグループやNPOなどの市民活動をサポートしながら地域の市民活動の拡大に取り組んでいます。2004年より運営された当センターは第4次計画にわたって運営のあり方を見直しており、さまざまな団体と協働して地域の活動を支えています。

2020年4月からの第4次一宮市市民活動支援センターでは、これまでの運営主体の経験にもとづくノウハウとスキルを活かし、地域外からの諸応援が得られる組織づくりを目指しています。加えて行政との協働の推進を図り、企業や団体のCSR活動・社会貢献活動と連携する構造となっています。

参考記事:愛知県一宮市「一宮市市民活動支援センター
参考記事:岐阜県郡上市市民協働センター「一宮市市民活動支援センターに視察に行ってきました!

9.奈良県奈良市「BONCHI(ボンチ)」

奈良県奈良市にある「BONCHI」は、「ひとりでに、持続可能な地域や社会が生まれる場所」がコンセプトの創業支援施設で、カフェ、ショップ、本屋、イベントスペース、コワーキングスペース、会議室が一体となった新しい空間です。創業支援施設でありつつも、特定の目的を持った人だけでなく多様な人に開かれた空間づくりが評価され、2020年グッドデザイン賞を受賞しています。

BONCHIでは創業支援の相談以外にも、市民が実際にイベントを企画することができます。2023年に入ってからは、古本市、ワークショップ、成果発表会などが開催されています。

参考記事:奈良県奈良市「BONCHI
参考記事:奈良市「創業支援施設 BONCHI

レンタルスペース予約の効率化にはRESERVA

画像引用元:RESERVA公式サイト

自治体が運営するレンタルスペースは、単に貸し会議室だけでなく、市民が多様な目的で集い、新たな交流を生み出すことで地方創生に貢献する役割を担っています。

これらの施設運営にかかる業務を効率化するためには、予約システムの導入が有効です。利用者がオンライン上で希望スペースの利用時間や目的などを入力することで、予約の条件に応じた空き状況が自動で表示されるため、スムーズな予約受付が可能です。さらに、予約情報や利用者情報が自動で登録されるため、手動での入力作業が不要となり、データの正確性や管理の効率化が期待できます。市民が利用しやすいシステムであれば、レンタルスペースの利用と自治体施設の活用率が向上し、自治体のPRにもつながります。

自治体向けの施設予約におすすめなのが、実際の現場でも活用されている予約システムRESERVAです。RESERVAは操作性がシンプルでわかりやすいため、どの世代でもスムーズに利用することが可能です。また、人口20万人を超える規模の自治体から人口5万人以下の小規模な市町村でも導入実績があり、安心して利用可能です。

自治体が展開するレンタルスペースの予約に最適なRESERVAの詳細は、こちらをご覧ください。

まとめ

地方創生の一環として、老客男女の市民を街に呼び込むレンタルスペースの予約が注目されています。今回は、自治体が主導となってレンタルスペースを運営している事例を7つ紹介しました。人々の移動制限が緩和されてからも、リモートワークやワーケーションを理由にレンタルスペースの予約数は増えることが予想されます。

予約DX研究所では、今後も自治体のDX化、官民連携に関する国内事例を取り上げていきます。

予約システムで、ビジネスを効率化

RESERVA.lgは、自治体向けのクラウド予約システム。官公庁、自治体における導入実績は500以上。公共施設予約、自治体のイベント、窓口予約など様々なシーンで導入されています。