新型コロナウイルスの流行は、世界中の多くの産業に深刻な影響を与えましたが、特に観光事業は大きな打撃を受けました。国際的な旅行制限により外国人観光客の流入が減少し、自治体にとって重要な収益源が失われました。
ウイルスの流行が落ち着いた2024年現在、観光事業は収益面では回復の傾向にありますが、コロナ禍前から抱えていた課題が顕在化し、観光事業のさらなる発展を妨げています。この記事では、観光事業における課題と、それらを克服するために自治体が取るべき戦略に焦点を当てて解説します。
観光事業の課題
労働生産性が低い
観光事業は、労働生産性の面で長らく課題を抱えています。これは特に、1人の従業員によって生み出される付加価値が他の産業と比較して低いことに起因します。そのため、業務運営の効率化による生産性向上が急務となっています。
観光事業の業務効率化は地域経済の再活性化の鍵となります。1人ひとりの従業員の業務効率を高め、より少ない人手で高い品質のサービスを提供することが、持続可能な観光産業への道を拓くでしょう。
デジタル化が進んでいない
観光事業は、デジタル化の面で大きな遅れを抱えています。特に宿泊施設や観光地など、サービス業のデジタル化が十分に進んでいないのが現状です。依然として多くの業務プロセスが手作業に頼っており、スマートフォンを活用した予約システムなどの導入もごく一部に留まっています。
解決策としての観光DX
DXとは
DXは、デジタル技術の活用を通じて社会や組織の根本的な変革を目指す概念です。
2018年に経済産業省が「DX推進ガイドライン」を発表したことを契機として、この概念は広く認知されるようになりました。このガイドラインでは、DXの目的はデジタル技術とデータを活用してビジネスモデルを変革し、市場の変化に迅速に対応することで企業の競争優位性を確立することだとされています。また、社会システムと情報技術の融合によって、人々の生活の質を向上させ、新たな価値を創出することも重要視されています。
※DX推進ガイドラインは2024年現在、「デジタルガバナンス・コード」に統合されています。
観光DXとは
観光DXとは、観光産業にデジタル技術を導入し、業務の効率化と新しいビジネスモデルの創造を目指す取り組みです。これは、収集されるデータの分析によって、事業戦略を再検討することに重点を置いています。特に、新型コロナウイルスの影響を受けて観光需要が減少している現状において、自治体がこのようなデジタル変革を行うことは、観光地の課題解決において重要な役割を担っています。
観光庁によるサポート
自治体が観光DXを推進するうえで、観光庁が重要な役割を担っています。観光庁は、観光事業を行う自治体や企業への支援を積極的に行っており、その一環として、「観光DX推進プロジェクト」を通じて、観光事業を行う団体に対する実証事業を実施しています。
2023年度には、7つのDX事業が採択されました。これらの事業は全国各地の自治体を中心に組織された団体によって運営されており、観光庁の支援の下、地域ごとの観光DXを推進しています。
このプロジェクトの目的は、デジタル技術の導入を通じて、旅行者の利便性を向上させると同時に、観光産業の生産性を高め、観光地経営の高度化を図ることにあります。
観光DXの目指すべき方向性
観光産業のデジタル変革を支援するため、観光庁は「観光DX推進のあり方に関する検討会」を設置しました。この検討会は2022年9月から2023年3月にかけて行われ、観光地におけるDX推進に伴う課題の解決策が模索されました。
検討会の結果として「最終取りまとめ」が策定され、それをもとにした「観光DXの今後の方向性」という資料が作成されました。この資料は、自治体が観光DXを推進する際に目指すべき方向性として非常に参考になるため、本項で解説します。
観光客の利便性向上・周遊促進
観光DXの主要な目標の1つは、観光客の利便性を向上させ、さらに周遊を促進することです。これを達成するために、ウェブサイトやOTAなどを通じて情報を発信し、観光客が必要な情報を容易に入手できるようにしなければなりません。具体的には、宿泊、交通、体験などの予約や決済を1つの地域サイト上で完結できるシステムを構築することで、観光の利便性が大きく向上します。
さらに、観光客に滞在地域や趣味嗜好に応じた最新のおすすめ情報を提供することで、周辺地域への周遊を促すことができます。これを行うためには、スマートフォンや顔認証技術を用いた予約システムの導入などが必要です。これらの施策は、観光客の情報収集から予約、決済までのプロセスをスムーズにし、快適な旅行体験を可能にします。
OTAとは
OTAとは、Online Travel Agent(オンライントラベルエージェント)の頭文字の略で、インターネット上のみで取引を行う旅行会社を指します。24時間商品を閲覧・検索でき、店舗へ出向く必要のない利便性が、昨今消費者の支持を集めています。
参考サイト:JTB総合研究所「観光用語集 – OTA」
観光産業の生産性向上
観光産業の生産性向上も目指すべき事項です。これを実現するために、観光事業推進プラットフォーム(PMS)の導入が求められます。PMSの利用により、自治体は情報管理を高度化し、経営資源をより適切に配分できます。
また、PMSやOTAなどで扱うデータの仕様を統一化し、自治体・事業者間の連携を促進することで、さらなる生産性の向上が可能になります。地域単位での予約情報や販売価格の共有、APIを通じたデータ連携によるレベニューマネジメントの実施によって、相乗的に収益が向上します。
PMSとは
PMSとは、Property Management System(プロパティマネジメントシステム)の頭文字の略で、ホテル・旅館の予約から客室管理、請求までを処理する宿泊施設の基幹システムを指します。複数の旅行会社やインターネットが予約管理を効率的に行うためには、PMSの整備が必須となります。
参考サイト:JTB総合研究所「観光用語集 – PMS」
観光地経営の高度化
観光地経営の高度化も望まれます。この目標達成のためには、DX化に関連する方針を盛り込んだ戦略の策定が不可欠です。具体的には、旅行者の移動、宿泊、購買データを活用したマーケティング戦略などが挙げられます。
自治体は、観光客の消費・移動に関するデータを分析し、新しい取り組みを検討することで、観光地をより「稼げる地域」にすることができます。
観光デジタル人材の育成・活用
観光DXの成功には、デジタル分野に精通した人材の育成と活用が不可欠です。この目的のために、産学連携の下でリカレント教育を推進することが必要です。デジタル化に関する知識や技術を獲得した人材を獲得することで、自治体は加速度的に観光環境をDX化することができます。
また、現場でのDX担当者は、観光地のデジタル化を進め、新たな収益機会を創出するうえで重要です。彼らの分析を通じて、自治体はより具体的なマーケティング戦略の策定と実行が可能になります。
観光DXの具体策
観光庁が策定した「観光DXの目指すべき方向性」を踏まえ、自治体が具体的に取り組むことができるDX戦略をここに紹介します。
ビッグデータの活用
自治体は、ビッグデータを活用して、観光客の行動パターン、嗜好、消費トレンドを理解し、それに基づいた効果的なマーケティング戦略を策定できます。例えば、SNSやオンライン予約プラットフォームから収集されるデータを分析することで、観光客の関心やニーズを特定し、特定の時期にイベントを開催することが可能です。
ビッグデータの利用は、観光地の資源を最適化し、利用者体験を向上させるための戦略的決定をサポートします。これにより、自治体はより効率的に観光地に人々を引き付け、収益の最大化を図ることができます。
CRMによる事業展開
観光DXにおける重要な具体策の1つは、CRMによる事業展開です。CRMを通じて、自治体は顧客データを分析し、観光客のニーズに合ったサービスを提供することができます。これにより顧客満足度の向上と再来訪が実現します。
またCRMによって自治体は顧客との長期的な関係を構築しやすくなるため、持続可能な観光業の発展が可能になります。
CRMとは
CRMとは、Customer Relationship Management(カスタマーリレーションシップマネジメント)の略で、「顧客関係性マネジメント」または「顧客関係管理」などと訳されます。製品やサービスを提供する企業が顧客との間に信頼関係を作り、双方の利益を向上させることを目指す総合的な経営手法を指します。
非接触システムによる省人化
観光DXの一環として、非接触システムの導入がますます重要になっています。この技術は、新型コロナウイルスの流行を経験した現代において旅行者と従業員の安全を確保すると同時に、業務の効率化を図る手段として注目されています。
非接触システムは、チェックインや支払いなどのプロセスを自動化し、従来は人手を必要としていた業務を省力します。例えば、顔認証やスマートフォンを使用したセルフチェックインシステムの導入はフロントデスクでの人員を削減するため、労働コストの削減につながります。
観光DXにはRESERVA
自治体が観光DXを推進するにあたって、おすすめなのが予約システムの導入です。予約システムの機能は、予約管理にとどまらず、決済から顧客管理、さらに集客に至るまで自動化する機能を持つシステムです。複数のツールやプラットフォームを切り替える手間は一切不要で、これにより、自治体の業務プロセスがより効率的に進められるだけでなく、利用者にとっても一元的で使いやすい環境が提供されます。
現在多数の予約システムがありますが、自治体が効率的に観光DXを促進するためには、実際に導入事例もあるRESERVAを推奨します。RESERVAは、26万社が導入、500以上の政府機関・地方自治体も導入したという実績がある国内No.1予約システムです。予約受付をはじめ、機能は100種類を超えており、自治体の業務プロセスがより効率的に進められます。初期費用は無料で、サポート窓口の充実やヘルプの利便性が高いため、予約システムの初導入となる地方自治体にもおすすめです。
まとめ
観光事業は、自治体が行う事業において収益面で欠かせない分野です。この記事では、そのような観光事業が直面する課題と、その解決策としての観光DXについて解説しました。また、予約システムを導入することで、自治体が観光DXを効率的に推進できることも示しました。DXを推進するにあたって課題を抱えている自治体の職員は、ぜひ本記事を参考にしてください。
RESERVA.lgでは、今後も自治体DXに関する学び、挑戦を取り上げていきます。