少子高齢化が進む日本において、公共交通機関などによる移動手段は欠かせません。しかし、若年層の都市部への流出による利用者数の減少や、運転手・搭乗員の高齢化により交通サービスの運用が難しくなっているのが現状です。そこで注目されているのが、自動運転の電動(EV)バスやオンデマンド交通をはじめとする次世代の交通サービス「MaaS(Mobility as a Service、マース)」です。
これは日本のみならず、海外でも自動運転による交通状況の円滑化や事故の減少を目指し、多くの研究がなされており、積極的な実証実験が受け入れられています。
本記事では日本と海外における自動運転バスの取り組みの違いや先進的に取り組んでいる国を紹介します。
自動運転バスとは
自動運転バスとは、運転手がいなくてもAIやセンサー技術を利用することで、道路上の障害物を検知しながら周囲の状況を把握して自動的に運行するバスです。公共交通機関の一環として、都市部やキャンパス内で運用されることが期待されています。
自動運転バスは、運転手の不要による運行コスト削減や労働力不足解消、交通事故リスクの減少、効率的な運行、環境負荷の軽減といった利点がある一方、技術的なハードルや法規制、社会への受け入れなどの課題も残っています。
今後自動運転バスには、技術の発展や実用化が進むことで、都市交通の効率化や安全性向上に大きく寄与することが期待されています。
自動運転バスがもたらすメリット
自動運転バスを導入すると、以下のようなメリットがあります。
- 運転手不足に対応し、雇用コストも削減。
- 移動に送り迎えが必要だった高齢者の自立した移動を実現。
- ダイヤやルートを充実させ、市民の利便性向上と訪問者・利用者増加を両立。
- 居眠りやドライバーの操作ミスが起きないため、事故を抑制。
- 道路状況をリアルタイムで確認し、渋滞を緩和。
山間部や電車が止まらない地域に住む高齢者は、通院や買い物に出かけるには家族の送り迎えが必要でした。そのため、外出のハードルが高く外に出る機会が減少し、体力が低下したり活力を失ってしまう人が多くなります。自動運転バスの導入により気軽な外出が実現し、高齢者の活発化や地域活性化に繋がります。
EVバスがもたらすメリット
EVバスを導入すると、以下のようなメリットがあります。
- 地球温暖化の原因となる排気ガスの排出を抑制。
- エンジンではなくモーターで走るため、走行中の騒音や振動を減少。
- 走行コストを軽減。
- 災害時、電源として利用可能。
EVバスでは、大気汚染や地球温暖化の原因となっている排気ガスの排出を抑えることが可能です。また、災害時には電源供給ステーションになったり、冷暖房完備の避難所としても利用できます。
参考サイト:アルファバスジャパン株式会社
参考サイト:ビーワイディージャパン株式会社
日本と海外の自動運転バスへの取り組みの違い
日本と海外の先進的な国には自動運転バス事情にいくつかの違いがあります。
実証実験の規模:日本では自動運転バスの実証実験がいくつか進行中ですが、その規模は比較的小さいです。アメリカや欧州では大手企業・大学との提携や商用利用のデモンストレーション導入など、より大規模な実証実験が行われており、多くの企業や自治体が関与しています。
法規制・政策:日本は自動運転に関する法規制や政策が徐々に整備されていますが、アメリカではより積極的な政策や法規制によって、自動運転バスの実用化に向けた取り組みが進んでいます。
社会の受け入れ:自動運転バスに対する社会の受け入れがまだ進んでいない日本と対照的に、欧州では自動運転技術への期待が高まっており、積極的な取り組みが行われています。
日本の自動運転バスへの取り組みは先進的な海外の国と比べると遅れていると言えますが、技術開発の面では、数多くの自動車メーカーや企業が自動運転技術の開発に尽力し、欧州のメーカーやアメリカのテック企業の先進的な技術開発と激しい競争が起こっています。今後は実用化に向けて法規制や社会の受け入れが加速するでしょう。
海外の自動運転導入・実証実験の事例紹介
1.アメリカ
アメリカのCOAST Autonomous(コーストオートノマス)は、歩行者専用道路や混合した交通下、高速専用車線などで安全に動作する自動運転シャトル「COAST P-1 SHUTTLE(コーストピーワンシャトル)」を開発し、今後フロリダ州のセントレオ大学のキャンパスなどで導入が計画されています。このシャトルはマッピングと局在化、ロボティクスと人工知能、運用管理と監督を統合し、歩行者エリアの拡大や都市・キャンパスの環境整備に貢献するでしょう。
参考ページ:「COAST Autonomous公式サイト」
2.シンガポール
シンガポールは自動運転の取り組みが最も進んでいる国といわれており、政策や受容性においての評価は世界で1位で、自動運転のガイドラインやテスト要件は既に整備されています。
2021年にはアプリを通じて料金を取る自動運転バスの実証実験が通勤時に行われ、トラブルなく成功しました。完全な無人運転ではなく、実際に導入された際に、臨機応変な対応ができるかを今後の課題として挙げられています。
参考ページ:経済産業省「シンガポールでの先行事例と日本への導入提案例」
参考記事:「First commercial autonomous bus services hit Singapore roads」
参考ページ:「ST Engineering公式サイト」
3.イギリス(イングランド)
オックスフォードシャー州のディドコットにて、イギリスの公共交通を運営するFirstGroup(ファーストグループ)が2023年1月、実際にEVバスに乗客を乗せた実験を行いました。このプロジェクトは、車いすとベビーカーに対応したバリアフリーの自動運転バスの運行を目標として、FirstGroupのFirstBus(ファーストバス)が主導となり多くの企業と手を組んで、自動運転技術を実際のサービス提供に応用できることを実証するために設立されました。
現在最終段階であるこのプロジェクトは、2023年末にはオックスフォードシャー州の交通拠点であるディドコットパークウェイ鉄道駅と接続される予定です。
参考記事:FirstGroup「First Bus and partners welcome Roads Minister to launch UK’s first all-electric autonomous bus service at Milton Park」
4.イギリス(スコットランド)
スコットランドでは、2023年5月に世界初の無人バスサービスが開始される予定です。一週間に約1万人の乗客を運ぶことが予測され、車両に搭載されたセンサーにより事前に選択された道路を最大時速50マイル(約80km)で走行します。
スコットランド政府は「この革新的で野心的なプロジェクトは素晴らしい成果と言える」と発言しており、今後世界のさまざまな国で自動運転バスの商用運行が進むことが期待されています。
参考記事:「CAVForth公式サイト」
参考記事:BBC「Driverless bus service to start in Scotland in ‘world first’」
自動運転バスの実証実験で使われているRESERVA
日本ではスマートモビリティへの関心が高まりつつありますが、自動運転への理解が浸透しているとは言えません。今後、社会に自動運転技術が受け入れられていくには、人々の理解や共感を得る必要があります。
そこで効果的なのが試乗体験会です。実際に体験する場を設けることで受け入れやすくなり、自動運転への理解も深まっていくでしょう。また、実際に利用していく利用者の意見を聞くことで、各国、地域にあわせた運用法が見え、更なる利便性の向上が期待できます。
試乗体験の予約におすすめなのが、実際の現場でも活用されている予約システムRESERVAです。RESERVAは操作性がシンプルでわかりやすいため、どの世代でもスムーズに利用することが可能です。また、人口20万人を超える規模の自治体から人口5万人以下の小規模な市町村でも導入実績があり、安心して利用可能です。
自動運転バス実証実験の予約に最適なRESERVAの詳細は、こちらをご覧ください。
まとめ
少子高齢化やライフスタイルの変容が急速に進む現代において、スマートシティ化は欠かせません。今回は、海外で自動運転バスの導入・実証実験を実施している国・地域を4つ紹介しました。海外の一部の国や地域では自動運転に対する取り組みや社会の受け入れが日本よりも進んでおり、MaaSへの関心が高まっていることが伺えます。
予約DX研究所では、今後もスマートシティ施策・MaaSに関する国内外の事例を取り上げていきます。