北海道富良野市といえば、ラベンダー畑やスキー場など観光地として有名です。広大な大地と豊富な観光資源に溢れる街ですが、近年の人口減少や少子高齢化にともない、自治体では住民ニーズの多様化・高度化への対応が求められています。
そんな中、富良野市では令和2年(2020年)4月に「スマートシティ戦略室」を設置し、デジタル技術の積極的な利活用を通して、住みやすいまちづくりを進めています。本記事では、富良野市が行う官民連携によるスマートシティ推進策について詳しく解説していきます。
北海道富良野市の概要
富良野市は北海道のほぼ中心に位置する人口約2万人の市です。東方に富良野岳、西方に芦別岳、南方に東大演習林があり、市域の約7割を山林が占めるといった自然環境に恵まれた街です。
そうした自然環境の中、富良野市では農業と観光を基幹産業とした田園都市を推進しており、「ふらのワイン」「ふらのチーズ」に代表される特産物は、富良野ブランドとして全国各地で販売されています。
観光に関しても、富良野市はテレビドラマ「北の国から」のロケ地として高い知名度を誇るほか、ラベンダー畑の情緒あふれる田園風景や、世界トップクラスの雪質を誇るスキーゲレンデなど豊富な観光資源を持つことから、国内はもちろん訪日観光客からも人気を集めています。
人口(令和5年12月) | 19,940人 |
世帯数 (令和5年12月) | 10597世帯 |
位置(市役所) | 〒076-8555 北海道富良野市弥生町1番1号 |
市役所HP | https://www.city.furano.hokkaido.jp/ |
富良野市のスマートシティ構想とは
富良野市では、令和2年スマートシティ戦略室を新たに立ち上げました。その背景としては、近年の少子高齢化や労働人口の減少に伴い、住民のニーズの多様化・高度化、あるいは感染症対策など不測の事態への対応が求められる中、デジタルツールの利活用を重要課題と置いたことにあります。
また、アジア圏はもとより欧米から多くの観光客が訪れる中で、モバイルデバイスの活用を通じた観光の利便性向上にも重きを置いています。そうした中で、富良野市では、「スマートシティ構想」を掲げ、デジタル化の急速な変化に対応するべく様々な施策を打ち出しました。
取り組み内容としては、市役所内の業務改善から、地域住民の生活支援、そして観光客向けの利便性向上の支援にいたるまで多岐に渡ります。実行にあたって、富良野市では大学や民間企業と連携を強化し、官民一体なって積極的な取り組みを進めています。
スマートシティ実現に向けた取り組み事例
ここからは具体的な富良野市のスマートシティ実現に向けた取り組み内容を紹介します。詳しい情報は、富良野市ホームページにも掲載されていますので、併せてご覧ください。
北海道大学・日本オラクルとの連携
富良野市は、北海道大学・日本オラクル株式会社と連携し、デジタル技術を活用して地域課題の解決に向き合う「産学官共同プロジェクト」を、令和3年(2021年)8月11日に発足しました。
同プロジェクトでは、北海道大学の博士課程学生8人を対象に、ワークショップ「博士課程DX教育プログラム:北海道富良野市のスマートシティ推進支援」を計6回に分けて実施。日本オラクル株式会社は、参加学生に対しコーチングやデータ分析のトレーニングを行いました。
参加学生は、富良野市から提示された課題(ワインの販売実績と資源ごみ回収率のデータ分析)に対して、オラクル社のクラウドサービスを活用したデータ分析と可視化を実施。それら、ワークショップから導き出された施策案を参考に、富良野市ではスマートシティの実証実験の検討を行っています。
保育所のICTシステム導入
富良野市では、内閣府の事業である「地方創生人材支援制度」を活用し、デジタル専門人材としてNTT東日本株式会社の社員2人を非常勤職員として派遣してもらいました。
同職員は、市役所内の各部署へICT利活用に関するヒアリング調査を行った結果、「保育所へのICTシステム導入」を実施しました。保育所のICTシステムは、登校園管理、帳票作成(日誌・指導案など)、保護者とのコミュニケーションなどに用いられています。
この取り組みの結果、子どもと接する時間の確保や保育サービスの向上など、より円滑や保育所運営の貢献が期待されています。
市役所業務の効率化
富良野市では、市役所職員でなければ対応できない業務に専念できる環境を整えるために、市役所業務の働き方改革を進めています。改革当初は、業務プロセスの抜本的な改革を可及的速やかに実施するために、ICT利活用推進業務委託の受託候補選定を公募型プロボーザル方式で実施。
それによって選定した、大手コンサルティング会社のアクセンチュア株式会社に「富良野市役所働き方改革戦略提案業務」を報告書にまとめてもらいました。富良野市では、その報告書をもとにICTの利活用や業務改善案の実施に向けた議論を進めることができました。提案にもとづいて実施された働き方改革の事例は以下の通りです。
- RPA(Robotic Process Automation)の実証実験と導入
- ペーパーレス会議ソフトの実証と導入
- 音声文字変換ソフトの実証と導入
- LINEによる情報配信
- 押印の見直し
- 文書管理システムの導入
モビリティマネジメントの連携
富良野市では、市内の移動に必要なモビリティサービスの開発と、移動連携プラットフォーム「MaaS(Mobility as a Service)」の実用化を目指し、大阪府大阪市の旅行会社WILLER株式会社との連携を実現しました。
富良野市では公共交通機関の利用者減少に伴い、バス会社や鉄道会社の経営状況は悪化の一途を辿っています。一方で、運転免許証の自主返納や農村地域で運行している地域コミュニティカーのあり方など、公共交通全体に関わる課題が深刻化していました。
こうした「移動の課題解決」に貢献するため、WILLER社は自社がこれまで培ってきた、シェア・自動運転・MaaSのノウハウを富良野市に提供し、質の高い交通サービスの実現に向けて協議を進めています。例えば、AIオンデマンド交通「ちょいのりタクシー」の実証実験など、新たな交通サービスの可能性を追求しています。
スマートシティにより近づく、予約管理システム「RESERVA」
スマートシティの実現には市民の意識を高めることも重要です。各企業、店舗、個人でも始められるスマートシティへの実現に向けて、近年注目を集めるのが「SaaSシステム」の導入です。例えば、オンライン予約システム「RESERVA(レゼルバ)」は、どのような業界・業種でも導入しやすく、オンライン予約サイトを手軽に構築できます。
集客、予約、決済、来店といった一連のビジネスフローをRESERVAを導入することによって自動化を実現し、従来の予約管理方法から脱却し、店舗ビジネスのDXを実現します。
近年では、自治体や官公庁、大学などの導入実績も増えており、官民連携を果たした実例も多いのが特徴です。導入実績の詳細は、予約システムRESERVA(レゼルバ)ホームページをご覧ください。
まとめ
今回は、企業と自治体の連携によって実現を目指すスマートシティの事例について、北海道富良野市の「スマートシティ政策」を取り上げました。地域コミュニティに着目し、多くの機関を巻き込んで一体となってスマートシティ化を進める動きは今後も注目され、日本のモデルのひとつとなっていくことでしょう。
今後も、RESERVA Digitalではスマートシティ施策に関する国内事例を取り上げていきます。他の地方自治体のレポートについては、こちらよりご覧ください。