日本のスマートシティ政策事例|Smart City Takeshiba(スマートシティ竹芝)

日本のスマートシティ政策事例|Smart City Takeshiba(スマートシティ竹芝)

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内閣府ホームページによると、スマートシティとは「ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)の高度化により、都市や地域の抱える諸課題の解決を行い、また新たな価値を創出し続ける、持続可能な都市や地域」のことを指します。

日本では2016年に「第5期科学技術基本計画」が閣議決定され、政府をあげてのスマートシティへの取り組みが推進されています。また、2019年には、スマートシティへの取り組みを官民連携で加速させるためのスマートシティ官民連携プラットフォームが開設されました。スマートシティ官民連携プラットフォームは、企業、大学・研究機関、地方公共団体、関係府省らが会員となり、同プラットフォームを通じて、事業支援、分科会の開催、マッチング支援、普及促進活動などを実施しています。

以上より、日本国内でもさまざまな組織や機関がスマートシティの実現に向けて少しずつアイディアを出し、動いていることがうかがえます。

前回の記事では、日本でのスマートシティ実現を目指してさまざまなプロジェクトを実施している企業の中から、千葉県柏市の「柏の葉スマートシティ」を紹介しました。今回は、東京都港区の「Smart City Takeshiba(スマートシティ竹芝)」を例に挙げて、目指すビジョンや具体的な取り組みを紹介し、スマートシティ実現のための可能性と課題について考察します。

Smart City Takeshibaの概要

竹芝エリアの特徴

東京都港区にある竹芝は、JR浜松町駅、ゆりかもめ竹芝駅へのアクセスが近い湾岸エリアです。加えて、東京湾納涼船の発着所やシェアバイクのポートが設置されており、鉄道だけでなく、水陸ともに交通サービスが発達しています。

また、東京都の「都市再生ステップアップ・プロジェクト」の一環として、「豊かな緑、海、文化を実感できる、活気ある業務・商業等の拠点を形成」をコンセプトに、テクノロジーを街全体で活用してエリアの課題解決を図るスマートシティの構築に向けて開発が進んでいます。

もともとこのエリアは、浜離宮恩賜庭園、旧芝離宮恩賜庭園に囲まれ、東京の歴史を感じることができる場所ですが、2020年6月には複合施設「WATERS takeshiba(ウォーターズ竹芝)」が、同年9月に「東京ポートシティ竹芝」がそれぞれ開業し、エリアの景観が変わりつつあります。近年の竹芝エリアでは、歴史・文化と商業が共存しながら都心で新たなまちづくりが進んでいます。

新たなモビリティサービスの模索

さらに交通面では、2019年12月下旬から2020年1月上旬にかけて、MaaS(Mobility as a Service)の社会実装モデル構築に向けた実証実験が行われました。この実証実験は、竹芝エリアにおける移動の利便性の向上を目指し、鉄道や船舶など複数の公共交通機関を連携させた新たなモビリティサービスの実装を試みています。

例えば、竹芝エリアに拠点を持つ対象企業の従業員向けの配車予約アプリの開発、勝どき桟橋から竹芝桟橋へ船舶を運航し、新たな通勤手段としての舟運の利用、事前に登録された利用者の交通系ICカードを車両内や船内などに設置したカードリーダーにタッチして乗車・乗船できる仕組みの導入を検証しています。(東日本旅客鉄道株式会社「東京・竹芝エリアで新たなモビリティサービスの実装に向けた実証実験を実施」より)

Smart City Takeshibaの構想

ソフトバンクと東急不動産、共創によるまちづくり

2019年7月からソフトバンクと東急不動産が共創して、最先端のテクノロジーを街全体で活用するスマートシティのモデルケース「Smart City Takeshiba」のプロジェクトが開始されています。

このプロジェクトは両社の強みを活かしたスマートシティ構想となっています。企業が共創することで、竹芝エリアで収集した人流データや訪問者の属性データ、道路状況、交通状況、水位などのデータをリアルタイムで提供でき、さまざまな事業者と共有できるようになります。また、データ流通プラットフォームや、テクノロジー技術を活用したサービスの実装によって、混雑の緩和、防災の強化などを実現し、竹芝および周辺地区の課題を解決することを目指します

最先端のテクノロジーを街全体で活用する

両社は最先端のテクノロジーを街全体で活用するスマートシティを実現するべく、竹芝エリアでデータ活用やスマートビルの構築に取り組むほか、ロボティクスやモビリティ、AR(拡張現実)、VR(仮想現実)、5G(第5世代移動通信システム)、ドローンなどの幅広い領域でテクノロジー活用の検証を行っています

また、最先端のテクノロジーを検証したい企業や団体の募集も行う予定で、さまざまな事業者が竹芝にテクノロジーを持ち寄り、共創の輪を広げてエリアの発展や課題解決を実現するスマートシティになることが期待されます(東急不動産「竹芝地区でスマートシティを共創~最適な行動を支援するアプリケーションプラットフォームを導入するほか、企業や自治体と連携して最先端のテクノロジーを街全体で活用~ 」より)。

Smart City Takeshibaの具体的な取り組み

竹芝エリアマネジメントによるスマートシティ推進

竹芝エリアマネジメントとは、エリアの魅力を向上させることを目的に、2017年に法人化された組織です。竹芝地区まちづくり協議会竹芝Marine-Gateway Minato協議会DMO芝東京ベイの3つのまちづくり組織とともに、竹芝エリアにおいて中核的な役割を担っています。

地域関係者と行政関係者からなる竹芝地区まちづくり協議会と、事業運営会社の両輪による事業推進体制をとることで、従来のエリアマネジメント組織にはない、地域の価値の向上を目指した産官学連携によるまちづくりを推進しています。

街のデータをリアルタイムで活用

ソフトバンクは、データのリアルタイム活用を実現するデータプラットフォーム「Smart City Platform」を開発し、ビル内外のあるゆるデータを統合・判断して従業員や事業者に必要な情報をリアルタイムで提供しています。

店舗向けには来店者の属性分析レポートを提供し、空席率などに応じた限定クーポンを自動配信することで集客を効率化できます。また、店舗ごとの混雑状況を可視化することで、来館者は店舗へ足を運びやすくなっています。

従業員向けには、エレベーターホール、飲食店、トイレなどの混雑状況を専用アプリやデジタルサイネージにリアルタイムに配信しています。また、AIで温度を検知する顔認証ゲートで利用階を自動判別し、最も効率の良いエレベータへの誘導など、働く人に対して安全で快適な環境を提供しています。

さらに、植栽の土壌水分、温湿度、日射量、土壌水分量、二酸化炭素濃度など、さまざまな環境データをリアルタイムにモニタリングし、24時間365日体制で作物の生長を管理しています。その結果、管理者によるメンテナンスが必要だった業務の効率化が実現します

エリアの変化に応じて機能するプラットフォーム

Smart City Takeshibaでは、温度や二酸化炭素濃度などの環境の変化、歩行者の滞留、設備の不具合、公共交通機関の遅延など、エリア内で発生するさまざまなデータをリアルタイムに収集し、滞在する人の適切な判断や行動を支援するアプリケーションを提供するプラットフォームを導入しています。

例えば、ビル全体の来場者推移、開催されるイベント、エレベーターの混雑状況から日々の人の流れを把握し、効果的な店舗への集客や来場者増加のためのヒントとして活用することができます。ビル内外では、防犯カメラの映像をリアルタイムで解析することで、禁止区域への侵入や要注意者を検知でき、専用アプリと連動して防災センターや警備スタッフに通知されるため、セキュリティ面も強化されます。

また、ゴミ箱内の容量を感知し、満杯に近づいたら施設管理システムへ知らせる超音波センサーの設置によって、清掃が必要な場所がすぐにわかる仕組みになっています。さらに、ビル内では自走ロボットによる清掃が行われており、人の手で行われていた床清掃の効率化を実現しています。

企業によるデータ活用の推進と実証実験

ソフトバンクは竹芝エリアに設置したカメラや IoT センサーにより収集したデータを取得できる API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を公開し、企業などによるデータ活用の推進を担っています

これまで紹介してきたように、竹芝エリアにオフィスを構える企業は、地区内の混雑状況データを取得することで、最適な通勤時間を社員に提案するコンテンツを提供でき、飲食店などは、施設内外の混雑情報を割引サービスなどの集客施策の検討に活用できます。

また、ソフトバンクはテクノロジーやロボットを活用した実証実験も行っています。例えば、屋外で信号機情報と連携して荷物を配送するロボットと、屋内でエレベーターのシステムと連携してコンビニの商品を配送するロボットの実証実験が行われています(ソフトバンクニュース「信号と連動して道路を横断。エレベーターで別フロアに配達。竹芝で進む配送ロボット実証実験」より)。

Smart City Takeshibaに期待されること

Smart City Takeshibaは、都市部において開発が進む竹芝エリアの特性に着目し、企業や人々に有益な情報を提供するテクノロジー面で期待できるプロジェクトです。

このように、企業が共創してスマートシティ化を目指すことで、ビジネスにおいてどのような情報が必要かをリアルタイムに分析でき、そのエリアの事業者や従業員にとって安心・安全でスピード感のあるビジネス展開ができるといえます。竹芝エリアでスマートシティ化が進めば、竹芝が都内の歴史、文化、ビジネスの中心地としても充実していくことが期待できます。

Smart City Takeshibaを促進する上では、竹芝を利用する企業にとって必要な情報だけでなく、商業施設や公共空間を利用する人々に提供する情報の質向上も重要です。都市型スマートシティの実現には、そのエリアを初めて訪れる人々にとっても必要な情報が得られ、居心地のよい環境を整える仕組みづくりが求められます。そのようなテクノロジーの整備が進めば、人同士の結びつきが強まり、竹芝エリアの利便性や知名度も高まるでしょう。

スマートシティにより近づく、予約管理システム「RESERVA」

スマートシティの実現には、ビジネスに関わるさまざまな立場からの工夫が重要です。各企業、店舗、個人でも始められるスマートシティへの実現に向けて、まず挙げられるのが、SaaSシステムの導入です。例えば、SaaS型予約管理システムして国内最大級の登録事業者数26万社を誇る「RESERVA」の場合、どのような世代でも利用しやすく、セミナー開催やオンラインレッスンなど、予約が発生するすべての業態において効率よく予約作業を進めることができます。

また近年は、人口20万人を超える規模の自治体のほか、人口5万人以下の小規模な市町村でも導入実績があり、 官民連携の良き実例としても挙げられています。システム導入はコストや管理費が高いというイメージを持たれることが多いですが、RESERVAなら安価で、誰でもかんたんに利用できるシステムとして好評を得ています。

詳細は、予約システムRESERVA(レゼルバ)ホームページをご覧ください。

まとめ

今回は、日本の企業が共創して推進しているスマートシティの事例について、東京都竹芝の「Smart City Takeshiba(スマートシティ竹芝)」を取り上げました。都内の開発が進むエリアに着目し、テクノロジーの技術を駆使してスマートシティ化を進める動きは今後も注目され、日本の都市型スマートシティモデルのひとつとなっていくことでしょう。

次回も日本のスマートシティ実現に向けて取り組む企業の事例を取り上げます。

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